今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、「いよ本プロジェクト」代表の岡田有利子さん。伊予市で私設図書館の運営や古本交換会、交流会などの活動を続けておられます。本によって人が繋がる、そんなシーンがたくさん目に浮かびます。岡田さんが繰り広げる世界がとても興味深く、わりと活字中毒の私も思わず前のめりに…。


 

佐伯)古本交換会、こちらはどんな活動になるんでしょうか?

岡田)これはですね、JR伊予市駅の隣にある手づくり交流市場「町家」という場所があるんですけど、そこで月に1回開催している交換会というものなんですけど。

佐伯)先ほど「本のわらしべ長者」と。とても魅力的なコンセプトなんですけれども、別に「この本を持ってきてください」っていうんじゃなくて、みんなが思い思いの本を持ってきたので大丈夫なんですか?

岡田)そうです。お家にある読み終わった本ですとか、例えばお子さんが小さい時に使ってた折り紙の本とか、「今では不要になったんだけど捨てるのは忍びない。ちょっと誰かに使ってもらえたらいいな」って思う本を持ってきてもらって。で、私達が用意している本の中から一冊につき一冊を交換してもらいます。

佐伯)じゃ、自分はもう役目を終えたものを持って行きます。それと引き換えに、「これちょっと面白そう」っていう、新しい宝物になるかもしれないものを手に入れることができるんですね。

岡田)はい、そうですね。

佐伯)あの…変な話、例えば読み終わった文庫本、まぁ数百円じゃないですか、それを持ってったところ、そこにあったたまたま2000円とか3000円とかする図録だったりとかが欲しいとか思っても、それって大丈夫なんですか?

岡田)あ、それはもう大丈夫です。そこに並んでる本である限り大丈夫!

佐伯)そうなんですね~。実際持って来られる本ってどんなものが多いんですか?

岡田)それはいろんな本が集まります。絵本もありますし、ご自身が読まれた小説もありますし。最近ちょっと地味に嬉しいなと思うのは…

佐伯)え、何?

岡田)例えば、先月の交換会で交換した本を読みました。で、とっても面白かった!だから今月持ってきて、また別の本と交換しますっていう風に、そういう使い方をしていただいても全然大丈夫なんです。

佐伯)はいはいはい。面白かったから、もっと他の人にも読んでほしいっていうつながり!

岡田)ちょっとなんかね、嬉しいです。

佐伯)そのきっかけを提供されてる方としては嬉しい(笑)

岡田)すごく嬉しいですし、そこにたまたま居合わせた人に「私これ読んだんだけど面白かったのよ」っていう風に、話がまたその方からちょっと広がっていくんですよね。本のおすすめをする人がどんどんと増えていくといいなと思ってます。

佐伯)その会話だったら、「これ面白かったから読んでみたら?」みたいになっても、「そうなんだ。私はこの間こんなの読んだらこっちも面白かったよ」みたいな形で。なかなか本って…読む人は結構ず~っと読むというかしょっちゅう読むし、読まない人は本当にもう全く読まないっていう二極化とかもあるのかななんて思うんですけど。

岡田)そうですよね。なんか読まない人は読まないんだけど、やっぱり本っていうのは可能性を広げるものじゃないのかなって私はすごく思っていて。本によってね、広がる世界ってたくさんありますので、私はやっぱり本がどんどん読まれる世の中になると嬉しいんですけど、ただ「この本を読んでください」って押し付けるのはちょっと苦手で。「読みなさい」と言って読まされる本ほど苦痛なものはないかなと、私は思ってますので。

佐伯)それは分かる!これは分かりますねぇ。何きっかけだったら読書が楽しいなっていうきっかけになるんでしょう?今さっきおっしゃった、「これ面白いから読んでみたら?」っていう会話なんてとっても素敵だと思いますけど。

岡田)やっぱり人っていうのは、楽しいことをやってる人にどんどん惹かれていっちゃうものなので、本が好きな人が「これ面白かった~!」とか「この本はこう思った」とかそういう声をどんどん発信していくのも一つですし、そういうのを私は古本交換会とかのイベントできっかけになればいいなとも思っています。

佐伯)まさにそのきっかけを提供されているというところなんですね~。何かこう印象に残っている…すごく変わった本を持って来られたとか(笑)何かエピソードありますか?

岡田)あの、変わった本っていうんじゃないんですけど、私がすごくキュンとなった出来事がありまして。

佐伯)おっ!

岡田)はい。白髪の素敵な女性がですね、たまたまそこを通りかかったんですけど、「私は若い頃すごく本を読んでたのよ」って言って、「どういう本が好きだったかと言うとね」って言って佐藤春夫の『秋刀魚の歌』っていう詩を諳んじられたり。あと「まだあげそめし前髪の…とかゲーテが好き」とかそういう風に、かつて読んでた純情だった自分を滔々と語られた時に、「なんて素敵な時間、なんて素敵な方なんだ」と思って話を聞き入ってしまいました。

佐伯)は~。あの、どういう本を読んでるとか、どういう本が好きかとか、その本を読んだ感想とか聞くと、確かにその人の「人となり」っていうのが透けて見えますよね。

岡田)そうなんです。で、人って本を前にすると、たとえその本がなくても本について語り出すんですよ、本を読んできた人は。その人の読んできた本、そして好きな作家、こういうジャンルが好きっていうのを。そしてそういうちょっとキュンとくるような切ないなんかね、お話とかもね、教えていただけるんで、すごくそういうのは印象に残ってますね。

 


[ Playlist ]
Seu Jorge – Bem Querer
Bob Dylan – Corrina, Corrina
Domenico – 5 Sentidos
Sandra Cross With Alan Weekes – Moon River

Selected By Haruhiko Ohno


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