今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、西予市にある宇和民具館職員の仙波香菜子さん。昭和100年にあたる今年、東京都大田区の「昭和のくらし博物館」と同時開催している「昭和はこんなだった展」について、お話を伺いました。純喫茶や花柄のグラスなどの昭和レトロが人気となる中、仙波さんは西予市宇和町で69歳~102歳の住民40人にアンケートを実施。その内容をもとに、都会(大田区)と田舎(宇和町)それぞれの昭和を、実物や手作りレプリカを通して紹介されています。実際に使われていた「豆腐カゴ」に入った、仙波さん手作りの豆腐のリアルさにもビックリ!これは現地で是非ご覧ください(笑)今回は「昭和の衣食住」をテーマに、「プラスチックは無いけれども…」「食器は月に数回しか洗わなかった?」「懐かしの五右衛門風呂」というキーワードで深掘りします。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
仙波)宇和ではですね、「五右衛門風呂」が主流ではあったんですね。それが「共同風呂」というものが、宇和ではとっても有名だったんですね。
佐伯)共同風呂?
仙波)はい。もちろんその共同風呂も五右衛門風呂だったりはするんですが、この五右衛門風呂っていうのは、西日本で多かったお風呂のスタイルだったそうなんです。東日本は「鉄砲風呂」というものがあったそうです。その五右衛門風呂があったわけなんですが、それも旅館や造り酒屋など商売している家ですとか裕福な家には家風呂があったそうなんです。で、近所の人たちは、そこに「もらい湯」をしに行ってた…
佐伯)ああ、「もらい湯」っていう言葉がありますね。
仙波)そういった文化もあったり、あとは宇和町の町の中心地では銭湯がありました。「馬場湯」「さくら湯」「梅の湯」という三つの銭湯がありましたので、そういったところに通ってたということなんですが、農村部の方へ行くとそういうわけにはいかないので、どうしていたかといいますと「共同風呂」が使われていた。
佐伯)ということは、銭湯ともまた違う?
仙波)違うんですよ。これはですね、地域の人が当番制で管理するお風呂なんです。
佐伯)はい。
仙波)これが利用されていたということなんです。農作業で忙しい中、毎日お風呂沸かすの大変ですよね。当番制にすれば、10日に1回とか1ヶ月に1回とかそれぐらいで、毎日お風呂に入れるということで労力も軽減される、そして経費も節約できる、ということだったそうなんですね。
佐伯)そんな仕組みが。
仙波)あとはですね、社交の場にもなっていたそうなんです。数の多さでは愛媛県下一…まではちょっと言い過ぎかもしれませんが、とても有名になっていたほどだったそうなんですね。
佐伯)宇和の共同風呂は、それだけ数もあったと。
仙波)で、経済的にもコミュニティ作りにも一役買っていたということで、明治のどうも後期からあったそうなんですが、昭和の50年頃までは活用されていたそうです。
佐伯)そうですか、いくつぐらいあったんですか?
仙波)これですね、宇和町内6地域、92ヶ所。
佐伯)え、そんな!
仙波)わかっているだけで92ヶ所。
佐伯)うわっ、ちょっとびっくりしました。
仙波)ですよね。1000と50戸、家庭ですね。トータルで大体5200人以上が利用したんじゃないかと言われております。
佐伯)へ~!すごいですね。
仙波)これはですね、宇和郷土文化保存会という会の方々が発行した「宇和における心触れ合う共同風呂―歴史と思い出―」という書籍がありまして、その中で紹介されている数なんです。
佐伯)どれぐらいの大きさのお風呂なんです?
仙波)それはですね、人数によって様々なんですが、小さい共同風呂ですと17名ぐらいが使ってる小さなお風呂から、200名ぐらいまでの地区もあったりして。
佐伯)え~!
仙波)サイズはまちまちだったそうなんですが、大きな、人数が多いところは、図面を見ますと釜が三つあったりとか、とても広いお風呂場だったみたいですね。
佐伯)そうなんですか。それを共同で管理する。例えばどういう…
仙波)そうですね。例えば水汲みですとか薪集め、あとは風呂焚きもね、必要なので…
佐伯)これを地域の人が当番制で。
仙波)はい。
佐伯)なるほど、でもやっぱり…「裸の付き合い」って言いますけど、銭湯と同じようにこの共同風呂もコミュニティ作りにも一役買っていたというですね。
仙波)はい、いろんなエピソードが書籍の中にも書かれてありまして。例えば共同風呂に行くと、風呂水を粗末にしていないかとか、エチケットが守れているかといった、そういったことを学び合う場にもなっていたそうなんですね。ただ昔は混浴も多かったそうなので…
佐伯)えっ!
仙波)他の町からお嫁に来たお嫁さんなんかは恥ずかしがって、夜遅くお姑さんと誰もいないときに入りに来てたとか。
佐伯)そりゃそうですよね。
仙波)ちょっと恥ずかしいですよね。
佐伯)混浴もあったんだ。
仙波)そうなんですよ。田植え時には山間地から女性の「田植えさん」というお手伝いの方が来ていた時期があったそうなんですが、そういった方々もやっぱり入りにくかったので、遅くなって人がいないときに入ってたなんていう話もあるそうなんですね。ただ、この女性たちは混浴の共同風呂に入るのを嫌がって、次の年から田植えに来てくれなくなったっていうことも書いてありました(笑)
佐伯)そうですか、宇和に行ったら混浴に入らないかんという(笑)へえ~。
[ Playlist ]
Alessi – Love To Have Your Love
Bell & Sebastian – Waiting For The Moon To Rise
Bob Dylan – Corrina, Corrina
Selected By Haruhiko Ohno




