今年最後に坂の上に訪ねて来て下さったのは、松山のまち歩き=ハイクと俳句を楽しむことを提案する「松山はいく」のガイド・コーディネーターである渡辺和也さん。あの夏井いつきさん率いる俳句集団「いつき組」のメンバーでもあります。現在「松山はいく」が事務局となって作品募集中なのが、「瀬戸内・松山 国際写真俳句コンテスト」。「海」をお題に自由な写真と俳句を応募する「自由句」と、12枚の課題写真に対して俳句を応募する「課題句」部門があり、共に日本語でも英語でも応募できます。そこで、通常の俳句と「写真俳句」の違いや面白さについて、渡辺さんに水を向けると…。
佐伯)子規さんは写実っていうことを唱えられましたけれども…
渡辺)写生、写実ですね。
佐伯)でも写真があって、それをそのまま写真のような句にしたらダメですよね。
渡辺)そうですよね、なんか写真の説明したみたいになっちゃいますから、別にこの俳句いらないじゃんって。写真いらないじゃん、ってなるかもしれないんで。風景が想像できるような俳句っていいって言われますけども、想像しようと思ったらその映像が出てきちゃったらもう台無しじゃないですか。
佐伯)いわゆる“百聞は一見に如かず”状態。
渡辺)「あ、見ちゃった」っていう、ね。(映像が)無いほうが、頭の中で想像ってどんどんいい感じで広がっていきますから、その楽しみが消えちゃったりもする可能性がありますから。
佐伯)じゃあ、写真の中に描ききれてない何かを読むのがいいんですかね?
渡辺)かもしれないですね。だからよく、あのテレビ番組の方では「発想を飛ばす」っていう言い方をしたりとか「写真に入り込む」だったりとか、そんな言い方をします。たとえば自由句の場合だと、本当に写真の映像の中にいるわけですよね、本人って。現場にいるわけですから。
佐伯)自分が写真撮ってるってことですよね。
渡辺)はい。現場にいるわけですから、すでに写真に入り込めてるんですよ。温度感だったりとか、聞こえてる音だったりとか、もしくは匂いがあるかもしれないし風が吹いてるかもしれないし、それを全部実感できてるわけですから。
佐伯)でもそれは写真には出てない。
渡辺)写らない部分ですからね。それだけで、もう既にちょっと深まりそうじゃないですか、なんか。だから可能性がまだまだいろいろ広がり得るなという。
佐伯)そっか…。じゃ、課題句だったら、自分はそこには立ってないけど、立った気分になってその写真の中に立ったら何が見えるだろうとか。
渡辺)そうですね、だから自由句を1回作ってみた後で課題句にチャレンジすると、「もしこれを自分が撮ったとすれば、そこに居たとすれば」と想像しやすいかもしれないですよね。
佐伯)そうですよね。
渡辺)そうなるとまた全然深まったことになるかもしれない。ただ単に写真とにらめっこするのとは違うかもしれませんよね。
佐伯)いやぁ、これはちょっと頭を使うし、楽しいですね!
渡辺)そうなんです、楽しめると思います、ほんと!楽しいと思います。
[ Playlist ]
Tracey Thorn – Femme Fatale
Sim Redmond Band – Life is Water
Build An Ark – You’ve Gotta Have Freedom
Coke Escovedo – I Wouldn’t Change A Thing
Selected By Haruhiko Ohno