今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、アーティスト石村嘉成さんのお父様、和徳さん。現在、愛媛県美術館では「石村嘉成展いきものだいすき2026」が開催中です。地元愛媛での開催は3年ぶりということで、初公開となる「The WALL」をはじめ、話題のオランウータン「ジェニファー」を描いた作品、5月に全国植樹祭で来県した天皇皇后両陛下にご覧いただいたシロクマ「ピース」の作品など、みどころ満載。嘉成さんと和徳さんもほぼ毎日会場へ足を運び、来場された方々とのふれあいの時間を大切にするなど、心温まる展覧会として話題です。重度の自閉症と診断された嘉成さんとの軌跡を振り返りながら、「石村嘉成展いきものだいすき その裏側」をテーマにお話を伺います。キーワードは「なぜアートの道を選んだのか」「才能ではなく努力」「アーティストとプロデューサー」の3つ。2週連続放送の前編です。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
佐伯)そうして毎日絵を描く、それから版画も先生と一緒に…っていうところで、注目をどんどん集めるようになっていくってことなんですか。
石村)そうですね、毎日コツコツ本当自宅でやった作品がパリのコンクールでね、優秀賞をいただいたり…今回も展示してますけど。それで家でずっとしてて、人が来るでもなく、黙々としてたんですよ。でも、やっぱり最初専門学校のコンクールで入選したときの自己肯定感じゃないですけど、やっぱ息子に自信をつけさせてやりたいと思って。当時、新居浜市郷土美術館というのが市役所の隣に…ちっちゃな古い美術館なんですけどね。初めて展覧会したんですよ、個展を。全部持ち出しで、もう我々が行って作品を掛けて、チラシも自分たちで作って、みんなに配って…みたいなことやったんですよ。
佐伯)手弁当ですね。
石村)もちろんそうです。で、一週間に6000人という記録やったんです、個人の個展としては、たぶん記録だったんじゃないかと思うんです。
佐伯)6000人!
石村)6000人、一週間で。それが嘉成のすごい自信になったと思うんですよ。
佐伯)そうでしょうね!
石村)それからやっぱり展覧会開くたびにそういう記録を作れるぐらいのお客さんが来ていただいて、みんな温かい言葉をかけてくれるんですよね。「頑張ってるね」とか、「応援しよるよ」と言ってくれるじゃないですか。そんなら嘉成も最初の展覧会のときは在廊をずっとさせたんですけど、どうしていいかわからんかったんです。お客さんが来ても、どうしていいかわからなかったんですよ、もてなしというかお相手をね。結局は嘉成の一番得意なことさせようと思って、真ん中にテーブルを置いて、嘉成に版木を彫らしたんですよ。で、周りに集まってくれるでしょ、「わ~、嘉成さんすごい深く彫りよんやね」とか、「すごいなんか力入って上手いこと彫るね」とか言うてくれるじゃないですか。それで嘉成は悦に入って彫ってできるでしょ。それぐらい嘉成は、そのときは人に接することができなかったんですよ。それがそうやってお客さんが温かい言葉をかけてくれる。それで、愛媛県美術館で3年前やったときなんか、もう本当に嘉成の周りが温かい空気に包まれてたと思うんですよ。ずっと終始50日間がね。そういうふうに、僕は自閉症の子って…息子を見て、多分多くの人が思っているのは自閉症の子って物事に対してものすごいこだわりやそういうのは強いんだけど、人には興味ないだろうと思われがちなんですよ。僕も思ってました。社会通念上そうやって思ってる人多いと思います。でも、実はそうではなくて嘉成を見よって思うのは、みんなと同じなんよ。みんなに認められたいんだけどどうしたらいいかわからないわけですよ。どういうふうに接したらいいかわからんけど、嘉成は今皆さんが寄ってきてくれるじゃないですか。それで「頑張っとるね」って言われて、写真撮ったら「イエーイ」なんて言ったら喜んでくれて、笑顔で一緒に写真撮ってくれるでしょ。そういうことしたら皆が喜んでくれるというのがわかったから嘉成は積極的に出て行って、今サービス精神旺盛ですよ、パンダの帽子かぶったりして。
佐伯)本当にそうですよね。
石村)だから、あれは「どうしたら相手が喜んでくれるか」の方法がわかったから。だから他の自閉症の子たちも、そういう経験をしてないから、ひょっとしたら1人だけ違うことしよるようにしよるから、何かの人から見たら「人に興味ない」とか「何かみんなに馴染めん」とか…じゃなくて方法がわからんだけなんですよ実は、と僕は思います。それは療育上も、そうやって僕は思ってきました。言葉がわからんから、自分が何をしろと言われているのかもわからん。それをイヤとも言えないから泣いて暴れる。と同じように、どうしたら人の懐に入っていけるか、人と関われるかわからんから、1人だけ違うことしよるから、自閉症の子は変わっとるように見られる。だから例えば障害あるないは別としてね、佐伯さんの周りにもぶっきらぼうな人っていませんか?
佐伯)いますよ。
石村)それはひょっとしたら、その人も本当はみんなと仲良くやりたいんだけど、今までの経験上みんなと「おお、お前何しよんで」みたいなことは経験なかったら、その人の懐に入っていく方法がわからん、人に認めてもらう方法、仲良くする方法がわからんから、腹を割る方法がわからんから、「じゃあ俺、本読みよる」とか「俺仕事しよろ」とかってしたら、「アイツ感じ悪い」「感じ悪いねえ、忘年会も来んし」みたいな、そういうふうな評価になる。でも本当はそうでないかもしれない。というふうに僕は嘉成によって、自閉症の子たちにすごい誤った失礼な認識持ってたなというふうに最近思ってます。
[ Playlist ]
Nostalgia 77 – Beautiful Lie
Bibio – Feeling
Madeleine Peyroux – The Summer Wind
native – Reunion
Selected By Haruhiko Ohno




