今週は「坂の上の雲ミュージアム」特設ブースからの生放送!ミュージアムでは現在、特別展示「秋山真之と海軍兵学校」を開催中です。呉市の海事歴史科学館=大和ミュージアムと今治市の村上海賊ミュージアムとの連携事業として行われているもので、今回の共通テーマはズバリ「海軍」。そこで、学芸員の川島佳弘さんに海軍兵学校時代の真之について伺うと、「成績優秀でエリート街道を歩んだ天才参謀」というようなイメージがある真之の“意外な経験”が見えてきました。


 

佐伯)明治ということで国が大きく変わって、各国に負けないように国を興したてていこうという時期の海軍兵学校ですから活気に満ちていたのかなと想像しますけれども、実際にはこの海軍兵学校って、そもそもどういう学校だったんでしょう?

川島)この海軍兵学校、なかなか耳馴染みがないのかもしれませんけれども、これは明治時代に作られた海軍の将校を育成するための学校です。

佐伯)将校のための学校なんですね。

川島)はい。海軍兵学校に入学した生徒というのは、軍人の身分として扱われます。で、卒業後はですね、そのまま海軍に勤務する、従事することが求められていたという事なんですね。その代わりと言ってはいけないんですが、彼らは集団生活を送るんですけれども、学費を始め衣食住、そこにかかる費用というものは全部国が負担する。

佐伯)へ~、そうなんですね。無料で学べるということは人気の高い学校だったんですか?

川島)そうですね、当時は義務教育があるんですけど、基本的には学費がかかります、一般的な教育学校というものは。でもいくつか学費のかからない学校というものがあって、その一つがこの海軍兵学校であったということです。

佐伯)誰でも、というか試験はあるんでしょうけれども、入るのに身分とかは関係なかった?

川島)そうですね、もう試験の成績で評価されるという形になります。

佐伯)じゃあ、やっぱり人気も高くて、入学試験を突破するのは難しい学校…

川島)そうですね、秋山真之と同じ試験に、例えば松山ですと柳原極堂=子規の友人ですけど受けておりますが、残念ながら不合格になっております。

佐伯)そうなんですね!やはりそこでちょっと優秀だった頭脳明晰な真之の片鱗は感じられる。

川島)そうですね、ちょっと具体的な比較にはならないんですけど、当時同じ時期の大学予備門、今の東京大学、そこの試験と倍率的にはあまり変わらないのかなと。受験者数とか合格者数の数は違いますけどね。ですから純粋な比較にはなりませんけど、やはり非常に人気があると言うか、難しいということは言えると思います。

佐伯)実際そこに入学すると、どんな感じで皆さん勉強される?やっぱり厳しかったんですか?

川島)そうですね、やはり給料をもらうというか国のお金で勉強させてもらってるというものですから、当然落第などしてはもってのほかであったりしますので、日々の試験とかそういったものに対しては非常にシビアな部分があったと思います。

佐伯)そうなんですね。もともと何処に出来たものなんですかね?

川島)もともと学校自体は設立当初から東京の築地にあったんですけれども、真之が在学している明治21年にですね、広島の江田島という所に移転します。

佐伯)江田島って今も海上自衛隊の施設がありますよね。

川島)そうですね。

佐伯)じゃ、途中で移転した。

川島)そういうことになります。

佐伯)ということは、ピカピカの校舎で気持ちよく真之たちは学べた。

川島)と言いたいところなんですけどね、移転当初は実はまだ全ての施設が完成してはいなくてですね、真之たち、その途中で移転してきた生徒たちというのは、桟橋に係留された「東京丸」という船、ポスターとかチラシに出てるこの船の写真があるんですが…

 

佐伯)あ、今回の特別展示のチラシにある、結構大きな船ですけれども。

川島)この船で生活をしていたということなんです。

佐伯)え!?ここに住んでたってことですか?

川島)簡単に言えばそういうことですね。

佐伯)それ、まあまあハードですよね?

川島)その当時のことを記したものを読んでみますと、船底はですね、腐食して常に海水が入ってくる有様だったと。

佐伯)大丈夫なんですか、沈まないんですか!

川島)そうなんですよ。だから修理しながらなのか…その辺りはちょっと分からないんですけど、非常に船自体が古かったようなんです。で、船内の部屋があるんですが、そこがなかなか十分な明かりがなくて、常に薄暗い状態だったという記録が残っています。

佐伯)え~、じゃあ新しい兵学校で颯爽と暮らしてたのかと思ったらそうでもなくて、かなり厳しい環境で勉強もしていたということなんですか。

川島)むしろ東京の築地の校舎の方が新築に近い状態だったわけです。

佐伯)へ~、なんでここに来たんだろうって思ってなかったのかしら。当時の心持ちが分かるような、例えば手紙とかそういうものは残ってるんですか?

川島)そうですね、真之が両親に宛てた手紙が残ってるんですけど、それを少し読んでみますと「寒い」って言うようなことが書いてあるんですね。で、当初は冬の時期だったのでその季節的なものなのかなと思ってたんですけど、その時期を重ねて見てみると、ちょうどこの江田島に移った後の話なんですね。ですからどうも、やっぱり船内も十分な暖房があるわけじゃありませんし、先程お話ししたように海水が入ってくるっていうようなことがもし本当ならばですね、気温も外気と変わらないというか、そういう状況を書いてたものなんじゃないかなと、今となってなんですけど思っています。

佐伯)ちょっと劣悪な環境ですよね。それだけでもこう颯爽としたエリート街道を歩んできたのかなというのとはまた違う…

川島)ですからまあ我々が想像しているよりもかなり厳しい状況にあったというのは間違いないですね。

佐伯)なるほど。

 

 


[ Playlist ]
Swing Out Sister – Heaven Only Knows
Roos Jonker – Man In The Middle
Rumer – Blackbird
Norah Jones – Once I Had A Laugh
Everything But The Girl – Walking To You

Selected By Haruhiko Ohno


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