今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、愛媛大学法文学部兼地域協働センター中予教授の和田寿博さん。和田さんは、2007年にポン菓子の研究と実践を学生とともに始められ、その実績は様々なメディアに取り上げられています。「おいり」「パン豆」「ドンパン」など様々な呼び名のあるポン菓子の研究は、平和学の一環だと語る和田さん。その発祥には、一人の女性の平和への願いが込められているのです。今回は「ポン菓子機の開発史」「国産ポン菓子機の願いは、健康と平和」「愛媛のポン菓子の食文化」をキーワードに、お話を伺いました。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
佐伯)ちょっとこの写真、衝撃なんですけど!先生、なんかちょっと小型トラックの運転席の上のところに…これポン菓子ですか?なんか米俵みたいなのが1、2、3段、4段にわたって積まれてますけど、これポン菓子?
和田)これね、私、世紀の大発見だと思ってるんですけども。まずこれ、1975年頃にご結婚が新居浜市でありました。そのときに、トラックの運転席の上の屋根の上に一俵だわら、いま米入れると普通60キロですけども、一俵だわらにポン菓子を入れて、それを10個山積みしてるんですね、三角に。
佐伯)そうですね、下の段が4段で4、3、2、1と積み上げて10俵。
和田)それに紅白の熨斗がついてね。これから、お嫁さんが旦那さんのとこに嫁入りするぞと。荷台には家具が載ってるわけですよね。とにかくトラックの運転席の上に10俵をのっけて嫁入りしていたという証明の写真なんですよ。
佐伯)すごい!私、引き出物か何かで、ポン菓子をちょっとかわいい箱に入れて配られてるのは見たことあったんですけど、こんな規模で。
和田)この頃までの日本だと、まだ結婚式場で結婚するっていう文化がなくて、お嫁さんが旦那さんとこに嫁入りするわけですね。
佐伯)もうそのお家に向かうという。
和田)私も体験あるんですけど当時、お嫁さんが来ると近所の人にお菓子を配る。そういう文化がありましたけども、愛媛県東予地方では「ポン菓子を配る」ということだったんですね。
佐伯)でもこれ10俵ですよ。
和田)莫大な量ですけども(笑)
佐伯)莫大な量ですよ!
和田)これをですね、お嫁入りがあって翌日とかに、新しく入ったお嫁さんとかそのお家の人が、近所の子供たち、住民の人に配っていたということなんですね。
佐伯)こういう風習は…
和田)東予地方だけなんです!
佐伯)なんですか、やっぱり。
和田)私が調査したところによると、「いや、私も嫁入りのとき用意したんだ」とか、「私の娘が北海道に行くときに」とか「私の息子が大阪や福岡で結婚をするときに、引き出物としてポン菓子を送ったんだよ」っていう話がたくさんあります。
佐伯)は~。
和田)それで愛媛県ではですね、婚約のときの結納の商品の中にもですね、昆布とか鰹節と一緒のセットでポン菓子を用意したりとか。結婚式のときに引き出物で渡すとか。あるいはもう広い意味での祝い事などに用意されるようになりました。
佐伯)だから、そういう本当に人生の節目に東予では使うから、最高に熱いわけなんですね。
和田)人生で最高のときに欠かせないものとしてポン菓子が用意されるということになったわけですね。
佐伯)なるほど。
和田)こんなことをやってるのは、地球上で東予地方だけです!素晴らしい!
佐伯)という文化…
和田)ポンポンパフパフ(笑)
佐伯)が、先生の研究でわかってきたということなんですけれども、呼び名もね、これ地方によっていろいろ違うでしょう?
和田)そうですね、これもね、恐るべき発展を遂げてるんですけど。
佐伯)恐るべき(笑)
和田)ちょっと紹介しますと、東予地方だとポン菓子のことを「おいり」、「おいり豆」、「嫁さん菓子」。
佐伯)「嫁さん菓子」、はい。
和田)それから「パン豆」、「パンパン菓子」、「ポンポン菓子」、みたいな表現があって、結婚に関わるもの、祝い事に関わるものと、普通に食するものっていう文化になってるんですね。
佐伯)はい。
和田)中予、松山は「ポン菓子」。双海に行くと、「ドンパン」「ドン豆」などがあります。
佐伯)なんか、その音のまんまですね(笑)
和田)「ドンパン」「ドン豆」は少しやっぱり古い伝統的な表現だと思います。
佐伯)へえ~。
和田)「ポン菓子」っていうのは吉村利子さんが作って広げたものですから、それが広がっていったわけですね。そして現在、南予でも「ポン菓子」というものがあります。これらがですね、非常に地域ごとにいろんな表現があるということは、それだけ普及していて愛され親しまれていたということの証明でもあるわけですね。
[ Playlist ]
V. Duke, Jane Monheit – Taking a Chance on Love
Seigen Ono – On The Sunny Side Of The Street
Feist – One Evening
Ella Fitzgerald & Louis Armstrong – Autumn in New York
Selected By Haruhiko Ohno




