今回、坂の上に訪ねて来て下さったのは、今治市大島にある「村上海賊ミュージアム」学芸員の田中謙さん。「村上海賊の歴史遺産群のストーリー」は日本遺産に登録されていますが、来週10月10日(土)、11日(日)には「日本遺産フェスティバルin今治」が開催され、全国の日本遺産の魅力発信が行われるんです。この開催を前に、今春「村上水軍博物館」から「村上海賊ミュージアム」に装いも新たになったとか。人気小説「村上海賊の娘」でも脚光を浴びた村上海賊の知られざる一面について、あれこれ教えて頂きました。


 

佐伯)先ほど能島城のお話の時に、歌を詠んだりとか、お茶を嗜んだりとかなんとかってチラっとおっしゃってた気がするんですけど、そういう文化人みたいな面も持ち合わせていたんですね?

田中)そうなんですよ。普段なにしてんだろうなと思ったんですけど(笑)、出土品を見ると香炉、しかも中国の結構いい香炉、青磁の香炉とかですね、あとは天目茶碗とか、お茶を飲むための茶碗、そういうお茶の道具とかお香の道具そういったものが出てきたり、床の間に飾るような綺麗な陶磁器だったりとか、そういう高級なものが結構出てくるんですよね。だからお茶を嗜んでたんだっていうのはよくわかります。それから大三島の大山祇神社に海賊たちが詠んだ歌が残されてるんですよ。

佐伯)「海賊たちが歌を詠む」っていうこのフレーズがもう、なんか不思議な感じがしますけど。

田中)法楽連歌って言うんですけどもね。あの連歌っていうのは室町時代とかに結構流行った遊びで、誰かが発句といって歌を詠むんですね。五・七・五を詠んだら、次の人がそれにちなんだ七・七を即興で詠むんですよ。で、次の人がまた五・七・五、七・七と連ねていくんですけども、即興で連ねていくのでそれなりに教養が必要なわけなんですよね。

佐伯)そうでしょうね。連歌なんて貴族の嗜みというか、貴族の遊びのようなイメージですから。

田中)そうなんですよ。それを海賊達がやっていて、村上武吉が詠んだ歌も残ってますし、いちばん多い武将だと一人で270編残した人もいるっていう…

佐伯)へ~!?

田中)それぐらい文武両道の海賊がいるんです。

佐伯)そうですか~。さっき申し上げた貴族の歌だと、なんか雅な感じだったりとかいうイメージがわきますけど、海賊が詠む歌ってどんな感じ???

田中)それが歌だけ聞いたら「海賊が詠んだの!?」って感じになると思いますけどね。

佐伯)わぁ、面白い!そういう資料もミュージアムに行けばあったりするんですか?

田中)そうですね。本物は大山祇神社に展示してありますけども、ミュージアムでもパネルなどで海賊たちが詠んだ歌を紹介してます。

佐伯)がぜん興味が湧いてきました。

田中)はい、ぜひ。

佐伯)その歌は、詠んで楽しんで終わりっていうことに?

田中)違うんですよ、歌を詠むのにも意味があって。これ連歌って言っても、一万句とか千句とかずっと連ねて何ヶ月もかけて詠む場合もあるんですが、これは神社で詠むっていうのがポイントで、それを詠んで書き連ねて神社に納めるんですよね。やっぱり何かお願いをする時にそういう奉納をしたりするんですけども、この場合は戦勝祈願であったんですね。戦に勝つようにとかって、そういうお願いをしておそらく連歌をみんなで詠んでたんじゃないかなっていう風に言われてますね。


 

 


[ Playlist ]
Nicola Conte – Several Shades Of Dawn
Sade – All About Our Love
Donavon Frankenreiter – Shine
Maylee Todd & Circle Research – Hooked
Torch – Before The Night Is Over

Selected By Haruhiko Ohno


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