愛媛FC練習雑感 〜9・20〜
「しゃべっていこう、自分で!誰か、じゃないよ〜、自分で。」
宮原の声が響いた。
出来たばかりの北条スポーツセンターは
すり鉢状になっており
選手たちの声や通り過ぎるJR電車の音が良く響く。
1対1の対決で、チュンチュンにやられたセレッソ戦から4日後。
今日も容赦のない日差しが突き刺さる。
軽いボール回しで始まったこの日のメニュー。
いつも一際、大きな声でムードを作るのは
その宮原をはじめ森脇、川北、羽田などだ。
森脇は、まだ左太ももにテーピングをしているが
ハッチャけたおしゃべりで調子のよさが伝わってくる。
川北は左ひじにテーピングが見える。チーム唯一のコテコテの大阪弁はよく目立つ。
羽田のバリトンは、空気を凛とさせる力がある。
5-3のボール回しからハーフコートを使ったメニューへ。
「じゃあ、次は2タッチ以内で」「自陣の時はフリーだけど、コーチングをしっかりな!」
望月監督が繰り返し要求するのは、選手自らが声を出す事。
これが出来なければ屋台骨である“組織で守る事”が出来ない。
人対人でやられてしまえばゲームにはならない。
前節のぶち抜かれ方は、ベンチで見ていても屈辱的だっただろう。
次はこっちがやり返す番だ。
猫背ぎみの望月監督の背中がそう言っている。
3−3−1のミニゲームになった。
プレーを止めて細かく指示を出す。
「高杉、どうして欲しいかコーチングしないと。うん。
こっちにしぼって欲しいか、自分で抜け出すのか。言わないと。うん。言っていこう。うん。」
チーム内でもかなり大人しい高杉だが、ピッチ上では自身の性格を変えなければならない。
コートの周り、怪我をした井上・田中・大木がランニングをしている。
取材に来るといつも別メニューをしている印象が強い大木。同郷人としては何とも歯痒い。
怪我人だけで1チームできそうな、この時期。
慣れないポジションに選手をいれながら何とかこなししている。
あっという間に最終クールに入った。
ファンとしては順位が気になるが、選手本人達は恒例の契約更新が近づいてくる。
控えの、ベンチ外のメンバーの表情に自然に目がいく。
3−3のミニゲームからサイドに選手を付け足し、
数的有利と不利をつけての練習がラストメニュー。
誰もがドリンクボトルを奪い合うようにして給水を終えた。
全体練習後、直ぐ高杉が近藤と神丸を誘ってパス回しをはじめた。
手前では黙々とステップトレーニングをする関根。
負けじと宮原が加わり一言。
「めっさ、キツ〜ッ!」
ゴール前ではGK4人衆を相手に
三木・藤井・持留・笹垣・内村・大山らが繰り替えしシュート練習。
左で座っていた新井が「決起集会をやろう!」と南を誘っている。
一人、クーラーボックスに座り左足の腫れを気にするジョジマールに
「大丈夫か〜」と笑顔で島崎トレーナーが話し掛けた。
よそよそしかった第1クールの面影はなく
一つのチームになってきている手ごたえが心地よかった。
このメンバーでサッカーが出来るのはいつまでなのか。
彼岸の入りとは名ばかりの秋空を背に、選手たちの声が止むことはなかった。