今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、白鷹記念館館長の栗田孝一さん。丹原町で江戸時代から続く鋳造所を営んでいる栗田さんは、歴史的建造物の修復・再建に欠かせない和釘を手掛ける鍛冶師・白鷹幸伯さんの仕事ぶりや人柄に惚れ込み、ご自宅の一角に白鷹さんの記念館を建ててしまったほど。「千年の釘」と言われる和釘を打ち続けた白鷹さんの生涯を、熱く語ってくれました。
佐伯)きょうはスタジオに「鉱物」?なんかこうキラキラ光る部分を含んだ石と言うか岩と言うか、があるんですけれども、これは何ですか?
栗田)これは玉鋼ですね。
佐伯)“たまはがね”?
栗田)はい。日本刀の材料そのものですけど、日本の鉄源の最初は、「たたら」による製鉄(※鉄原料として砂鉄を用い、木炭の燃焼熱によって砂鉄を還元し、鉄を得る方法)によって得られた鉄を使って、和釘、武器、武具、それと工作物、大工道具、そういう鉄一般のものを作る鉄原というものはこの玉鋼が基本だと考えられます。
佐伯)じゃあ、白鷹さんの和釘も、この玉鋼からということですか?
栗田)ところが現在の状況からいうと、玉鋼自体極めて高価。材料としても、大量の和釘に使う量を確保するということは、すでに出来にくい状況です。で、色々な材料を試して、当時の材質の研究も行なって、その当時の材質に近い材料というものを当時の日本鋼管、NKKですか、が協力して「純鉄」、当時の材料材質に近い材質を提供してくれた。これが大きい要素で、白鷹さんもその感謝の気持ちを込めて、和釘にはNKKの材質の証明の刻印が入れてあります。
佐伯)へ~。そうして、いい材料は手に入りました。今度はこれを叩いていく?
栗田)そうです。ところが、この白鷹先生は鍛冶の技が素晴らしいということと同時に、極めて手が早い。早く作れる、そういう腕も持っておった稀有な方で、だから何千本もの釘を納期通りに納めることができたということもあります。
佐伯)スピード感をもった作業というのも、仕上がりにも影響ってあるんですか?
栗田)そうです。一度焼いて直ちに叩いて、目的の形をそれこそ一発で作るということは、材質に対して非常に緻密でなおかつ耐食性にも影響する「組織の粗大化」を防ぐということも行われた、非常に理にかなったお仕事の仕方でした。
佐伯)そうなんですね。
栗田)とにかく先生の釘を作る鍛冶のスピード、当然包丁にも言えることですけど、超人的と言える早さで行われていたということになります。
佐伯)そうして作られた「白鳳型」の和釘の復元によって、白鷹さんの名前が一気に全国区になったと。
栗田)そうです。
佐伯)そこから先、この和釘と言えば白鷹さん!という感じでいろいろなものの修復に携わられたんですか?
栗田)そうです。色々な釘の引き合い、要求に対して非常に真剣に取り組むということを行って、いろんな場面で白鷹さんの和釘が使われております。
佐伯)例えばどんなところに?
栗田)例えて言いますと、山口県の錦帯橋。
佐伯)おお!
栗田)この場合は錦帯橋を建て替えるという大きい事業が行われまして、その時にも白鷹さんの大量の釘を必要として、白鷹さんの釘が使われました。
佐伯)お寺や神社だけじゃないんですね。錦帯橋、橋も。他にも…例えばお城なんかどうですか?
栗田)近くでは大洲城。松山城の修復にも白鷹さんの釘を使っております。
佐伯)じゃあ、白鷹さんがいらっしゃらなければ、こうした立派な建築を後世に遺すことも、なかなか難しかったかもしれない?
栗田)ま、白鷹さんの功績ということは、とにかく一緒に考えて真剣に取り組むということを行ったということになります。
[ Playlist ]
Bill Withers – Lovely Day
The Big Fish – Happy Ever After
Belle & Sebastian – There’s Too Much Love
Donny Hathaway – Love, Love, Love
Hindi Zahra – Fascination
Selected By Haruhiko Ohno