シュナイダーの高校野球観戦記
今治西の連覇で幕を閉じた、今年の夏の高校野球、愛媛大会。
決勝の一戦しかり、今年の大会は接戦で延長にもつれ込む、
“記憶に残る名勝負”が随所で見られました。
延長12回、息詰まる投手戦となった 南宇和−大洲 の一戦。(2回戦・7月22日)
0−0で迎えた12回表に南宇和が1点を先制するも、
その裏、南宇和エース猪崎の球を大洲打線がとらえ、逆転サヨナラ勝ち。
140キロを超えるストレートとスライダーが武器の南宇和・猪崎投手。
去年秋にセンターからコンバートした大洲の井上投手。
両エースの一歩も引かない、勝負のピッチングが頭から離れません。
12回裏、南宇和は1−1と追いつかれて2アウト2塁。
猪崎が奪った三振はここまで11個。
しかし12回を投げて、武器である140キロを越す直球も
明らかに球威が落ちてしまっています。
大洲打線の狙い球は、完全にそのストレート。
しかしそれでもためらうことなく、ストレートでコースを突いてくる猪崎。
結局それを右中間に運ばれサヨナラとなるんですが、
配球論とか、セオリーとか、そんなものとは別の次元にある
「俺はこれで3年間戦ってきた」とでもいうのでしょうか、
自分に嘘をつかないピッチングで勝負に挑む姿、のようなものを
猪崎君の最後の投球から感じ、その姿が鮮明に目に焼きついています。
そして決勝。こちらは延長11回。
惜しくも優勝を逃した済美、上甲監督。
「どんなにいい試合をしても、勝てなけりゃ意味がない。
どうしても・・・勝たせてやりたかった・・・」
百戦錬磨の名将の無念さが、言葉から満ち溢れていました。
今年60歳。還暦を迎え、監督歴も今年で通算25周年。
夏の愛媛大会での勝ち星は宇和島東高監督時代から、通算88勝を数えます。
“ 前人未到の通算100勝達成が目標”。
大会期間中、他の監督には決して口にすることはできないであろう壮大な夢を
そっと教えてくれた上甲監督。
「今年は頭も体もフル回転でした。少し休ませないと・・・」
そうやって遠くを見やる60歳、名将の眼差しの奥には、しかし明らかに
早くも次のシーズンに向けての静かな、それでいて熱い闘志がみなぎっていました。