今週、坂の上に訪ねて来てくださったのは、ブックカフェ「本の轍」主宰の越智政尚さん。ここ数年、全国的にも人気が広がるブックカフェですが、約6坪という「本の轍」のスペースに並べる本を、越智さんはどんな基準で選んでいるのか?そこには、独特の美学があるのです。
佐伯)ブックカフェというからには、カフェも本も楽しめる。どんな風な選び方を、本それからカフェの部門ではなさってるんですか?
越智)まず本の部門でいうと、まぁ最近やっぱり活字離れっていうか、書籍離れというか、まぁずっと続いてて。電子書籍の方はね、今よりよく読まれてますけれども、やっぱり実物の、実際に存在する紙の本っていうのを、やっぱりずっと残していきたいなと思ってて。ただ読書嫌いだっていう人もやっぱ多いじゃないですか、あんまりそんな読まないなっていう。そういった方にも手軽に手に取って頂きやすいように、ビジュアルがいいもの!何かって言うと例えば絵本だとか、まぁピクチャーブックですよね、写真集だとか、あとアート関連の本。それと当店、うちは長編の小説を置いてないんですよ。
佐伯)へ~、そうなんですか?
越智)長編ってほら、本が分厚くて「こんな全部読めないよ」ってね、本に慣れてない方は。そういった意味で、エッセイだとか随筆だとかそういう短編ものを置いてるのと、後はそういったビジュアルで選ぶっていうことについてだと、文庫本もそんなに置いてないですね。
佐伯)そうなんですね!?
越智)やっぱりしっかりしたサイズの単行本の方が、例えば部屋に飾っておいても見栄えがいいじゃないですか。見栄えがいいってことは手に取りやすいし、ちょっとでも読んでみようかなっていう気になりますよね。そういった意味で本は、そういった感覚でセレクトしてます。
佐伯)独特な選び方ですね。
越智)それと何て言うのか、その時に流行ってる本っていうのもあまり置かないようにしてますね。
佐伯)それはなぜ?
越智)それはですね、一時の流行りものになってしまうので。その時しかやっぱり読まれない本ってあると思うんですね。そうではなくて、昔からずっと読み継がれてる本、ベストセラー、ロングセラーって言われてる本だとか、あまり人が見向きもしてないんだけども自分は好きでこれ紹介したいなだとか、そういったセレクトですね。
佐伯)は~。じゃ、ある意味サブカル的なものも色々置いてらっしゃる。
越智)そうそう。
佐伯)それとか、置いてるだけで絵になるような存在の本。
越智)だから、洋書が多かったりもしますね。
佐伯)へ~。じゃぁその空間にちょっと身を置いてみるのが楽しくなるようなイメージですね。
越智)そうですね。その“紙の本”って、やっぱり読んでる姿ってのが非常に美しいと思うんです。例えばここに「ON READING」っていう本がありますけれども…日本語の本も出てます、「読む時間」っていうタイトルがついてますけども、アンドレ・ケルテスさんって言ってハンガリー出身の写真家の方なんですが、これ、本を読んでる情景、光景だけを写した写真集なんですよ。色んなところで…(ページめくりながら)
佐伯)公園であったり…街角であったり…これは図書館というか書斎の中ですか?
越智)書斎の中だとか…
佐伯)本読んでる姿、確かに…
越智)非常に絵になりますよね。だから、こういった行為が僕はすごく美しいと思ってるので、“紙の本”っていうのはやっぱり大事にしたい。そういう思いでセレクトしていますね。
佐伯)私もその“紙”で読むのが好きなんです。それで、実は会社の同僚と電車に乗って皆で出かけるっていうシチュエーションの時に…だいたい今電車に乗ってる人ってスマホ触ってるじゃないですか。でも、たまたまその時に文庫本ですけれどもエッセイを持っていたので、電車に20分ぐらいかな、乗ってる間に、私は本読んでたんですよ。そしたら降りた時に同僚が「なんかものすごく知的に見えました(・・・・・)。」って(笑)「見えた」だけなんですけど、ホントそういう効果って(笑)
越智)効果ありますよね、あります、あります(笑)。
佐伯)そういう意味でも、まあ“紙の本”を手に取る機会っていうのを、ちょっと感じて頂きたい(笑)
越智)そうですね。
[ Playlist ]
Adele – Melt my heart to stone
細野晴臣 – Tutti Frutti
矢野顕子 – 電話線
Elizabeth Shepherd – What Else
Bibio – Feeling
Selected By Haruhiko Ohno