今週、坂の上に訪ねて来てくださったのは、瀬戸内アーキテクチャーネットワーク代表の白石卓央さん。愛媛・松山を中心に「建築」にスポットを当てて、地域の魅力を再発見・発信。「えひめ建築めぐり」というブログも運営されています。何気なく通っている街角にも、隠れた名建築があちこちにあるそうで…。


 

佐伯)愛媛県内にある「知られざる」と言うか、魅力的な建物をいくつか教えて頂きたいんですが。ブログを拝見していて、「日土小学校」出てきますよね。小学校も確かにいくつか素敵な建物って残ってると思うんですが、その中で敢えて「日土小学校」を取り上げられたというのはどういうことなんですか?

白石)そうですね、あの「日土小学校」はご存知の方もたくさんいらっしゃると思うんですけれども、八幡浜の日土にある、小学校とした1950年代に建てられた小学校なんですが、設計された方っていうのが松村正恒さんという方なんですけどね。当時、八幡浜市の職員として八幡浜に多数小学校を設計されているんですけれども。

佐伯)市の職員でいらっしゃったんですね。

白石)その方が建てられた、設計された「日土小学校」なんですが、もともとはですね、もう老朽化が進んでいて取り壊そうかっていうお話があったんですね。で、たまたま、とある建築家の方が日土小学校を訪れて、「これはすごい建築が、学校が残っているぞ」ということで、愛媛の建築の専門家の方々とか学識者の方とか、そういった方々と一緒になってですね、その建築を新調査して、その魅力っていうのをやっぱり分かりやすく、その小学校の関係の方々とか日土の地元の方々に伝えていくという活動を行って、それで結果残すことになって。それがついには重要文化財にまでなったっていう、これ本当すごく面白いっていうとあれなんですけど、そういった事例だなと思っています。やっぱりなかなか地域の人とか一般の人には伝わらない建築の魅力っていうのも、ちゃんと伝えていくという、その魅力をわかりやすく発掘して伝えていくっていうことが大事だなぁという風に思いまして。まさに我々がやってるような活動もそういった活動の下敷きというか、種まきの一部にでもなれるといいなっていう感じで行っているんですが、そうした非常に先駆的な事例かなと思いますね。

佐伯)確かに、いつも当たり前のようにそこにあると、本当に何の気なしにいつも通ってる、いつも目にしているその魅力っていうところを見落としてしまう、忘れてしまうということもあると思うんですが。そこをプロの視点ももちろん、そして市民の方の目線もっていうところで形に残していく。そういうことでその建物の現存にも繋がっていくっていう事例ですよね。

白石)そうだと思いますね。

佐伯)白石さんからご覧になって、この「日土小学校」の建築としての魅力って、いくつか挙げて頂けますか?

白石)そうですね、まず挙げられるのが徹底して子供目線で作られている。訪れると皆さん気づかれると思いますけど、階段が非常に緩やかに作られていて、子供にも上りやすく作られているとか。建築としての特徴で言うと、ちょっと専門的な用語になるんですけども「クラスター型」って言って、いわゆる普通の小学校って片側に廊下があって、そこにこう教室が張り付いてるような形だと思うんですけれども、「日土小学校」の場合は廊下からちょっとですね、各教室に至るまでにちょっとした廊下の部分がある。まあ言うなればブドウの房みたいな形になっていて、そのブドウの実のところは教室なんですが、ちょっと廊下から離れた形で作られてるんですね。そうすることによって教室の両側に窓を設けることができて、両側から明るい光が入ってくる。建てられた当時のことを思うと、そんなに照明の設備っていうのも進んでいるわけではないでしょうから、そういった暗い中でも自然の明かりを利用しながら、やっぱりその子供のためにっていうところを思って、そういう風な作られ方をしているなーっていう風に思いましたね。

佐伯)あくまでも「子供達のために」っていうところで、その設計された松村さんのお人柄っていうのもなんとなくね、想像できるんですけれども。さっきおっしゃった「市の職員として、いくつかの小学校手がけられた」ということですが、他の建物っていうのは、松村さんは何か手掛けられたりはしてないんですか?

白石)そうですね、八幡浜を中心にですね、公民館だったりとか図書館だったりとか、色々な建物を残されていますね。

佐伯)公の建物を、ずっと職員として手掛けられてたってことですか?

白石)そうですね。ただまぁその後に、職員辞められた後に、実は松山で御自身の事務所、アトリエを作られて、そのアトリエ時代の建物っていうのが実は松山にたくさん残されています。っていうのが、割と我々の間というか建築マニアの間では最近話題ですね。

佐伯)そうなんですか?最近の話題!?松山市内では、どんな建物があります?

白石)知られているもので言うと例えば城西自動車学校さんとか。

佐伯)あの、松山市中央通り沿いの?私はそこで免許取りました!あの建物!?

白石)電車の線路の横に建ってると思うんですけど、電車の中からの夜景なんか見ると、とても綺麗ですね。

佐伯)へ~。そんな目で見たことなかった!他にもありますか?

白石)私の好きなものでいうと、福音寺にある日産プリンス愛媛さん。これも今も非常に綺麗に使われてますけど…

佐伯)ちょっと今、画像を見せていただいたんですけれども、そう言われればなんかモダンな感じ。

白石)そうですね、ちょっと三角形の敷地に建っていて、その周りに庇を薄く張り出した、非常にシャープな感じの表情をしている建物だと思います。

佐伯)これ、庇の部分が随分こう…普通の庇に比べて広いと言いましょうか、これデザイン的なものなんですか?

白石)ですね。あとはやっぱり事務室などにも使うので、おそらく日よけとしてだったりとか、あるいは窓を開けても雨が入らないとか、そうしたことも考えられてるんじゃないかなと思いますね。

佐伯)機能性ももちろん考慮してという。これ、いつ頃の建物になるんですかね?

白石)これは1960年代だという風に言われてますね。

佐伯)そう考えたらすごくモダンですよね。

白石)そうですよね。

佐伯)ちょっと急にね、自動車学校さんとか日産さんに見学者が来るかもしれないんですけれども(笑)そういうのが「実はこうなんだよ」っていうのを本当発信してもらうと、私たちも街歩きも楽しくなりますね。

白石)そうですね。

 

 


[ Playlist ]
Smashing Pumpkins – Beautiful
Seu Jorge – Bem Querer
Tracey Thorn – Femme Fatale
Sandra Cross With Alan Weekes – Moon River
Todd Rundgren – It Wouldn’t Have Made Any Difference

Selected By Haruhiko Ohno


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