今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、面河山岳博物館の学芸員・矢野真志さん。愛媛県内には58種類の陸上哺乳類が生息していて、このほど「けものがたり~愛媛の哺乳類おどろきの素顔」という冊子が作成されています。番組では、執筆者のお一人である矢野さんから野生動物たちの意外な生態や研究の裏話をたっぷり伺い、ひと足早い夏休みの自由研究気分!?この夏は、貴重な動物たちとの出遭いを求めて面河に行きたくなった方もおられるのでは。


 

佐伯)ページをめくりますと今度はニホンモモンガというのが出てきました。可愛らしい写真も載っているんですけれども、モモンガって…子どもの頃、久万高原町の森の中を歩いてた時に何かブワッと飛んでいったのがいて、あれモモンガだったのかムササビだったのか何だったのか???っていう思い出があるんですけれども、モモンガとムササビってそもそも別のものなんですよね?

矢野)そうですね、種類は全く別で樹上性哺乳類と言って、いわゆる木の上に住む哺乳類って意味では一緒なんですけど、もう決定的に違うのはサイズですね。ムササビの方が大きくてモモンガがちっちゃい。

佐伯)だいぶん違いますか?

矢野)だいぶん違います。じつは最近も博物館の中にモモンガが入ってきたんですけど

佐伯)え~~~!

矢野)たまにあるんです。網で捕まえても展示室の奥まで行こうとするような状況だったので、捕まえてですね、逃したんですけど。

佐伯)そんなことあるんですね!

矢野)手に乗せようと思うともちろん噛んだりするのでしませんけど、もし乗せたとしたらもう手のひらにすっぽり収まるぐらいの…そうですね、どれぐらいですかね、でっかいアンパンぐらいまでですね、大きめの。

佐伯)でっかいアンパン(笑)、がモモンガ。対するムササビは?

矢野)ムササビは…そうですね、これも手に乗せることはほぼ不可能なぐらいのサイズで、膜を広げて飛ぶ時はもう座布団ぐらいのサイズになる

佐伯)そんな大きいんですか!

矢野)非常に大きいです。

佐伯)は~。で、住処が違ってるんですか?

矢野)そうですね、ムササビの方が里地にいるっていうか標高は低めっていう風に言われてて、モモンガが比較的高いところにいるっていう風に考えられているんですけど

佐伯)ざっくりと

矢野)ざっくりとですね。その傾向はあるとは思うんですが、ムササビが1500m、いわゆる石鎚でいうと土小屋という登山の起点のとこですね、あの辺で見つかったこともあるし、モモンガが標高500mぐらいで見つかったっていうケースもあるので。なので決してそうは言えないところもあるので、いまいち県内でのこの二種類の分布の状況っていうのはまだまだわかっていないんですね。

佐伯)まだ謎の多い動物なんですね。でも久万高原で見たのはさすがに座布団じゃなかったから、あれはモモンガだったのかなって思いますけど(笑)、じつは面河山岳博物館にとっても馴染みが深いんですね、さっきおっしゃったように。

矢野)はい、モモンガはさっき言いました通り、博物館に入ってくる事例が10年20年ぐらい前から、決して多くはないんですけど数例あってですね、博物館の前を走ってるとかそういうこともあったんですね。で、もう確実にこの周りにはいるというのが言えるという場所だったので、住民の方を募ってですね、モモンガの巣箱を設置した。巣箱をかけると利用するという例があるので、巣箱調査をして本当にいるのかどうかを確認しようっていうことで調査隊を結成したんです。それが名前を「モモンガクラブ」と言う

佐伯)可愛らしい名前。

矢野)はい、それが2008年だったんですけど、その調査の甲斐あって実際にかなり博物館の周辺だけでモモンガが複数個体いることが分かって、博物館に入ってくるのも「なるほど」と、「そうだろうな」というのが言えるぐらいの記録が取れました。

佐伯)そのあたりにいるっていうのは、環境ですか?

矢野)そうですね、一つはですね、最近の県外での研究事例も合わせて考えると、山深いところにももちろんいるんですけど、人間が作った森の…人工林ですね、スギ、ヒノキ。久万高原町は林業の町なので…

佐伯)多いですよね。

矢野)非常に人工林が多いんですけど、人工林の中に巣箱をかけると結構利用があるんです。

佐伯)はあ。

矢野)で実際巣箱の中に、巣材と言って、まあ言ったら自分でベッドを作るんですね、それがだいたい杉の皮なんです。

佐伯)へ~。

矢野)杉の皮をもう1ミリ2ミリぐらいに細く裂いてですね、ふわふわの布団を作るんですね。で、たぶん杉がそういう好みの布団を作るのに適してるんだと思うんですけど…

佐伯)へ~、そうなんですか!

矢野)でも人工林ばっかりでは多分ダメで、周りに広葉樹ですね、どんぐりがなるような木だったり、いろんな植物が生える広葉樹の森が近くに接してたり混ざってたりすると、たぶん住みやすいんだと思います。なので面河渓に接している人工林っていうのが、うちの博物館の周りにはあるので、まさにそのモモンガが住むには一番いいんじゃないかなという風に、他の研究事例から考えても言えますね。

    


[ Playlist ]
Ophelia Swing Band – Knock Knock
Laura Marling – Cross Your Fingers
Seigen Ono – On The Sunny Side Of The Street
Keller Williams – Love Handles

Selected By Haruhiko Ohno


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