今週は、「坂の上の雲ミュージアム」特設ブースからの生放送!10月18日は「反骨の軍人」として知られる水野広徳の命日で、今年は80回忌の節目にあたります。そこで、きょう行われた追悼法要について、水野の墓がある蓮福寺の山岡宏住職と、水野の顕彰活動を続けるNPO法人アイム愛媛の菅紀子理事長に伺うとともに、「『坂の上の雲』の人々と水野広徳」をテーマに「坂の上の雲ミュージアム」総館長の菅康弘さんにお話を伺いました。菅総館長はスペシャルドラマ『坂の上の雲』のエグゼクティブプロデューサーを務められており、ドラマ制作の裏話も披露されるなど、会場を盛り上げてくださいました。


佐伯)さて、水野広徳と秋山兄弟、共通しているところがあるんですか?

菅)3人とも留学というか視察というか、外国に行ってますね。それで好古さんは、久松定謨さん、このお城のお殿様の息子さんのお付きで行けと言われてフランスに留学してます。当時の日本の陸軍は、ドイツ式なんですよ全部。「坂の上の雲」にも出てきますが、メッケルさんっていう人を呼んで、先生に。好古もその人に習ってるんですけど、士官学校で。でもフランスに行ってみて騎兵をやってみたら、実は乗り方、フランス式の騎乗法の方がドイツ式より優れてるって、彼は気づくっていうか思うんですね。それでドイツ一辺倒のときに、日本陸軍の騎兵隊は騎乗方式はフランス方式。それを持ち帰るってことですね。それから真之はイギリス、アメリカに留学するんですが、兵棋演習って何かドラマとかで見られたことありますかね?海図の上に木で出来た軍艦を置いて、それで相手がこう来たらうちがこう行ってって言って、サイコロ振って当たったとかっていうやり方をする演習があるんですが、それはアメリカで開発されたものなんですよ。それで実は海軍は、もうその頃はイギリス一辺倒ですから、イギリス海軍。真之もアメリカからそれ(兵棋演習)を見て、それを持ち帰ったっていう。だからその固定観念に縛られないっていうとこがありますね。で、水野さんは実は私費で言ってるんすよね。ヨーロッパ、アメリカにまず1回目。これは第一次世界大戦中に行ってます。そのときに実はロンドンにいるときに、ドイツ軍の空襲に遭ってました。当時、初めて飛行機が使われ始めて、戦争に。それでイギリス人の人と一緒に地下室に逃げ込んだりしているのと、すごい視点だなと思ったのは、フランスとかイタリア、ローマとかパリに行ってるんですが、そのときにとにかく街を歩いてる人の中に男性がものすごく少ない。男はもうみんな兵隊に取られて行っちゃってるんですね。なおかつ女性が多い中で、女性が喪服を着ている人がものすごく多いって書いているんですね。だからそれはもう旦那さんが戦争で亡くなったということなので。そういうようなことを見て、今度戦争が終わった後に、またヨーロッパに行って。これはドイツのベルリン戦、負けた方の国ですね、ベルリンにどうしても入りたいって言って、すごく苦労してビザ出してもらって入って見てるんですが、そのときにドイツはもうとにかく車を全部没収されてるので、戦勝国に。荷馬車がベルリンの街中を走ってて、砂埃がもうもうと上がってると。とはいえ、イギリスやフランスやイタリアの勝った方の国も物が足りない、物資が欠乏して生活はすごい苦しいと。そういうのを見て、それからベルダン要塞ってフランスが作ってるとこで大激戦があって何十万人って亡くなってるんですが、そのお墓の山とかですね、そういうのを見て、多分これは戦争って勝っても負けても相当悲惨なことになるぞっていうことを体感してるんです、彼は。そこから多分戦争はしてはいけないっていう思想になったんじゃないのかなっていうことですね。だから、本とか読んだり、当時だと新聞記事で戦争のことはよくわかりますけど、これはね、文字で読んで脳でわかってるのと、実際に現場に行って見てみるっていうのは、もう多分圧倒的に違うんです、天と地ほど、体感するっていうことが。それで多分新聞には、パリやローマには喪服を着た女の人がたくさん歩いてますとは書いてない。何人亡くなった、戦死何人っていうのは数なんで、あくまで。それをやっぱり実感したっていうことが、ものすごく大きいんじゃないのかなっていう気はしますね、水野さんのその後の人生に関して。

佐伯)3人とも、行かなきゃわからない、行って初めてわかることっていうのを大事にしてるんですね。

菅)そうですね、それともう一つ大事なのは、好古さんだと、「もうドイツ式だ、陸軍は」って言われて行ったら、ドイツ式を全部学んでそれを鵜呑みにして帰ってくるっていうのが普通の秀才なんですよ。なんだけど「いや、この乗り方はフランスの方がいいぞ」って、あるいは「日本人に合ってるぞ」っていうことを感じて、それを持ち帰ってそれにしてしまうっていうね。だから単純に習ったことを鵜呑みにしないで、そこで疑問を持つっていうのが第3段階で、それが大事なんじゃないのかなっていう気がすごくしますね、この3人見てると。

佐伯)そこが3人とも共通してる。

菅)水野さんもた只々うわ~って上っ面だけ見て帰ってきたんだったら、そんなに海軍にいて反戦みたいなことには多分ならないと思うんです。相当なことを見て考えたんだと思います。それでそういう人生を歩んだのかなっていうふうに思います。

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[ Playlist ]
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Amiel – Lovesong
Coke Escovedo – I Wouldn’t Change A Thing

Selected By Haruhiko Ohno


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