今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、松山が舞台となっている劇場アニメ「がんばっていきまっしょい」の監督・櫻木優平監督とプロデューサの田坂秀将さん。10月25日公開の劇場アニメ制作秘話を中心にお話を伺いました。原作は、1995年に坊っちゃん文学賞を受賞した敷村良子さんの小説「がんばっていきまっしょい」。この小説は実写映画化、テレビドラマ化され、今秋アニメ映画化と、長きにわたって私たちに感動を与えてくれています。その魅力についても、たっぷりと伺っています!
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。


櫻木)リアルな世界で、目で見える世界で作ることもできるんですけど、やっぱアニメで作る上で付加価値っていうのは彩度であったりとか、あとあんまりシックになりすぎない方がいいかなと思っていて…

佐伯)シックに?

櫻木)彩度が低い、ちょっとモノトーンよりになりがちな作風だなとは思ってはいて、それが結構…やっぱ子供たちとかにも見てもらいたいなと思ったんで、やっぱり色鮮やかに描きたいなというので、かなり色に関してはめちゃくちゃ攻めた彩度の高さで今回作りましたね。

佐伯)あの、見てる側は正直「これは彩度が高いな」とか思っては見てなくって(笑)、いま監督に言われて初めて、実写版映画の世界観っていうか色温度っていうか、確かにちょっとノスタルジックな感じがするような、落ち着いたトーンだったなって今気づきました。それに比べると物凄く、おっしゃるように色が綺麗だったので、現代の物語としてすっと入ってきたのかなって感じたんですけれども、そのあたりも意識されたんですか?

櫻木)そうですね、やっぱり実写映画も実写ドラマも、結構もう10年以上前の「昔見た」っていうノスタルジーな気持ちで見て印象に残ってる方が多いんで、なんか下手したら懐古的な作品として扱われるなと思っていて、そうはしたくなかったんで、やっぱ新しい作品として、新しい世代にも見ていただく作品にしたいなというので結構「普通だったらこういう色味だよね」から結構離した、アニメならではの色使いにしましたね、今回は。

佐伯)そうだったんですね。じゃあ、まんまと私、思うつぼにハマってる(笑)。たぶん一緒に見に行ったアナウンサーの仲間も皆「ものすごく映像が綺麗だった。鮮やかだった」という感想でして、これはもう狙い通りだったわけですね。

櫻木)まあ、そうです(笑)

佐伯)それによって時代感も現代にグッと引き寄せられるっていうのは発見でした。

田坂)なんかでも勝手に、…ごめんなさい、監督の意図ともしかして違うかもしれないんですけど、割とやっぱり悦子とかいわゆる高校生の心情と水の表情とかリンクしてたと思うので、それこそやっぱ懐古的というよりは、その年代の女の子たちのなんか色味というか、なんか爽やかで明るい色味と、やっぱり心が沈んだときは少しやっぱり暗くなったりとか淡くなったりとか、何かそういうところがリンクしているのかな、だから綺麗に見えるのかなっていうふうに思ってたんすけど、あんまりそういう狙いはない感じですか?

櫻木)でも、そこら辺はもう全て計算してはいます、やっぱり。

佐伯)ああ、やっぱりそうなんですね。

櫻木)やっぱ心理描写に色ってすごい大事なんで、シナリオの構成から含め、こういうシーンでこういう色味を使うみたいなのは、それを全部やんなきゃいけないのかアニメなんで。撮れば映ってるものじゃなくて自分で作ってかないといけないんで、そこはしっかり設計してやってますね。

佐伯)今回は脚本も手がけられているということで、令和の現代に訴えられる作品とするためには、どういうふうなところを狙っていったんですか。

櫻木)そうですね、まずは1個大きいところで、現代劇にできないかっていうのが最初にチームで話してて出ていて。小説自体、昭和の物語なので、これ描くのもちょっと大変っていうのもあり、もう存在してない場所とかも出てくるので。

佐伯)そうですよね。

櫻木)っていうのもあり、新しい作品として描くってときに「がんばっていきまっしょい」の本質的軸はずらさずに、テーマ性はずらさずに現代劇でできないかって。これも敷村さんに最初にご相談させていただいて、そこでぜひぜひという話だったので、その方向で進めていきましたね。

佐伯)原作と、ここの部分を味付けを変えたっていうのは言える範囲でありますかね?

櫻木)ああ、でも一番わかりやすいのは、悦子のキャラ設定ですね。小説のときは悦子が率先して部活を、あの女子ボート部を作るっていう話でしたけど、現代版は主人公って割と引っ張られてそっち側に行く方がリアルだよねっていうので、元々はそんな前向きじゃない悦子がいつの間にかそっちに引っ張られていってるみたいな。でも最終的には、同じ印象に悦子を持っていくっていう作りを目指しましたね。

佐伯)おお~、なかなか難しいことにチャレンジされたわけですね。

櫻木)そうですね。

佐伯)個人の感想なんですけど、アニメを見たときに、もう私、悦子って、もし子供がいたら子供より年下ぐらいな世代なんですけれども、なんかね、今の自分の気持ちにもちょっと刺さるっていうか、なんかその一生懸命になることを斜に構えちゃうみたいなところって、これ女子高生だけじゃなくって、20代でも30代でも40代50代でも結構あるんじゃないのかなって。その一生懸命になることを諦めちゃってるっていうか。

櫻木)うん。

佐伯)っていう意味で、ものすごい感情移入して見たんですよね。

櫻木)そうですね、結構これ高校生を描くときの…なんていうか、これは別にそういうルールがあるわけじゃないんですけど、自分の中の作り方で、気持ちちょっと大人に描いた方がいいなと思っていて。

佐伯)へえ~。

櫻木)リアルな高校生をリアルに描いちゃったときって、結構やっぱり感情移入しづらい層が増えてくる。

佐伯)はい。

櫻木)なのでまあ高校生だけど、ちょい大人な気持ちを持ってる高校生たち、みたいな描き方にはしてます。

 


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Selected By Haruhiko Ohno

 

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