今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、宇和民具館の仙波香菜子さん。テーマは12月12日まで開催中の企画展「パンと昭和」。人口10万人あたりのパン屋さん店舗数が全国トップクラスという愛媛県民としては気になる企画展です。その中で、仙波さんが「給食」に着目して調査した結果を発表されています。給食を調べると、その町の歴史が見えてくる!?懐かしのCMソングやご当地パンなどの話題でも盛り上がりました!
佐伯)どうして地元の学校給食に着目されたんですか?
仙波)「パンと昭和」というテーマで企画展をするって決まった時にですね、地元のパンを考えた時に一番先に浮かんだのが給食のパンのことなんですね。で自分自身が「そういえば地元の学校給食の歴史を知らないな」と思いまして、テーマにしてみようと思いました。
佐伯)なるほど。
仙波)で、ちょうど宇和民具館に隣接する国の重要文化財の開明学校というところにですね、学校関係の資料が6000点ほど収蔵展示されておりまして。
佐伯)そんなにありますか。
仙波)そうなんですよ。で、その中から地元の小学校の宇和町小学校というところの学校日誌と、それから学校給食日誌をピックアップして調査してみました。
佐伯)学校のあの給食の献立表もらうのが、月替りの時楽しみでした!
仙波)楽しみでしたね(笑)。
佐伯)そういう資料もまた残っていて。給食日誌、どんなものが?
仙波)その学校給食日誌にはですね、あのメニューはもちろん材料の分量ですとか、その日給食を食べた人数、食べなかった人数、そういったことが事細かに書かれておりまして。その材料をちょっと見ていきますと、戦後の給食の割には…戦後の給食言うたらお肉はクジラ肉がよく使われてたんですけど、宇和町小学校の学校日誌にはそれが出てないんですね。代わりに牛肉を多用しているのが見受けられて、で「これはなんでやねん?」と思いまして、はい。
佐伯)高級志向?
仙波)そうなんですよ、とっても高級なお肉なのに、宇和町はなんでこんなに食べられたんだろうと思いまして調査が始まったんです。で、調べていくうちにメニューにお肉が使われているメニューのほとんど全部牛肉だったんですよ。例えばカレーシチューですとか、ちゃんぽん、野菜の炒め煮、五目うどん、親子もどき…
佐伯)親子もどき?
仙波)親子丼みたいなものですね。
佐伯)あ!牛肉だから他人丼なんだ。
仙波)そうです、そうです。で、すき焼き風煮とか色んなものがあるんですけど全部牛肉なんです。一部、ひき肉とか肉とか書かれてある日が三日ほどあったんで
すが、何肉かというのは記述はなかったんです。その他ほとんどが牛肉になってました。
佐伯)でも他の地域には、その当時はクジラ肉などが多かったんですよね?どうして宇和だけ牛肉?
仙波)それがですね、地元の方のおかげで答えがわかったんです。昭和30年代から現在も、この宇和町で酪農を営んでおられる信宮克行さんっていう方を取材させていただきまして、聞いてみたらですね、昭和30年代は宇和町は酪農が盛んだったそうなんです。
佐伯)ほ~。
仙波)今はそういうイメージないんですが、当時はおよそ110戸の酪農家の方がおられて、昭和34年にはその酪農家の方たちが宇和酪農組合を法人化して牛乳を販売していたそうなんですね。で、そこで牛をたくさん飼っていますと、乳が出なくなったり出産できなくなったりした牛が出てきますので、そういった牛を利用して、「廃牛」という言葉があるんですけど、乳が出なくなった牛をちょっと太らせて肉牛として卸していたという、そういった歴史があったそうで。
佐伯)は~、そうなんですか!
仙波)酪農が盛んだった宇和町ならではのメニューと材料だったっていうことがわかったんです。
佐伯)今ですと、お隣の野村が「ミルクとシルクの町」っていうぐらいで乳牛のイメージありますけれども、昭和30年代は宇和が酪農が盛んだったんですね、面白~い。
仙波)どうも牛乳も、おいしい牛乳がとれる土地というイメージがその当時はあったそうです。
佐伯)宇和に。
仙波)はい。
佐伯)そうですか。やっぱり給食を探ることで当時の産業の構成だったりとかいろんなことが見えてくるんですね。
[ Playlist ]
Nostalgia 77 – Beautiful Lie
Rickie Lee Jones – On The Street Where You Live
SLY MONGOOSE – Make Your Mind Up, Little Girl
Duffy – Delayed Devotion
Selected By Haruhiko Ohno