2007.07.31

シュナイダーの高校野球観戦記

Author: シュナイダー松岡

今治西の連覇で幕を閉じた、今年の夏の高校野球、愛媛大会。

決勝の一戦しかり、今年の大会は接戦で延長にもつれ込む、

“記憶に残る名勝負”が随所で見られました。

   

延長12回、息詰まる投手戦となった 南宇和−大洲 の一戦。(2回戦・7月22日) 

0−0で迎えた12回表に南宇和が1点を先制するも、

その裏、南宇和エース猪崎の球を大洲打線がとらえ、逆転サヨナラ勝ち。

140キロを超えるストレートとスライダーが武器の南宇和・猪崎投手。

去年秋にセンターからコンバートした大洲の井上投手。 

 両エースの一歩も引かない、勝負のピッチングが頭から離れません。

 12回裏、南宇和は1−1と追いつかれて2アウト2塁。

猪崎が奪った三振はここまで11個。

しかし12回を投げて、武器である140キロを越す直球も

明らかに球威が落ちてしまっています。

大洲打線の狙い球は、完全にそのストレート。

しかしそれでもためらうことなく、ストレートでコースを突いてくる猪崎。

結局それを右中間に運ばれサヨナラとなるんですが、

配球論とか、セオリーとか、そんなものとは別の次元にある

「俺はこれで3年間戦ってきた」とでもいうのでしょうか、

自分に嘘をつかないピッチングで勝負に挑む姿、のようなものを

猪崎君の最後の投球から感じ、その姿が鮮明に目に焼きついています。

  

そして決勝。こちらは延長11回。

惜しくも優勝を逃した済美、上甲監督。 

 「どんなにいい試合をしても、勝てなけりゃ意味がない。

 どうしても・・・勝たせてやりたかった・・・」

百戦錬磨の名将の無念さが、言葉から満ち溢れていました。

今年60歳。還暦を迎え、監督歴も今年で通算25周年。

夏の愛媛大会での勝ち星は宇和島東高監督時代から、通算88勝を数えます。 

“ 前人未到の通算100勝達成が目標”。

大会期間中、他の監督には決して口にすることはできないであろう壮大な夢を

そっと教えてくれた上甲監督。

「今年は頭も体もフル回転でした。少し休ませないと・・・」

 そうやって遠くを見やる60歳、名将の眼差しの奥には、しかし明らかに

早くも次のシーズンに向けての静かな、それでいて熱い闘志がみなぎっていました。