砥部動物園へ向かう国道からわき道に入ると
暗闇の中にぼんやりと照らされた小ぶりな土のグラウンドが現れた。
麻生FCの練習グラウンドだ。
一目で手作り感と歴史が伝わってくるグラウンドだ。

明日のJrユース決勝カードは麻生FC対帝人SS。
共に愛媛を代表する老舗クラブチーム。

特に麻生は
ビッグタイトルは無いけれど
奔放なサッカースタイルでタレント性豊かないい選手が毎年揃っている印象があった。
さぞかし近代的な施設があり
豊富なスタッフもいてなど
ハード面の秘密があるのかと思ったていたら大きな間違いだった。

23年前にチームを創設したのが監督の日野恵司さん。
「こんなことまで来ていただいて申し訳ない」といつものニコニコ顔で迎えてくれた。
彼は愛媛サッカー界の栄光の歴史、選手権準優勝の壬生川工業高校出身。
といってもバレーボール部出身。
で、当時はサッカー部の活躍を応援団長としてスタンドから支えていた。
サッカー経験と言えば卒業後の数年間。
しかし、今では身も心もサッカーに奉げている毎日だ。

「もともとサッカーに興味はあったんやけど
長居(当時の選手権は大阪開催)で観た選手権がやっぱりきっかけよね」
「習志野に負けた(決勝0-2)けど
同級生を応援しながらサッカーってこんなに面白いんかと」
「帰りのバスである選手の弟君と隣になってね。
お兄ちゃんの事を誇らしげにしゃべるんよね。
今考えたらその時に高校選手権に出るような選手を育ててみたいと思ったんやろね」

23年前。
まさに手弁当、手作りで小学生のチームを立ち上げた。
「僕は経験が無いんでキチンとした事は教えられんのですよ」
「でも上に行ってもサッカーを続けてくれるような指導を心がけてましたね」
それから10年後。
少年達の受け皿のため
当時の保護者を中心に中学年代のチームが出来る。
その1期生が現コーチ、山崎佑輔さんだ。
高校サッカーファンならご存知だろう。
日本代表FW大久保嘉人と共に
国見で三冠(インターハイ、国体、選手権)を達成した時の右ウインガーだ。
「あの子は決して天才ではなく努力家でしたね。
他の子が遊んでてもボールを蹴ってて
熱心すぎて(周りから)変わってるくらいに思われていたけど
この子なら厳しい国見でもやっていけるやろうと
小嶺(当時監督)さんに預けたんですよ」
それからは社会現象にもなった国見フィーバー。
「いきなり卒業生が優勝でしょ」
「試合は全部観に行きました」
同級生の準優勝を応援のリーダーとして目の当たりにし
今度は教え子が目の前で日本一になる。
彼がサッカーにとりつかれる理由に疑問は無いだろう。

麻生が生んだ出世頭が、指導者として地元に帰ってきた。
山崎自身にも熱い思いがある。
「もちろんプロにもなりたかったんですけど無理でした」
「一人でやってる日野監督の大変さとか
親御さんの苦労とか知ってるんで少しでも恩返しが出来たらと・・・」
「僕もここ(麻生FC)では自由にやらせてもらって楽しかったんで
一番は高校いってもサッカーを辞めないで欲しいですね」
高校サッカーの頂点を知る若者はそう締めくくった。

「今年の強さは山崎コーチが専属でチームを見てくれて
昼間も練習するようになったからというのが大きい」
今度は日野監督自らが栄光を手にするチャンスがやって来た。
雑草軍団・麻生が初のビッグタイトルを手にするのか。
キックオフは明日の午後2時!

PS.尚注目選手は麻生のスーパーカートリオ堀部、渡邊の国体コンビと阿部、そしてU-13代表候補の篠原などなど今年もタレントの宝庫です!今から帝人行ってきます!