今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、ビンデザインオフィス代表取締役の山内敏功さん。東京オリンピック2020の開会式で話題になった“ピクトグラム”のお話から、デザインの持つ力について伺いました。“ピクトグラム”が原因で国と国との論争に発展した事案があったなんて、御存知でした???


 

佐伯)デザインが元で国と国との論争になったなんていう歴史があるそうですね。

山内)あのね、非常口を誘導するマークね、グリーンの。

佐伯)もう本当にすっかりお馴染みのマークですが…

山内)これ意外と最近なんですよ、1980年代だったと思う。

佐伯)出来たのが?

山内)うん。あのね、まず最初日本人の太田幸夫さんだったかな、本も出されてますけども、この方が作った、このシルエットで逃げてる方向をピクトで表現してるんですけど、それとちょっと似たのがロシアにもあったんですね。

佐伯)ほ~。

山内)それを世界登録すると。世界の標準にすると。これ、命に関わるピクトでしょ?

佐伯)そうですね。

山内)火災があったりなんかした時に。それも実際そういう事件があって、逃げ遅れて亡くなったなんていう事件がその当時多くあったのでピクトを作ろうと。そして建築基準に入ってくるわけですよ。

佐伯)その表示が?

山内)商業施設には必ずそれをつけると。そういうのがあって、そして日本基準ができました。これを世界基準にしようという時にロシアと日本の戦いいなった、どっちがいいかっていう。

佐伯)同じ頃に、当時ですとソ連ですかね、も国際基準に申請してきたってことですか。

山内)世界で3000点集まって来たのかな。

佐伯)え!

山内)その中で残ったのがロシア案と日本案。

佐伯)はい。

山内)それでこれをね、後付けかどうか、多分本当だと思うんだけど僕は聞いた話ね。どちらが認知しやすいかと言うんで、実際にそのサインを部屋につけてスモークを焚いて、そういう現場を再現するわけです。

佐伯)たとえば火災が起こって煙で見えにくい部屋の中で、どっちが分かりやすく非常口が分かるかという…

山内)で、日本に軍配が上がった、太田さんの作品。

佐伯)そういうテストも行った結果。

山内)はい。それでロシアもそこで素直に引き下がった。

佐伯)そうなんですか~。これ当時はかなり話題になった論争だったんですか?

山内)そう、面白いでしょ。

佐伯)まあ、面白いと言っていいのか分からないですけれども、その太田さんが考えられたという日本のデザインは皆さんご存知の、あのグリーンのね、ちょっと真ん中のところが空間としてあって、そこに逃げてる人が入り込んでるっていうのが一目瞭然。でも新聞のその当時の記事にですね、ソ連案っていうのも出てるんですけど、これも同じようにって言ったらあれなんですけど、ある意味似てはいますよね。

山内)似てますよね。でも佐伯さんが見たらどっちがシンプルだと思う?

佐伯)シンプルなのは日本です。ソ連案は、逃げ込んでいく空間のところにもう一個なんか扉みたいなのがついてて…

山内)ドアみたいなのがあるでしょ。

佐伯)あります、あります。

山内)するとね、そういうのを一瞬見た時に、みんな命の危険を感じて瞬時に判断しないといけないサインですよ。そこに余分なドアみたいなのがあったら他の情報になってしまうんです。この向こうにまたドアがあるのかな、とかね。

佐伯)ああ。

山内)他の情報になってしまう。

佐伯)じゃ、やっぱりシンプルな…

山内)うん。

佐伯)というところもあって日本案が採用されたんですかね。

山内)と思う。というより実際に実験したわけだから。

佐伯)はい。本当にこの1枚の絵で、そのデザインで、世界中に通用するっていうのがやっぱりすごいですね。

山内)すごいと思いますよ本当に。

佐伯)私がいくら日本語で言葉を尽くしても、日本語がわかる国の人にしかわからないですよね。

山内)だから僕ね、アメリカとかヨーロッパを旅したことがあるんだけど、スケッチブックとペンを持ってってね。しゃべれませんよ僕、英語なんか片言の単語ですよ。でも絵に描いたらすぐわかる!

佐伯)え~、羨ましいです。

山内)それで僕、旅行してきましたもん。英会話できない人間が。

佐伯)いい交流ですね!

   


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Selected By Haruhiko Ohno


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