今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、高畠華宵大正ロマン館館長の高畠麻子さん。華宵の遠縁にあたる館長をお迎えして、「大正時代の女性たち」をテーマにお話を伺いました。現在、高畠華宵大正ロマン館では「大正女の一日展~これが彼女の生きる道!?~」を開催中。「大正時代は女性の時代」と話す館長に、「家庭内の日常生活」「外出する女たち」「“性”をめぐって」という3つのキーワードで語っていただきました。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。


佐伯)具体的にはその生活の様子というのはどんな感じだったんですか?

高畠)はい。展覧会でも衣食住っていうことで、キーワードを「ファッション」と「食事」ですよね、で、住んでいる家ですね「住宅」、を見ていってるんですけれども、ここでさっき言いました和洋折衷っていうのがものすごく大事なキーワードで。例えば、衣食住の「衣」ですね、ファッションに関しても、まさに和洋折衷なんです。着物を着て日本髪っていうのが従来当たり前ですけども、着物を着て例えばおかっぱの短髪に髪をバッサリ切っちゃうとか。あるいは…逆はあんまり、洋服に日本髪っていうのはあんまりなかったと思うんですけれども、少しずつ洋風な要素が加わってきます。で、髪型についても、いきなりバッサリ短髪にっていうのは勇気がいるんですけれども、日本髪に結うんじゃなくて「束髪」といって少し変わった簡潔な結い方をするとか、そこにアクセサリーをつけるとか。そういったちょっとおしゃれ心が、「和風でこれはこうだ」ってなってたものがそうじゃない要素をどんどん取り入れていく。それもやはり若い世代の方がそういうのを大胆に取り入れますので、後で話しますけど女学生なんかがやはりそういう新しいことにどんどんチャレンジするような、そういう風潮があったみたいですね。

佐伯)いわゆる「洋髪」っていう感じですかね。

高畠)はい、そうですね。「耳隠し」とかですね、そういう新しい髪型についての名前も…

佐伯)え、「耳隠し」?

高畠)そうなんですよ、耳をパーマのウェーブでちょっと隠すっていう、そんな感じで。

佐伯)で、結ってはいるんですか?

高畠)そうなんですよ、それが「耳隠し」。あと、これ今日ラジオでお話してるんですけども「ラジオ巻き」っていう髪型もありまして。

佐伯)なんですか、「ラジオ巻き」???

高畠)大正14年にラジオ放送が始まりました。そのときにラジオを聞くにはヘッドホンをして聞く人が多かったようで、耳の周りに、おそらくあれは三つ編みで編んだものをくるくるくるっと、ラジオのヘッドホンのように結ってる髪型があるんです。耳の左右に。

佐伯)え~、そうんですか!

高畠)それすごいかわいらしいんですよ。それが「ラジオ巻き」って呼ばれてるような、そういうね、いろんな新しい試みがあったみたいですね。

佐伯)髪型一つ伺っても、新しいものをどんどん取り入れて楽しもうっていう、その雰囲気伝わってきますね。

高畠)そうですね、その軽やかさっていうのは本当に素敵だなと思います。

佐伯)それから衣食住、今度「食」の面ではどうでしょうか?

高畠)ここもですね、やはり従来の日本食、和食って今私たちが呼んでいるものが中心ではあったんですけれども、例えばオムライスとかチキンライスとか、あるいはサンドイッチとか、きゅうりサラダとか、ちょっと洋風な名前のもの、実際洋風な素材を使った料理っていうものが…、婦人雑誌っていうのが毎号いろんな複数の出版社から出されてたんですけれども、そこに必ずレシピ本が載ってますね。ちょっと洋風のものだけではなくて中華料理とか、あるいは韓国料理とかそういったもののレシピも入ってますし。面白いなと思ったのは、ちょうど100年前にパリのオリンピックがあったんです。そのときに「オリンピック式料理の作り方」っていう、そういうタイトルで記事がありまして、オリンピック式の料理ってなんだろうと思ったら、普通のチキンライスなんですよ。

佐伯)なんでオリンピック式?

高畠)たぶんオリンピックっていうのが、新しいとかちょっと進んでるっていうニュアンスがあって、おそらく。なぜならオリンピックっていうもの自体が、日本が参加する、一般大衆は知らないんですよね。それまでオリンピックがあっても、日本が参加してないので。ようやく1924年、あるいはその後の28年ぐらいで日本人が活躍し始める。そうすると、オリンピックっていうものがあるんだっていうのが一般の人たちが知ることになって、「オリンピックって何?何か外国でやって、すごい運動してるけど」っていう、何かわからないけれども何かすごいものだっていうイメージだけ「オリンピック」っていう言葉が背負っちゃうんですね。そうすると食事についても、「オリンピック式西洋料理」っていうと、なんかふわ~っと「すごいわ、なんかよさそう」っていうイメージ持ってたんでしょうね、おそらく。そういう何か煽り文句として「オリンピック式」っていうのが使われて。それを見ると、その西洋料理っていうものに対して、やっぱり何となく憧れを抱いてたんだなっていうのが、ちょっとわかる気がしましたね。

佐伯)まさにその100年後が今年で、パリオリンピックが開催された節目の年でありますけれども、100年前のパリオリンピックのときは「オリンピック式料理=チキンライスだった」なんて聞くとすごく面白いです(笑)

高畠)なんかね、面白いですし、何かかわいらしいって言うと変ですけれども、なんかとてもオリンピックっていう行事に対してわくわくしてた感じが伝わってきますね。

 


[ Playlist ]
Nicki Parrott – There’s A Kind Of Hush
Mighty Diamonds – Right Time
native – everafter

Selected By Haruhiko Ohno


この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く