今週、坂の上に訪ねて来てくださったのは、愛媛県生涯学習センターの学芸員・冨吉将平さん。じつは、生涯学生センターの中に「愛媛人物博物館」というエリアがあり、愛媛ゆかりの偉人や賢人たちの業績や遺品などが展示されているんです。その中から、この日紹介してくださった方は・・・。
冨吉)きょうはですね、特に愛媛のオリンピアンたちの中で「水泳」にスポットを当ててみようかなと。
佐伯)はい。
冨吉)なぜ水泳なのかって言うとですね、愛媛にゆかりのあるオリンピアン、水泳選手の中で、日本水泳界初の金メダリストがいらっしゃるんですね。
佐伯)水泳界初の金メダリスト!
冨吉)はい。この方がですね、鶴田義行さんっていう方なんですけど、明治36年にお生まれになって昭和61年までご存命だったという方なんですね。
佐伯)じゃあ80過ぎまで…
冨吉)はい、82歳でお亡くなりなっているんですが、愛媛県の出身者ではないんですけれど。
佐伯)あれ、そうなんですか?
冨吉)実際は鹿児島県、今の鹿児島市のお生まれの方なんですね。ではなぜ愛媛ゆかりなのかっていうのはちょっと後からお話しするとして、何かしらちょっと面白いエピソードが結構たくさんある方なんです。
佐伯)あ、そうなんですね、楽しみです。鹿児島に生まれて、いつのオリンピックに出られた方んですか?
冨吉)はい、アムステルダムオリンピックですから、もうおおよそ100年ぐらい前のオリンピックになるんですね。
佐伯)へ~、はい。
冨吉)そこで200メートル平泳ぎで金メダルを取られてるんですけれども。
佐伯)それが「日本の水泳界初の金メダル」なんですね!
冨吉)はい。で、実はこのアムステルダムオリンピックって陸上が先にあって、陸上で「日本初の金メダル」が取られてるんです。
佐伯)はい。
冨吉)(競技順が)もし水泳が先だったら、鶴田さんが日本初の金メダルだったかもしれないんですけれども、日程の関係でそういう。だから「日本で二番目の金メダル」でもいいですね。で、このオリンピックアムステルダムオリンピック、実はこの時ですね、「ちょっと失礼じゃないか」っていうハプニングがあったんですけれども、日本人が優勝すると思われてなかったんですね。
佐伯)この平泳ぎで?
冨吉)ま、水泳で。
佐伯)はい。
冨吉)で、国旗が用意されてなかった、日の丸が。
佐伯)え!?あの表彰式に掲げられる?
冨吉)そうですそうです。
佐伯)なかったんですか?
冨吉)なかったんです。
佐伯)え?どうしたんですか?
冨吉)で急遽用意されたのが、入場行進の時に旗手の方が持つ、あの大きな国旗ありますよね。
佐伯)はい。
冨吉)あれがセンターポールに上がったと。
佐伯)ちょっと待ってください、じゃ日本の日の丸だけがサイズ違い?
冨吉)超巨大。
佐伯)あはは(笑)。ホント失礼な話ですけど、結果としては日の丸がめちゃくちゃ目立ったという…
冨吉)ことになるかもしれないですけど(笑)、ま、それがセンターポールに上がったんですよね。で、もう一つ。国歌も用意されてなかったんです、君が代が。
佐伯)ひどい話ですよね。これは、アカペラか何かで歌ったんですか?
冨吉)結局ですね、オランダの図書館ですかね、そこからどうも楽譜が出てきたらしくて。急遽、ま、当時は生演奏ですから、演奏されたんですけど、途中からだったんです。
佐伯)じゃあ楽譜も途中からだったんですか?
冨吉)どうか分かんないんですけど、たまたま楽譜も、慌ててたんで順番が逆になったのかわかんないんですけど、「さざれ石の~」のところから。
佐伯)うわ、それ、ちょっとノリにくい(笑)。そんなことがあったんですか、ちょっと今では考えられないですけどね。でもそのくらいの快挙だったってことですよね、誰も予想だにしない快挙。
冨吉)だったということなんですよね。
佐伯)でも世界の中ではそうだったとしても、日本の水泳界の中では「あいつが(メダルを)取ってくれるだろう!」みたいな選手ではあったんですか?
冨吉)もちろんそうだったはずなんですね。
佐伯)じゃあすごく期待の星と言いましょうか・・・
冨吉)そうですね、はい。
佐伯)品行方正?
冨吉)うーん、だったのかな???子供の頃は、まあよくいたずらはしてたみたいですね。
佐伯)そうなんですね(笑)。
冨吉)ある意味水泳に関わるエピソードなんですけども、鶴田さんが住んでいた鹿児島市から反対の対岸、鹿児島湾を挟んで反対側に桜島があります。湾の広さが片道5キロなんですけども、5キロ泳いで行って桜島に上陸して、スイカ畑でスイカを盗むと。
佐伯)ちょっと待ってください、盗むって!?
冨吉)で、スイカを背中に背負って、また5キロ泳いで帰ると。
佐伯)そんなことできるんですか?あの重いスイカを背負って泳げるんですか?
冨吉)泳げたんですね。
佐伯)しかも海ですよね。波がある。
冨吉)はい。で、帰りは潮の流れが逆だったそうですので、それに逆らって5キロ泳いで帰ると。
佐伯)え~、それ何歳ぐらいなんでしょうね?
冨吉)小学生の頃って言ってたような気がするんですけど。
佐伯)じゃあやっぱりそのころからズバ抜けたと言うか、人並み外れた泳力があったということでしょうか?
冨吉)そういうことなんですけど、ただ最初は泳ぎは苦手だったそうなんですね。
佐伯)え!?そうなんですか?
冨吉)鶴田さんって12人兄弟の次男坊だったらしいんですね。で、お兄さんがある日ですね、家の近くに流れている川にですね、鶴田さんを放り込んだらしいんです。
佐伯)え!
冨吉)まあなんて言うんですか、スパルタですかね。で、溺れちゃったんですね、もちろん水泳が苦手だったんで。それから「なにくそ!」っていうことで「泳げるようになってやる!」ということで…
佐伯)うわ~、そうなんですか。
冨吉)負けん気が強かったそうですので、それから泳ぎがメキメキと強くなって…
佐伯)そして日本初の水泳のメダルを。
冨吉)メダルを取るという。最初お兄さんに川に放り込まれたところから出発していると(笑)
[ Playlist ]
Fernanda Porto – Auto-Retrato
Björk Gudmundsdóttir & Trió Gudmundar Ingólfssonar – Tondeleyo
Beat Kaestli – You’d Be So Nice To Come Home To
Linda Lewis – Spring Song
Kings Of Convenience – Peacetime Resistance
Chet Baker – That Old Feeling
Selected By Haruhiko Ohno