今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、建築家の花岡直樹さん。5年半ぶりに保存修理工事を終え全館営業を再開した道後温泉本館。松山城や高知城といった文化財の保存・修理・防災などを手掛けてきた花岡さんは、今回の道後温泉本館の保存修理にも大きな役割を果たしました。工事は重要文化財だからこその難しさがあった一方、築130年の歴史を感じさせる嬉しい発見も色々あったとか。そんな道後温泉本館の保存修理の裏側について、「輝きを取り戻した又新殿・霊の湯」「予想外の事態」「先代からのメッセージ」というキーワードで、たっぷりと語っていただきました!
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
佐伯)予想外のことっていうのはありましたか。
花岡)ええ、これは予想外というよりも、見つかって大変嬉しかったことなんですけれども、中央廊下というところに全体の排水が走ってる。それはわかってたんですけども、その管を露出させて今回取り替えの予定で設計してましたけれども、掘り起こして、その管を見つけたところですね、どうもとっても古い陶管が入ってたんですね。
佐伯)陶製の管、陶管。
花岡)その通り。それをよく見ると、今使われてない鞘管…枝になって分かれてるところが3ヶ所見つかりまして。それを「なんだろう?」と思って昔の、当初木造の一の湯、二の湯、三の湯だった時代の図面とあわせて見るとですね、それぞれの一の湯、二の湯、三の湯の浴槽の水下とぴったり合った!
佐伯)は~、そうなんですか!
花岡)ということで、これは明治27年建設時の排水管である可能性が非常に高いということになって、これもう文化財ですよね、本当に。
佐伯)明治時代の排水管ですもんね。
花岡)はいはい。
佐伯)それはやっぱり陶製だった、陶器製だったから残ってたってことなんですか?
花岡)当時はそういうものしかなく、プラスチックとかポリエチレンがなかったですから、そういうことで陶管を最新のものとして使ったと思うんですけれども、それを取ってそこに新しいポリエチレン管を排水管として敷設する予定だったんですけれども、それはもう保存してですね、横に新しい管をつけて。
佐伯)じゃ、今もその明治時代の陶管も、もう一回埋めたってことですか?
花岡)埋めた、保存して残しました。
佐伯)あ~、そうですか!
花岡)今後メンテナンスもしやすいようにということで、ピット状になってますんで、そこに入ってよく観察すると見えるようになってます。
佐伯)そうなんですね。今後の保存っていう意味でも、しやすくしてるっていうことですか。
花岡)メンテナンスや、それから排水管の取り替えなんかは避けて通れないことですから、そういうことが今後やりやすいような工夫は、いろんなとこでしたんですよ。
佐伯)は~。じゃ、伊佐庭如矢のように、この先を、未来を見越した保存修理工事だということですね。
花岡)そうですね(笑)、50年100年後に次の修理をする人がね、「あ、先輩よくやってるな」と思ってもらったら、ちょっと嬉しいですね。
佐伯)ああ、そうですか。もうすごい今、満面の笑顔を見せてくださってる花岡さんなんですけど(笑)。その配管っていうのは、文字通り「縁の下の力持ち」ですもんね。
花岡)お風呂のお湯を流すだけじゃなくって、一部は中の方に降り込んだ雨も流します。いろんなところから、もうまさしく「縁の下の力持ち」という感じでですね、もう130年働き続けてきたわけなんで、はい、それが日の目を見た、紹介できたというのはね、私らも嬉しかったです。
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[ Playlist ]
Yumi Zouma – Half Hour
Sharon Jones & The Dap-Kings – How Long Do I Have To Wait For You
Maria Muldaur – Midnight At The Oasis
Sophie Milman – It Might As Well Be Spring
Radiohead – No Surprises
Selected By Haruhiko Ohno