■その一報は突然に…
2020年8月28日午後5時。
安倍晋三首相が官邸で記者会見を開き、体調不良を理由に辞任する意向を表明しました。
8月に入り、2週続けて長時間病院を受診するなど、健康不安説が取り沙汰されていた安倍首相。
第一次内閣の2007年には、持病の潰瘍性大腸炎が悪化して退陣し、「投げ出し」と批判を浴びていただけに、今回は、事前の見立てでは、“辞任”と“続投”は、“五分五分”と見られていました。
そうした中で、午後2時すぎに“安倍首相辞任”の一報が報じられると、南海放送の報道フロアも一気に緊張感に包まれました。
愛媛県内向けに「安倍首相辞任」の速報スーパーを打ったり、あらかじめ準備・待機していた取材クルーが関係各所に向かったりするなど対応にあたりました。
午後3時半頃には、愛媛新聞が約4000部の号外を松山市駅などで配布していて、受け取られた方もいらっしゃったのではないでしょうか。
■与野党の反応 安倍首相の盟友は…
愛媛1区選出の自民党・塩崎恭久衆議院議員です。
塩崎氏は、初当選が安倍首相と同期で、これまでに官房長官や厚生労働大臣として、安倍内閣を支えてきました。
安倍首相が辞任を発表した日、塩崎氏は東京都内で、テレビ電話でインタビューに応じてくれました。
塩崎氏は、まず、「長期にわたり国政トップの重責を担い、国を引っ張ってきてもらったことについて、本当にお疲れ様でございましたと申し上げたい。まずは、体調を戻す、治療するということが何をおいても一番だろうと思っている」と、安倍首相を労いました。
その上で、「経済対策、女性活躍、拉致問題、社会保障改革など、様々な改革に取り組み、日本の首相として初めて世界で頼られるリーダーになった」と、その実績を高く評価しました。
また、“NAISの会”(根本匠氏、安倍晋三氏、石原伸晃氏、塩崎恭久氏の4人による政策研究グループ)として、活動を共にした当時のことを「午後8時半とか9時くらいから夜な夜な集まって、政権構想を練っていくことを長い間やってきたことが一番の思い出で、懐かしく思う」と、時折、柔らかな表情を浮かべながらその日々を振り返りました。
■与野党の反応 県内野党国会議員は…
愛媛3区選出の国民民主党・白石洋一衆議院議員です。
白石氏は、県内で唯一の野党の衆議院議員です。
安倍首相の辞任を受け、地元西条市で、インタビューしました。
白石氏は、「一日も早い回復をお祈りしている」と安倍首相の健康状態を気遣い、「首相の職務は激務で、止むを得ないのかなと思う」と、突然の辞任にも一定の理解を示しました。
一方、2012年12月の第二次安倍内閣発足から歴代最長となる7年8か月に及ぶ「安倍一強」政治への評価については、「アベノミクスなど経済対策もリーマンショックからの回復基調の延長によって回復しただけ。安全保障面では、閣議でこれまでの法解釈を大きく変えるなど、慎重な議論が必要なものを押し切ったいう印象がある」などと厳しく批判しました。
さらに長期政権の影響については、「森友問題や加計問題を筆頭に色んな面で腐敗やおごり、権力の私物化というものが出ていて、それに官僚が協力・改ざんするという仕組みや構造を作ってしまった。これは非常に大きな問題で、今後、これらを修正することは大変な作業だと思う」と指摘しています。
そして、後任の首相については、解散総選挙を行った上で、民意を受けた国会で選ぶべきだとしています。
■自民党次期総裁選 愛媛県連の対応
9月1日。自民党本部は、安倍首相(自民党総裁)の後継を決める総裁選挙について、全国一斉の党員・党友投票を実施しないことを決めました。
これにより、9月14日の両院議員総会で、国会議員票394と地方票141(都道府県ごとに3票ずつ)の計535票により新総裁を選ぶことになります。
この決定を受け、自民党愛媛県連は、松山市内で常任総務会を非公開で開催し、対応を協議しました。
会終了後、県連の渡部浩幹事長によりますと、常任総務会では、県連に割り当てられた地方票3票に県内の党員らの意見を反映させるため、県連独自の「予備投票」を実施することを全会一致で決めたということです。
具体的には、総裁選が告示される9月8日に投票用紙となる往復はがきを県内の全ての党員と党友合わせておよそ2万人に発送し、12日まで投票を受け付けます。
開票作業は13日に行い、獲得票数に応じて票を分配する「ドント方式」で県連の持つ3票の投票先を割り振るということです。
■様々な課題はどうなるのか
途上にある新型コロナウイルス対応に加え、経済・景気の低迷といった喫緊の課題。
さらに、2020年から1年延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催や憲法改正、拉致問題、北方領土問題など、安倍首相自らが掲げた政治目標に道筋をつけられないままでの今回の辞任。
臨時代理は置かず、後任が選ばれるまでは、執務に当たることを強調したものの、課題は山積しています。
アベノミクスによって日本経済を立て直した一方で、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法などの強硬採決や愛媛県も大きな影響を受け、真相解明が果たせたのか疑問が残る加計学園問題など“一強政治”のひずみも招きました。
安倍首相には、とにかくご自身の体調をいたわりながら治療と療養に専念してもらい、新型コロナ対策など待ったなしの国の課題解決に向けて、新しい日本のリーダーと共に尽力して欲しいと思います。
※次回記事更新は、9月10日(木)を予定しています。