今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、愛媛大学宇宙進化研究センター准教授の松岡良樹さん。今年、松岡さんの研究グループは「世界初の発見」をされたということで注目を集めました。その発見とは129億光年彼方に、合体中の2つのブラックホールを見つけたというもの。「初期の宇宙」でこうした現象を確認したのが、世界で初めてなのです。では、その「初期の宇宙」とは?などなど、今回は宇宙に目を向けて「ブラックホール」をテーマに、スケールの大きなお話を伺いました。キーワードは「何でも吸い込む天体のラスボス」「ブラックホールの合体」「もし地球にブラックホールが近づいてきたら?」の3つ。あなたも今夜は、夜空を見上げてみませんか?
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
佐伯)大小のサイズの違いっていうのは、ブラックホールにもあるということなんですか?
松岡)はい、そうですね。私たち研究してる中で、ブラックホールいろんな大きさがあるんですけど、いちおう3つのカテゴリー分けっていうのをしていて、SサイズMサイズLサイズと仮に呼ぶことにするとですね、Sサイズ=ちっちゃいやつはですね、だいたい私たち重さを「太陽の何倍」っていうふうに表すんですけど、Sサイズっていうのは太陽の数倍から大きくても数十倍ぐらいですね。これはさっき言った、星が死んだときの星の死骸ですよね。星の死骸として生まれます。それはもうよくわかっていて、一つの銀河の中に一億個もあると言われているのがこのSサイズ、ですね。一方の大きい方のLサイズっていうのがいるんですけど、これは太陽の100万倍、少なくとも100万倍から大きいものだと100億倍ぐらいの重さを溜め込んだようなやつがいます。こういうのは、その銀河の中に1つだけあって、銀河があったらその真ん中にドーンと鎮座してるということが知られてるんですけど、ただこんな化け物みたいなLサイズがどうやって生まれてるのかっていうのは、これはまだわかってないですね。
佐伯)あ、そうなんですね。
松岡)これ、大きな謎になってます。さらに謎になってるのが、真ん中のMサイズですね。Mサイズにいたっては、これはまだ見つかってない。
佐伯)え、そうなんですか?
松岡)そうなんです。SサイズとLサイズはもう観測でたくさんあるんだけど、なぜかその間に当たるMサイズだけなくって、これが宇宙のどこかにまだ隠れているのか、あるいは宇宙にはそもそもこういうものは現れなかったのかっていうのがわかっていなくて、これは天文学者が躍起になって解こうとしてる問題なんですけど、まだこれは見つかっていないですね。
佐伯)へ~!これを解いていくのが皆さんの夢みたいなところがあるんですか?
松岡)そうですね、やっぱり今かなり大事な課題ということで、世界中でこれは天文学者が挑んでる謎になってますね。
佐伯)じゃ、現在皆さんがわかっている(ブラックホールの)作られ方っていうか生まれ方っていうのは、もう星の死骸っていうことだけ、なんですか?
松岡)そうですね、それだけは確かに起こっているということがわかってます。
佐伯)で、それは全てSサイズである、ということなんですね。でも、このSとSがくっついてLになってるというわけでもないんですか?
松岡)はい、それはとても良いポイントで、そういうもちろん意見もあります。やっぱり私たちが唯一知ってるのはSサイズの出来方なので、それがいったん生まれたら他のSサイズとどんどんどんどんくっつくですとか、あるいはそのSサイズがどんどんどんどん物を吸い込んでいって、ついにはLサイズに成長するっていう説ももちろんあるんですけど、ただ問題はですね、そのSがどんどんどんどん大きくなってLサイズになるんだったら、絶対Mサイズを通っていくはずですよね。
佐伯)そうですよね、途中でMサイズがあるはず。
松岡)絶対あるはずなんですよね。ところがその宇宙のどこを見渡してもMサイズがないんですよね。これはやっぱり、そのMサイズを通るんだったらどこかになきゃいけないんだけど、これがどこにも見つからないので、そのSサイズがLサイズになるっていうのは違うんじゃないかっていうふうに今は思われていて、はい。ただそこはやっぱりまだまだわかっていないところで、いずれにせよこのMサイズが一体どこにいるのかと、あるいはもう本当に宇宙にはこういうものは存在しないんだっていうそれ、そこのところをですね、はっきりさせるっていうのが、Lサイズのブラックホールがどうやって生まれるのかっていう謎を解くことにもなりますし、やっぱMサイズが何でないのかっていうところにも関わるということで、ここはかなり重要なポイントになってますね。
佐伯)そうか、Mサイズがただ見つかってないだけなのか、それとも存在さえもしないのかっていうことも証明されてないわけないですね。へえ~。たださっきおっしゃったSとSの合体みたいなものを発見されたのが松岡さんたちだったということですか?
松岡)えっとですね、私たちが発見したのは、これ実はLサイズ同士ですね。
佐伯)へ~、そうなんですね!
松岡)お化けブラックホールが2つあって、それが合体してる現場を見つけたというのが私たちの発見だったんですね。
佐伯)だってLサイズ自体が1つの銀河に1個ぐらいっていうことですから、ものすごくそれは珍しいんだろうなっていうことが今わかりました、ここまでの説明を聞いた上で、はい(笑)
松岡)そうですね、はい。そういうだから銀河同士がこれは合体しようとしてるわけで、銀河同士がぶつかって、真ん中にいるブラックホール同士もぶつかっていると。そういう現場、こういうのは本当になかなか見つからなくてレアなんですけど、それがさらに誕生してからわずかの「宇宙の夜明け」っていうすごく遠い宇宙で見つかったっていうのが、やっぱりこれがすごく大きな意義があったということで、いちおう私たちの発見例が、今まで人類が知る最遠記録のこういう合体現場だということになっています。
佐伯)最遠記録って一番遠くでの合体っていうことですか?
松岡)そうですね、一番遠くでもあり、宇宙の歴史の中で一番過去でもあるということですね。
佐伯)うわ~、すごい発見ですね!
[ Playlist ]
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Selected By Haruhiko Ohno