(パンフレット用 寄稿文)

 右サイドで相手のクリアボールを拾った大藤は

迷うことなく、ゴール前へクロスを放り込んだ。

会場が“そこ”じゃなければ簡単に弾かれる様な

平凡なボールだった。

しかし、まるで見えない力が武南ディフェンスのミスを誘ったかのように、

ボールはエースの前にこぼれてきた…

「西田シュート!ゴールか?ゴールイン、11番西田!同点に追いついた南宇和!!」

後半開始、わずか25秒の出来事だった―。

パンフレットの表紙、上から3段目左から2つ目にデザインされている写真は

その瞬間を切り取ったものだ。あの日から四半世紀、ついに“聖地”が生まれ変わる。

“国立最蹴章 愛媛編”の代表チケット争奪戦は今年も候補者が乱立している。

進路実現に向け主力が抜けた第1シード・今治西や第3シード・松山北。

そのシード勢で優勝候補筆頭は、第2シード・松山工業。常勝を義務付けられたエリート軍団は

昨年の選手権全国メンバーが骨格を成す。

特にMF栗林倫也(3年)を中心に攻守の切り替えの速さは全国レベル。

またGK岡田慎司(主将3年)の安定感は四国NO.1だ。

「うちは泥臭くやっていきます!」熱血漢・坂本哲也監督に気の緩みは寸分もない。

「選手権を前にチームが仕上がってきた」(県サッカー関係者談)とシード校を抑えて評判が高いのは今治東。

国体メンバー選出の若手と上級生が上手く融合しEリーグでは暫定首位

(6勝4分1敗 勝点22 *9/13現在、以下同)。

就任2年ではやくも“強者のメンタリティー”を浸透させたのが名将・谷謙吾監督。

ここはパワーとスピードを兼ね備えた本格派FW越智亮太(3年)が面白い。

得点王争いに絡んでくれば今治勢初のビッグタイトルも夢ではない。

その今治東とEリーグ優勝争いをしているのが第4シード・帝京第五。

国見時代、選手権を沸かせた植田洋平監督が就任以来、着実に力をつけてきた新興チーム。

疲れと恐れを知らぬアーミー軍団、頂点を狙う準備が整ってきたようだ。

その帝京第五とEリーグで勝点20の同数、しかも唯一負けが無い(5勝5分0敗)のがなんと松山東。

高い意識と統率力で激戦ゾーンをかき回しそうな不気味な存在だ。

忘れちゃいけない第5シード・大洲。FW内山勝允(3年)、DF下岡廉(3年)らのジュニアユースチャンピオン、

MF智葉・ジーニアス・隆盛(3年)など県内屈指のタレントチームがこのまま終わるとは思えない。

他にも済美と南宇和のカードも気になるし、川之江と松山商業も元気だと聞く…

かつて世界の長友佑都(西条出身、現インテル)が、

Jでは川又堅碁(小松高校出身、現新潟)や渡邊一仁(済美高校出身、現愛媛)が

憧れ、たどり着けなかった聖地・国立。

数多の名勝負にもう一度、愛媛代表が歴史を刻む為に。

国立へのラストチケットを手にするのはどのチームか。

眠れない冬が今年もやってきた。