今週、坂の上に訪ねて来てくださったのは、砥部焼の女流作家グループ「とべりて」代表の山田ひろみさん。2013年、男性職人の世界だった砥部焼に、女性ならではの感性を活かし新たな風を吹き込んだ「とべりて」。以来、観光列車「伊予灘ものがたり」とのコラボなど、数々の取組みが話題ですが、山田さん個人も、県内外の方が訪れる「あの場所」に作品を展開しているんです!
佐伯)グループとしても活躍なさっている中で、山田さん個人としてもかなり大きなものを手掛けられましたよね。
山田)そうなんですよ。もう3年近く前の話になるんですけれども「飛鳥乃湯泉」がオープンするにあたって、男湯女湯の浴室を砥部焼の陶板で飾りたいから、これをやってくれる人はいないかっていうことで。私自身も名誉あるお仕事だし、陶板のお仕事は大好きだったんで、プレッシャーはそれはもちろんありましたけど、でも「挑戦してみたい」という気持ちがもっと大きくて受けたんですね。
佐伯)手掛けられている間っていうのも「苦労したんです」っていうのは?
山田)オープンの2年前にお話があって、私がやるって決まってから、浴室だけじゃなくていろんな伝統工芸品を飾るっていうのがテーマだったんですね。だから和紙とか瓦とかね、いろんな職人さん達とのコラボでお部屋を飾ったりとかお客様を和ませるような、そういう施設になるって言う事で、私が好き勝手に「こんな絵が描きたい」って言って描ける話ではなかったの、元々。だからデザイナーさんが、総まとめをする京都の GKさんって言って若手の30代の事務所なんですけどね、そういう人たちがまとめられるんで、私も勝手に描けないし、「テーマがあるから、こういう風でこんな感じで描いてください」ってすごく言われるんで、それがもう一番の最初はプレッシャーでした。なんかもう、がんじがらめにして、プレッシャーがある上にもう一つプレッシャーがあったんだなと思って、自由に描けない。本当にその準備期間のその1年間が、デザインにしても試作も何回かしないといけなかったんですよ。で、それを色んな方が見て、また判断して「本番はもっとこうしましょう」とか言って。あとは心の準備。技術はもうやれることしかやれないし、まあ自分が持っている力を最大限に出せたらきっといいものができるんじゃないかと思うけど、焼物の世界って、描いた時と焼き上がりって印象も質感も、色物も特に色も変わってくるし、全然変わってくるんですね。だから焼き上がった時も、私のイメージ通りに焼き上がるためには、この描いてる時点が一番大切だなって、もう一回考え直したんですね。不安な気持ちとかプレッシャーとかを今感じているこのままの状態で描き出しても、描いた時は分からないものがちゃんと焼き上がりに出てくるんですね、焼き物って。気持ちを、最後はずっと作ってました。自分の精神状態を、怖がらず怯えず重荷にならず、とにかく「こんないい仕事をさせてもらえる」っていう感謝の気持ちと、自分も楽しく描いたっていうこの実感を味わいながら、とにかく描いていこうと思ったんですね。
佐伯)そうして生み出された絵が、男性の浴室は石鎚山。
山田)で、女性が瀬戸内海だったんです。
佐伯)熟田津の海、ということですね。ご自身も入浴されました?
山田)いや~、何回も見てるんですけどね、入浴はしてないんです。
佐伯)あ、そうなんですね。
山田)まだ恥ずかしい!なんかね、なんか恥ずかしいん。もう少ししてから行こうかなって。なんか自分の中ではそんなに急いでないっていうか。お客様には「必ず行って入ってくださいね」って言うんです。「そんなんがあるんですか」って言われるんで、「もうプロジェクションマッピングがありますから絶対見てくださいね」とか言ってすごい宣伝はしてます。
佐伯)実はこの番組の男性ディレクターが入って、男湯の石鎚山を、ふんぞり返って浴槽の中から見たらしいんですが、「いいですよ~」って言ってました(笑)
山田)本当ですか(笑)
佐伯)プロジェクターで鳥が飛んできたりとか…
山田)そうそう、季節も変わるし、1日の変化…朝から朝日が昇り、昼間になり、夕焼けになって日が沈んで、夜になって星が出てっていうのもあるし。季節的に、花びらが散ったりとか、夏は緑が青々、秋になったら紅葉して、冬になって雪が降って…といろんなパターンが楽しめるんで、毎回毎回同じじゃないので何回も行ってほしいですね。自分は行ってないのに(笑)。また行きます私も、もう少し落ち着いたら。
[ Playlist ]
Caito – Durmiendo
Michael Franks – When Blackbirds Fly
Marcos Valle – Nao Tem Nada Nao
Danny Kortchmar – For Sentimental Reasons
Acid House Kings – Would you say stop?
Selected By Haruhiko Ohno