今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、西条市にある四国鉄道文化館と十河信二記念館の館長、加藤圭哉さん。愛媛出身で「新幹線の父」と言われた十河信二の足跡についてお話を伺いました。俳句もたしなんだ十河は、自らの雅号を「春雷子」としています。「春の雷は音はするが害はない」ところから、「自分はよく雷を落とすけれど、害はない」のに掛けているのだとか。そんなユーモアも持ち合わせた「十河さん」。部下たちに慕われていたことを示す、こんなエピソードがあります。


 

佐伯)オリンピック開幕のわずか9日前。

加藤)9日前ですね。

佐伯)その10月1日に東海道新幹線開通。ということは、もうホント功労者ですから、開通式って言うんですか、出発式みたいな所っていうのは十河さんもこう胸を張って出席をされて、皆さんに歓迎されてっていう形だったんでしょうね。

加藤)いや、そういうことにならなかったんですね。

佐伯)ならない?

加藤)じつは十河さん、(国鉄総裁を)2期はしましたけれども3期目はさせてくれなかったんですよ。実際は3期目を健康の理由とかその辺りで、もうほぼほぼ目処がつきましたんで、もう完成するという目処をつけた段階ですね、お金の面で随分と迷惑かけてるんで次はやりませんと言うのでですね、辞退したということになってますけれども、総裁をやらせてくれなかったという見方も出来ますけどね。

佐伯)じゃあ完成した時にはもう総裁じゃなかったってことなんですか?

加藤)もう責任を取って3期目はやらなかったということですね。1年か2年ぐらい前にはもう退陣してたと。

佐伯)そうなんですか。じゃ、わ~って盛り上がっている時には…

加藤)テープカットには呼んでくれなかったんです。

佐伯)どこにいたんですか?

加藤)自宅のアパートでですね…

佐伯)え~!

加藤)テレビを見ながら、それを喜んでたということですね。

佐伯)なんか「そこに居たかったなぁ」なんて思いはなかったんですかねぇ?

加藤)だから周りの方々はね、ぜひ十河さんにも、それから島秀雄(鉄道技術者、十河とともに「新幹線の父」と呼ばれる)にも、出席してテープカットのところでも一緒にやってほしいということはあったみたいですけれども。

佐伯)ここはなんとも複雑な…。

加藤)プラットフォームではテープカットはされてないですけれども、セレモニーの後の国鉄の本社でですね、開通式の記念式典に呼ばれました。そこで昭和天皇から銀杯を賜ってますね。

佐伯)へ~。これはもう大変名誉なことですよね。

加藤)そうです、そうです。

佐伯)天皇陛下から…そうですか。

加藤)で、昭和39年、その新幹線の開通した年ですけど、勲一等瑞宝章を受けております。これはですね、十河記念館にその実物が展示されてますんでね。それとか県民賞、それから44年には西条の名誉市民にもなってますし。

佐伯)後々も語り継がれるべき功績をあげたということなんですね。

加藤)十河さんがその当時作った新幹線、一番最初に走ったのが0系の新幹線と言われてますけども、それが長くね、20年も25年も活躍した。その0系の新幹線が今、西条の十河記念館の横、北館に展示されてます。
佐伯)ぜひね、行って「わー!」って楽しむだけじゃなくて、これを作ったのが愛媛の方だったっていうところにね、思いを馳せていただきたいですね。

加藤)そうですねぇ。十河さんがね、昭和56年に亡くなりますけども、本葬の後ですね、十河会という会があるらしいんですけども、それの会長さんがですね、遺影を持って東京から故郷の西条へ戻る途中、遺影を持って新幹線に乗ったらですね、車掌さんが来て「11号車に御遺影の席を用意させていただきました。どうぞご利用ください」言うんでね。

佐伯)へ~。

加藤)11号のグリーン車にね、ちゃんと十河さんの写真の席ができて。

佐伯)はあ、そうですか。

加藤)そこで新幹線に乗ってですね、十河さんが岡山まで来られたと。その時にですね、各ホーム、たとえば東京から出たら次名古屋でしょ、それと京都とか大阪、新大阪とか、その駅々でですね、国鉄職員が待ち構えてて十河さんをお見送りしたということがありますね。

佐伯)それは、すごいエピソード…

加藤)そういう皆から慕われた十河さん。あの西条の人たちは信頼の意味を込めてですね、「十河さん」って呼びますけども、国鉄の中でもね、「十河さん」でずっと職員からも信頼されて、ずっとやって来られましたからね。

佐伯)日本の鉄道界の中では語り継がれる、ある意味「伝説」のような方なんですね。

加藤)そうですね。

 

 

 

 


[ Playlist ]
Björk Gudmundsdóttir & Trió Gudmundar Ingólfssonar – Tondeleyo
Anita O’Day – You Turned The Tables On Me
Roy Ayers – Love From The Sun
Beth Orton – Love Like Laughter

Selected By Haruhiko Ohno


この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く