今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、石丸農園代表の石丸智仁さん。松山で50年以上続くみかん農家の5代目で、柑橘類の栽培から加工品づくり、販売まで手掛けていらっしゃいます。松山空港にある「みかんジュース蛇口」のあるお店も、石丸さんのお店です。東京で起業していた石丸さんに、家業を継ごうと思わせた鍵になったのが「伊予柑」。番組では、今が旬の「伊予柑」への愛もたっぷり語ってくれました。
佐伯)「伊予柑」って言うからには、愛媛生まれの柑橘なんですかね?
石丸)元々はみかんっていうのは、ま、諸説あると思うんですけど、インドの方からポンカンが中国の方でぐるぐる回ってきて、江戸時代ぐらいに長崎とか山口の方に入ってきて根付き始めたみたいな話が有力かなって聞いてまして。そこで一応伊予柑の苗木も、仏手柑とかいうインドの、手みたいなみかんとかあるんですけど…
佐伯)あ、見たことある。
石丸)なんかそういう感じで色んな種類が入ってきて、愛媛県に根付いたと言うか、ま、気候が合ってたんでしょうね。みかんができるとこは住みやすいってよく言うんですけど、愛媛あったかいですから。
佐伯)温暖ですね。
石丸)で、愛媛で出来たみかんを一応その「温州みかん」とかと差別化っていうわけじゃないですけど間違えないようにするためにも、伊予の国ですから「伊予みかん」って呼び出したので、「伊予柑」に。
佐伯)へ~、そういう歴史なんですか。じゃあ今、それこそ「せとか」とか「紅まどんな」とかは、それを目指して品種改良を重ねて作ったものじゃないですか。「伊予柑」っていうのはそういうんじゃなくて、自然に変わっていったみたいな感じなんですか。
石丸)そうですね、「河内晩柑」とかもたぶん「文旦」の突然変異って聞いてるんですけど、「伊予柑」も元々種類が何種類かありまして。
佐伯)え、そうなんですか?
石丸)はい。で、「勝山いよかん」ってよく言う…12月に昔よく作ってた…僕が幼稚園の頃なんかは。今「伊予柑」って結構ボコボコしてるんですけど、すごいつるっつるのおみかんでありまして、「勝山」って言うんですけど。ま、「橙」みたいなイメージですかね、持った感じ、つるつるの。で、それが主だったんですけど、今から50年ぐらい前に平田町の宮内さんって言う、「宮内いよかん」というくらいですから名前がついちゃってるんですけど、宮内義正さんの所の木で突然変異というか変り種が生まれて、それがすごい香りが良くて作りやすい。で、徐々に、本当に徐々に、「伊予柑」はいろんな種類がある中で「勝山」とかよりも「宮内」が残っていったたと言うか、「宮内いよかん」になって落ち着いたと言うかそういう感じですね。
佐伯)いろいろあったんですね、伊予柑にも種類が。
石丸)はい、色々ありました。
佐伯)おっしゃるように、「伊予柑」って言ったら「宮内いよかん」のことなんだと思ってました。
石丸)「宮内」がいちばん香りがいいと思いますね。
佐伯)あの愛媛マラソンのコース沿いに倉庫があって、宮内いよかん…
2人)「発祥の」って!
石丸)ありますね(笑)
佐伯)そう、看板を見かけていたので。
石丸)あそこですよね、平田の。
佐伯)そう、松山市の北部の方にある。じゃ、今は「宮内いよかん」だけど、以前は色々あったと。その「宮内いよかん」は、香りがとにかくいい。
石丸)時期も2月ぐらいが旬やと思うんですけど。「伊予柑」って基本12月の終わりぐらいから3月ぐらいまであるんですけど、たぶん2月の2 L サイズとかは結構おいしいと言うか香りも、味、大きさもバランスが良い。で、酸味も甘いもバランスが良いと個人的には思います。
佐伯)じゃ、まさにこれから美味しいのが「伊予柑」ということですね。
石丸)はい、2月ですね。ちょっと言わしてもらっていいですか!私、大学は東京の方に行ってたんですけど、スーパーに行って「伊予柑」がカゴに盛られて結構いい値段で売られてたんですけど、なんかちょっと買って高かったんですけど(笑)、本当愛媛の人からするとちょっと考えられないぐらい。一カゴ500円ぐらいで買ったんですけど、なんかあんまり…僕は本当2月の「伊予柑」の味を知ってるんで、なんかこう1月とかあの辺に出てるとかなんかちょっと早めに出してるとか結構そういうのってあんまり…美味しくないわけじゃないんですけどなんか本来の「伊予柑」と違うなと思って。だから、2月の「伊予柑」を食べてもらいたいんですよね。
佐伯)“2月の伊予柑”!なんかこうブランドになりそうですけどね(笑)。
石丸)2月の2Lが僕の中で言う「伊予柑」です!
佐伯)この冬は、これから先の2月の2 L を。いやぁ、楽しみになってきましたね。じゃあ突然変異で生まれて、それを上手に育てて広げていったって感じなんですか。
石丸)そうですね。みかんの台木は「枸橘」(カラタチの別名)なので、もうどの木も全部一緒なんですね、スタートは。面白いですけどね。
佐伯)へ~。
石丸)で、その穂木って言うか、ま、形成層と形成層をつないで、こう…中学理科で学んだやつですけどテープで巻いたりして穂木していくんですけど、だいたい原木は「枸橘」ですよね。で、穂木して「宮内いよかん」が作れます。
佐伯)じゃあ、それが増えていったっていうか、認可みたいなものは?
石丸)その枝を接木していくと、2年ぐらいでは実が成りますんで。
佐伯)そんなすぐ成るんですか!?
石丸)成ります。1年生2年生って言うんですけど、ホント2年もあれば初成りだと思います。
佐伯)じゃ、けっこう成長の早いタイプの…
石丸)早いですね。あと管理もしやすいですよ、「伊予柑」は。
佐伯)じゃ、それが出来た時は、みかんに次ぐなんかスゴイものができたぞ!みたいな。
石丸)でしょうね、うちのおじいちゃんなんてホント良い時を経験しとんじゃないんですかね。
佐伯)いい時っていつぐらいなんですか?
石丸)もうおじいちゃん亡くなってますけど、それこそ40年前とか…。
佐伯)昭和50年代とか?
石丸)「伊予柑」で本当にすごい良かった時ですよね。今はもう伊予柑の価格は下がりっぱなしやと思うんですけど。
佐伯)あれ、なんでなんですかね。剥くのが手間だっていう?
石丸)剥いて食べるし、それに今はもっと甘い…甘ければいいってもんじゃないと思うんですけど、甘~いおみかんとか高級柑橘が結構出てますよね。
佐伯)ホントねぇ、甘ければいいというものじゃないって。まぁ好みですけどね。やたら甘味のことを皆さんアピールされるじゃないですか。でもね、甘味だけじゃないんだよな~(笑)
石丸)そうですね。人間と一緒ですね。
佐伯)ホントですね!酸いも甘いも、というところが(笑)。
[ Playlist ]
Adele – Melt my heart to stone
The Heptones – Ob-La-Di, Ob-La-Da
Mayer Hawthorne – Work To Do
Abyssinians – This Land Is For Everyone
Selected By Haruhiko Ohno