今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、西条市教育委員会事務局社会教育課副課長の伊藤敏昭さん。レントゲンを日本に定着させ、夏目漱石の主治医でもあった西条市出身の医師・眞鍋嘉一郎について、お話を伺いました。子どもの頃から優秀だったものの経済的には苦労したそうですが、困った時に必ず助けてくれる人物が現れるという一面も。漱石のほか、野口英世、北里柴三郎というお札になった人物とも縁があるなど、日本の近代化に向けて活躍した偉人の一人なんです。今回のキーワードは「英語教師・夏目漱石との出逢い」「レントゲン学講義」「眞鍋の外来」の3つです。

番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。


佐伯)では、3つ目のキーワードです。「眞鍋の外来」、これ診察のときの外来っていうことですけど、どういう…

伊藤)これ有名な話なんですよね。嘉一郎の何ですか、その熱血漢っていうか熱意ある指導っていうんですかね、当時の医局員らも困っていたというような話なんですけど。どういうことかと言うとですね、例えば「朝8時に来てくださいね」って言われた患者さんがちゃんと8時に来ます、でも8時には診てもらえずに11時まで待たされたとか。また「昼の1時に来てくださいね」と言われた助手は来てもそのまま放っとかれて、3時頃に初めて先生の部屋に通されると。その間、待たされてる間、先生は診療室で今診てる患者さんに熱心に向き合って、もう時間が経つのを忘れて取り組んでいたということなんで、次の予定とかあんまり気にしてなかった方みたいなんですね。

佐伯)いま目の前の患者さんに全力集中。

伊藤)そう。これが名物、「眞鍋の外来」として名物になったというような話です。

佐伯)じゃあ眞鍋先生にかかろうと思ったら、「8時って言われても11時ぐらいまではかかるよ」みたいなのがもう噂になっちゃうくらい。

伊藤)そういうことですね。

佐伯)そうなんですね(笑)

伊藤)これがもう死ぬまで続いた癖だという風に言われてます。

佐伯)癖!なんかそういうの、今だと問題になりそうですけど(笑)。そうですか。それも熱心さのあまり、というところなんでしょうね。どんなエピソードが残ってるんですか?

伊藤)そうですね、今のお話からもそうですけど、とにかく頑固といいますか「自分はこうすべきだ」と思ったことに、もう真正面から行く人。例えばですね、「わしの論文を審査できる教授は帝大にはおらん」って言って、博士論文とかを出してないんですよ。

佐伯)あ、もう自負があったわけですね。

伊藤)そうです。なので、要は研究したり論文書いたりするよりも臨床ですよね。「診療こそ臨床医の務めである」というようなことで、学位より臨床だということでおったわけなんですけれども、そうしておりますといよいよ名声が高まってきたんですが、嘉一郎は学内の一講師にしか過ぎなかったんです。学位取ってないから、ずっとそんな感じだったみたいですね。でも「これは何とかせないかんぞ」と立ち上がったのが、同郷・西条出身の「新幹線生みの親」の十河信二ということでね。

佐伯)へ~!十河とも繋がってるんですね!

伊藤)そうなんですよ。で、十河の働きかけで遂に内科物理療法学講座っていうものを設立することができたというような話も残っております。

佐伯)十河さんはやっぱり「同郷の素晴らしい人物だ」ということで、バックアップを?

伊藤)そうですね、嘉一郎の方が先に東京に出ておりまして…

佐伯)そうなんですか。

伊藤)嘉一郎から見ても十河は「これはすごい人物だ」というので一目置いておったみたいですね。だから、そういう絆みたいなものはもう出来ておったわけですね、この時点で。

佐伯)そうですか。もう本当にね、学位とか偉くなることよりも臨床だっていうところに一つの信念を感じますね。

伊藤)あと人格がうかがえるようなエピソードにはなるんですけれども、実直でですね、礼儀正しく、真夏の暑い日でもですね、ネクタイを身に着けて診療にあたっていたと。

佐伯)クールビズじゃなかったんですね(笑)

伊藤)そうですね、今よりかは涼しかったかもしれんですけどね(笑)

佐伯)そうですか。

伊藤)「医者が病人を診察するときには、武士が戦場へ出て一騎打ちするときの礼儀と真剣味がなくてはならない」と言っておったということです。

佐伯)は~、 そうですか、武士の心意気だったんですか!

伊藤)そうです。というのが、真鍋の家庭っていうのを言えばですね、もともと西条の武士の家庭に生まれておって、少し遡ってひいおじいさんぐらいまでいきますとですね、三楽先生っていうのと東條清介っていう2人の有名な学者さんに行くんですよ、ひいおじいさんが。

佐伯)西条藩の。

伊藤)はい、だから、まさにそういう旧西条藩の学者の系統に生まれた嘉一郎ならではの気概だったんじゃないかなとも思います。

 


[ Playlist ]
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Fairground Attraction – The Moon Is Mine
Nicola Conte – Several Shades Of Dawn
native – everafter

Selected By Haruhiko Ohno


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