今週は「坂の上の雲ミュージアム」から生放送!7月28日にオープンしたばかりの「こども本の森 松山」の室長である菅 弥和乃(みわの)さんをゲストに、「本」という大きなテーマでお話を伺いました。「坂の上のミュージアム」を手掛けた建築家の安藤忠雄さんが、未来を担う子どもたちに「本に親しんでもらいたい」という強い想いで、全国各地に設計・建築して寄贈している“こどものための図書施設”。ですが、中を覗いてみると幼児向けの絵本から大人が読む専門書まで、幅広い本が4300冊あまり集められています。「坂の上の雲」の小説のそばに「竜馬がゆく」の漫画があったり、松山城や道後温泉など地域を知ることができる本、アートや科学の本など、この施設ならではの選書で、赤ちゃんから大人まで楽しめる「こども本の森 松山」。安藤忠雄さんはオープン向けたメッセージの中で「本を読むことは心の中で旅をすることです」と述べています。そんな旅を楽しみに、ぜひ一度訪れてみてください!

番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。


佐伯)読み聞かせ、先ほど「お子さんにいいっていうだけじゃなくて、読んでる大人も嬉しい」というか「大人の気持ちにも寄り添える」取組みなんだなっていうのが、そうだなって今すごく思いながら聞いていたんですけれども、その読み聞かせについて菅さんはどんなふうにお考えですか。

菅)はい。私はですね、いろんなところで絵本の力とか魅力を伝えてるんですけども、まず親子で絵本を読むっていうときは、それは「ふれあいの場」なんですね。親子のふれあいの場なので、子供は親に守ってもらってる、愛情を注いでもらってるっていうのを感じられるとき。もう本当にお膝の上で抱っこしてもらって体温を感じながら声を出してもらって物語を楽しむ、絵本を楽しむという素敵な時間がですね、将来の子供が大きくなったときにいろんな困難を乗り越える力=生きる力になるんです。ちっちゃいときはそう思わないんですけども、愛情をもらってるんだなっていうその蓄積が、大人になってから「愛されてる」「あなたがいて大丈夫」という自己肯定感に繋がってくるんです。

佐伯)本当そうですよね。今その自己肯定感が低い若い人が多いなんてよく言われますけれども、それを遡っていくと、幼少のときに愛情を注がれたっていう経験がそこを支えてくれることにも繋がるんですね。

菅)そうですね。もう思春期を迎えるとどうしてもいろんな人と比べてしまうので、自己肯定感っていうのは下がりがちなんですけれども、だけど「あなたはとっても大事なんだよ」っていうのを、ちっちゃいときに本を読んでもらってる思いっていうのをまた思い出したときに、「そういえばこういう楽しいときがあった」「親子でこんなことをしてもらった」「こういうときがすごく楽しかった」という思い出っていうのは、大きくなってからもしっかり蘇るんですね。私の知ってる方で、子供のときに「ぐりとぐら」の絵本を読んでもらって・・・

佐伯)あ、「ぐりとぐら」!

菅)はい、そのときに読んでもらった後にホットケーキをお母さんが焼いてくれた。そのホットケーキの匂いまでも覚えてる。で、自分の子供に本を読んでやるときに、読みながら「あのときのおふくろが焼いてくれたホットケーキの匂いがするんだよな」っておっしゃる男性の方がいらっしゃって。こういう思い出、楽しかった思い出っていうのがやっぱり本の中にもあるし、自分の心の中にも残っているから、それを繋いでいって、楽しい思いを繋いでいきたいとか。私自身も本を読んでもらったこともありますけど、どちらかというと付録の録音されていたのを楽しんでいたことがありまして。その本をたまたま開いて、「この本読んだことあるな」と思ったときに、素敵なアナウンサーさんの声が脳裏にばあっと響くんですね。「あ、知ってる知ってる」って思った瞬間にもう綺麗なアナウンサーさんの声が響いてきて、「やっぱりこの本読んでたんだ」って「聞いてたんだ」っていう思い出がずっと蘇ってきて。そのときにふと、私は子供に読み聞かせしていたので、「私の声も子供の脳にこんなに残るかもね」と思ったときに、そういうふれあいっていうのが私の声で子供に残るんだと思ったら、なんか嬉しくて。それから読み聞かせ頑張りました(笑)

佐伯)確かに「音」の記憶っていうのって消えないですよね!

菅)音とか匂いとか、意外と頭の中に残ってますよね。そういう感じに残っていくんですけれども、子供の本、特に絵本というのは、絵と文章と、そういうのが一流の方が書かれたものがありまして、想像力あふれる絵、豊かな言葉というのがそこにあるんですね。そこを子供も大人も共有することで楽しめる芸術であるし、また文化であるという方もいる。具体的には文字が読めなくても絵を見ることで理解できるし、大人の人が話してくれることで言葉や知識も増えてくる。物語の主人公に自分をなぞらえて感情を豊かにすることもできますし、思いやりの力もできる。さらに、想像力とか発想力とか好奇心も生まれてくるという力もどんどん芽生えてきますし、本を読んでもらう、それを「聞く」という時間、ほんの7分間かもしれないんですけども、そこに集中力というのも出来てくるんですね。本を読む、読んでるのを「聞く力」っていうのが、そこに出来てくるということもあったりね。もちろんさっき言いました自己肯定感も高められますし、今よく言われる認知能力と非認知能力というような言葉、よく巷に言われるんですけども、それも育むことができるという。

佐伯)認知能力というのは、例えば何か覚えたりとか知識だったりとか?

菅)そうです、認知能力というのは基礎的な知識、知識量とか記憶力とか、よくテストで何点取りましたとかいう測ることができる能力なんですけれども。

佐伯)これが認知能力ということで、基礎的な知識、知識量、記憶力、あと判断力とか、そのあたりもそうですかね。テストなどで数値化できるような力。一方の非認知能力、こちらはどんな力になりますか?

菅)はい、今とても注目されてるんですけども、こちらは数値化できないと言われる能力なんですが、感情ですとか心の動きに関する能力ですね。あと、情動的っていうんですかね。忍耐力とか社会性があるとか、感情コントロールをできるとか、そういうのを養う能力なんですけれども、それが今言われる「生きる力」。

佐伯)たしかに。

菅)「人間力」とか言うんですけど、そこに繋がっていく力になります。


[ Playlist ]
Marvin Gaye – Mercy Mercy Me
Amiel – Lovesong
Beck – Tropicalia

Selected By Haruhiko Ohno


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