今回、坂の上に訪ねて来て下さったのは、瀬戸内編集デザイン研究所の代表 宮畑周平さん。神戸出身、東京で仕事をしていた宮畑さんは2011年に弓削島に移住。島を拠点に、編集者、建築写真家、執筆家など様々な切り口で「伝える」ことを生業としています。宮畑さんが島暮らしを始めた頃のエピソードには、人間関係で悩む人たちの気持ちを楽にしてくれそうなヒントが…。


 

佐伯)今年はコロナのことがあって、都会から少し離れたところで暮らしてみようっていうような人も、そういう動きもあるっていうことをよく聞くんですけれども、すごく離れてなくても愛媛県内でも松山の方がしまなみの方に移ったりとかいうこともあると思うんですよ。で、うまく移住を成功させる、なんか秘訣みたいなものって感じられることはありますか?

宮畑)移住の秘訣ですか…

佐伯)心得みたいな。

宮畑)そうですね、けっこう僕は弓削島に行った際に「皆に好かれないといけん」と思ってたんですよ。誰一人として嫌われたくないと思ってたんですよ。

佐伯)せっかく新しい土地に行くんだから、皆さん誰もに好かれたいとは思いますよね。

宮畑)そう、仲良くしたいとと思いますよね。だけどね、それって結構しんどくて、都会でもまあそうかもしれないですけど、田舎は特にやっぱりこう人の噂みたいなのが聞こえて来やすいんですよ。

佐伯)ああ、人間関係が濃密ですからね。

宮畑)まあ一つの会社みたいな感じですかね。どこそこの部署の誰々は評判が悪い、みたいな(笑)そういうのが割と、そういうスケール感で島の中でも聞こえて来やすいんですよね。「誰それがお前のことそんなこと言っとったぞ」みたいな。

佐伯)あ~、なんかそういう余計なこと(笑)というか。

宮畑)会社の中でもありますよね。

佐伯)あります、あります(笑)。ちょっとその情報いらないんですけど、みたいな!

宮畑)そういうのが聞こえてきやすいんです。それが聞こえてきた時に、「なんか俺って嫌われてる…」みたいな気持ちになるんですよ。で、その「嫌われてる」っていう気持ちが、あたかも島にいる全員がそう思ってるって思いこんじゃうわけなんですよ。

佐伯)そうなるとしんどいですね。

宮畑)だけど、そうこうしているうちに段々島の様子もわかってきたんですけど、みんなの気持ちってね、なんかもう人それぞれなんですよね。一枚岩じゃなくて、みんなそれぞれ独立した心を持ってるんですよね。で、あの「2:6:2の法則」みたいなのを…

佐伯)2:6:2???

宮畑)はい、編み出したって言うか、なんか理解できたのが、僕のことをなんかあんまりよく思ってない人が2割いるんですよ。で、ニュートラル、つまりどっちでもない人が6割で。僕のこと好きでいてくれる人が2割、っていう。だいたいね、たぶん世の中的にね、そういう割合がどこにでもあると思うんですよね。

佐伯)それは、そうかもしれない!さっき会社に例えられましたけど、会社の中でもすっごく仲いい人と、別に普通の人と、ちょっとあの人苦手だなっていう人といますよね。っていうか、それが当たり前ですよね。

宮畑)ですよね。それに気が付いた時に、好きな人、合う人と付き合ってればそれでいいんだって思って、そこからかなり楽になったというか…。

佐伯)何歳ぐらいでそう思ったんですか?

宮畑)何歳ぐらいですかね、38ぐらいじゃないですか。

佐伯)じゃあ、そのぐらいでそう思えてからは楽になりました?

宮畑)なりましたね。つまり、会社の中でもそうなんだし、島の中でも、その組織の形は違うけど構造的には同じだっていうことがやっと気がついて。

佐伯)よかったですね。それは本当に、今ラジオをお聴きの方、別に移住された方じゃなくても、人間関係のベースとしてそういうふうに考えて自分の身を置けるっていうと随分ストレスが軽減されるような気がします。

宮畑)そうですね。だからね、最初本当につらかった頃は、正味「弓削島から出たいな」みたいな風に思ったこともありましたけど、だけど思い返してみるとね、その法則に当てはめてみると、たぶんね、弓削島を出て都会のマンション暮らしを始めたとすると、そのマンションの中でもね、同じような構造があるんですよ。だからね、「どこ行っても一緒やな」と思って。それで腹を据えましたね。

佐伯)そしたら今は、もうすっかり馴染んで…。 2:6:2の法則ですね。それを知ってからは、いろいろ人間関係もうまく回りだした感じですか?

宮畑)うん、そうですね。まあ自分に関わらなくていい人というか、こんなこと言ったらダメかもしれないんですが、それを選択できるようになったっていう感じですかね。


追記:愛媛の歴史や地域の特性をよく表した建築物を再評価、リストアップし、現地調査等の実施を踏まえてデータベース化を目指す「えひめ名建築発掘発信事業」の委員でもある宮畑さん。事業の集大成として、この秋11月ごろに「えひめ名建築発掘発信シンポジウム(仮称)」が予定されています。それに関連し、宮畑さんが撮り下ろした名建築のパネル展も、愛媛県美術館で開催予定です。お楽しみに。


 

 


[ Playlist ]
Fairground Attraction – The Moon Is Mine
Kings Of Convenience – Gold In The Air Of Summer
大貫妙子 – Summer Connection (シングル・ヴァージョン)
Madeleine Peyroux – Don’t Wait Too Long
Marcos Valle – Flamengo Ate Morrer
Melissa Manchester – Bad Weather

Selected By Haruhiko Ohno


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