今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、プロトコールマナー講師の岡田美恵子さん。コロナ禍にあって最近は「マスクマナー」なるものが物議を醸しましたが、目の前に迫った新年度、新たな人間関係を気持ちよく広げるためにマナーを知っておくと得するかも。そこで岡田さんに国際的なマナーやエチケットである「プロトコールマナー」や各国独特の文化とマナーについて伺っていると、こんな意外なエピソードが!


 

佐伯)何がマナーで何がマナー違反なのかというところの線引きって難しくないですか?

岡田)最近皆さん「マナー」っていうワードにね、振り回されすぎるんじゃないかなという風に思うんですね。例えば「マナー」になんとか主義っていう「イズム」をつけると「マンネリズム」になるんですね。マナーに振り回されるとつまらないってことになるんですね。だから臨機応変に、私は生徒さんにお伝えする時に「マナーはマストではなくてベスト」という風に言うんです。シチュエーションとかお相手とか色々ありますよね。その時に相手に対してどのように振る舞うかの正しい選択ができる、これっていう風に決まってるわけじゃないんですね。

佐伯)ははぁ。マストは“何とかしなければならない”と、そういう考え方じゃないんですね。

岡田)そうそう、どうしたらいいかなって。

佐伯)どれが一番いいかって。

岡田)やっぱり人の性格が、お相手が違ったら性格が違うので、誰も彼もが金太郎飴みたいな接し方じゃつまらないじゃないですか。私も専門学校にも教えに行きますけれども、ちょっと知ってるような最近の言葉を中に入れたりとかですね、やっぱり相手をリラックスさせるような言葉遣いをしてみたり。お店でも場合によっては方言で話してみたり。相手に安心感を与えるということが一番大事なので。それと不快感を与えないということですね。そういうことは大事だと思います。

佐伯)例えば外国で言いますと、マナーの歴史もあるんでしょうし、レディファーストというのがぱっと思い浮かびますけれども…

岡田)日本女性が一番不満なのはそこのところじゃないですか?「もう、うちの主人がね…」って私も時々言いますけどね(笑)。「一人でスタスタと行ってしまうし」なんて。その点、外国の男性はドアを開けてくれたりとか、椅子を引いてくれたりとか。

佐伯)それもさり気ないんですよね。

岡田)自分がそういうふうにしていただくととても嬉しいじゃないですか。

佐伯)はい。

岡田)でも大元の始まりは、最近この話はメジャーになってきたと思うんですけれども、ある王様としましょう。王様っていつも地位を狙われてるわけですよね。お食事の際でも、今運ばれた食事に毒が盛られてるかもしれない。お毒味した人だってね、何も無かったかのように出したのかもしれない。なのでまず、妃に「じゃあちょっとこれ先に食べなさい」って食べさせるんですね。で、何ともなかったら「あ、大丈夫だった」という…

佐伯)王妃様に?

岡田)そうです、そうです。

佐伯)え、(レディファーストって)そこから来てるんですか?

岡田)そうです。で、お部屋を出るときは、自分が先に出ちゃうと刺されるかもしれないから先ず王妃様に出ていただいて、何事もなかったら安全かなっていうことで自分(王様)も出て行く、というのが始まりという風によく言われます。

佐伯)え~!

岡田)でも、その後騎士道精神とか、宗教的なキリスト教的な考え方で弱者を助けるという形で今のようなレディファーストに変わっていったという風に言われます。

佐伯)え~、とても意外な…

岡田)そうですよね、ちょっとね、ガッカリな…

佐伯)本当に!

岡田)今度は、嬉しいお話も一つあるんですけれども。最近ね、男女平等うんぬんと言われますけど、よく日本女性は「本当もう男の人は威張ってばっかりで、『女は三歩下がってろ』って言われるのが、なんか自分が虐げられてるようで不服」という話もね、たまに伺いますけど、でもこの「三歩」っていうのがどういう距離だかわかりますか?

佐伯)え?なんか「影を踏まない」みたいな…

岡田)ええ、影を踏まず、ですよね。でも太陽の高さによって影の長さは違いますから(笑)

佐伯)確かに(笑)。じゃあ、この「三歩」はどういう意味?

岡田)刀の鞘の長さなんですね。

佐伯)はあ!

岡田)族が襲ってきた時に、武士ですね、男性は自分が刀を抜いて、自分が先に戦うということなので、女性が横にいると刀が抜けないですじゃないですか、邪魔になって。なので、いつでも自分が鞘から抜けるように三歩下がって歩いていなさい…

佐伯)「俺が守るから」という。

岡田)そういうことですね。

佐伯)じゃあ全然女性蔑視じゃないですよね!

岡田)そうなんですよ。それが何処でどう変わったか、今のような受け取られ方になってしまったんですけれども。

佐伯)じゃあ、それは女性への思いやりからの言葉なんですね。

岡田)そうですね。女性は持ってても短刀しか持ってませんので、男性が先に刀を抜くというので三歩下がるという風に言われているということですね。

佐伯)本当に時代によって同じ行動だったり言われが全く違ってくるんですね。

岡田)今や逆転してしまってますものね。だからマナーっていうのは、そういう時代とともに変化していくんですね。その時にフィットしたマナーというふうに変わっていくのかなという風に思います。まあ三歩下がるのがマナーだとは思いませんけどね、今はね(笑)

   

 


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Selected By Haruhiko Ohno


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