ネオ・アフリカン・ドリーム

オピニオン室

3週間ぶりの公式戦となった
FC今治のJ3リーグ。

その間、最大のトピックスは
大型助っ人2人が加入したことです。

西アフリカ・ギニアビサウ出身、188㎝
FWバルデマール選手(23歳)と、

パナマ出身、185㎝
DFオスカル選手(27歳)。

2人とも母国でのA代表経験がある
ということで

サポーターの期待が“大”でした。

ただFIFAランキングはそれぞれ
約120位、約80位、

日本(28位*2021年4月8日発表)よりも
随分、低いことは
考慮しなければいけません。

それでも下位に沈む現チームにとっては
期待せずにはいられない新外国籍選手。

その一人、FWバルデマール選手が早速、
昨日のゲームで後半31分から
途中出場しました。

だけでなく敗戦濃厚な試合終盤
残り2分で、執念の同点弾を決め、
劇的なJリーグデビューを飾りました。

「ラストチャンスと思って出場した。
今治の皆が温かく迎えてくれて
自分の力を証明したかった。
運良く決めることが出来た」(本人談)

ところで。

ギニアビサウ(ギニアではない)
という国はサッカーファンにも
普通の日本人にも馴染みはありません。

セネガルとギニアに挟まれた小国で
アフリカの中でも最貧国の一つ。

1974年にポルトガル領から独立。

多くサッカー選手は若いうちから
ヨーロッパのポルトガルリーグに渡る…
らしい。

バルデマール選手も今治に来るまでは
ポルトガルリーグ3部のチームで
プレーしてました。

岡田さんのとこには
こういったサッカー新興国からの
選手オファーが、代理人から
ひっきりなしにあるそうで、
その中から厳選して獲得したのが
バルデマール選手です。

わずか1ゴールで褒めちぎるのは
日本マスコミの悪癖で嫌いだけれど
インタビューの対応などは
とてもまじめな印象で
最果ての地、日本で、Jリーグで、
今治で、チャンスを掴んでやる!
という内なる闘志を
見ることが出来ました。

因みに、ギニアビサウからの
Jリーガーは2人目
(2019-20年松本山雅所属イズマ選手)。

イズマ選手は
9試合0ゴール(J1&J2)だったので
バルデマール選手はJリーグで
初めてゴールをした
ギニアビサウ人となります。

なんとメモリアルな!!

(先に調べておけば実況で言えたのに…
こういうとこが未熟なんだよな)

おそらく、人生を賭けて
海を渡ってきたバルデマール選手。

彼の活躍は、単に個人成績だけに
とどりません。

今後、ギニアビサウから
Jリーグへの移籍マーケット、
後進たちが辿る道が
なだらかなものになるか、
険しくなるかも同時に決まります。

大袈裟に言えば、母国の評価が
バルデマール選手一人に
かかっています。

上手くいけば再び欧州に渡り、
今度はビッグクラブへ、
ステップアップという夢も広がります。

また試合後、
「目標は15ゴール以上」といった
彼の言葉が実現すれば、
少し遠のいたJ2昇格切符が
近づくことになります。

小国ギニアビサウからJリーグ経由、
そして欧州5大リーグへ。

今治から、新しいビジネスモデルが
創設され、バルデマール選手が
オルンガ2世となれるのか。

チームのV字回復は
この男の活躍と直結しています。

 

記者プロフィール
この記事を書いた人
江刺伯洋

江刺伯洋(えさし はくよう)1971年3月1日松山市生まれ。
入社以来アナウンサーとして主にスポーツやラジオを担当。特にサッカー実況は少年からJリーグまで全カテゴリーをこなしてきた。
著書に愛媛FCのJ昇格劇を描いた「オレンジ色の夜明け」、「群青の航海 FC今治、J昇格まで5年の軌跡」がある。【現担当番組】DAZNのJリーグ中継(FC今治、愛媛FC)、ラジオ生ワイド「江刺伯洋のモーニングディライト・フライデー」(毎金曜午前07:15~11:09)など。

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