今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、愛媛県美術館学芸員の岩本成美さん。いよいよ22日から始まる「世界遺産 大シルクロード展」の魅力をたっぷりと伺いました。日本の国宝に相当する「一級文物」44点を含む約200点の展示というスケールに加え、日本初公開などの貴重な品々も。実際に中国で見て回ろうと思うと、なんと27か所の美術館を巡らなければならないという美術品の数々が、愛媛県美術館に一堂に展示されるんです!キーワードは「シルクロードの歴史」「民族往来の舞台と東西文化の融合」「仏教東漸の遥かな旅」の3つ。これを聴いてから足を運べば、大シルクロード展が何倍も楽しめる!
佐伯)海を挟んだところに位置する日本には、何か影響っていうのはあったんですか?
岩本)そうですね、シルクロードで中国へと伝わった文化っていうのは、海を越えて日本にまで伝わってきておりますので、人によっては「海を渡って日本までも含めてシルクロード」っていうふうに見たりする方もいるようです。その理由としましては、日本の文化発展という点でもシルクロードは非常に大きな役割を果たしていて、特に奈良時代の平城京に、西域から中国へ伝わってきたものが平城京にまで伝わっているという点から、「平城京がシルクロードの終着点」とも言われることがあります。
佐伯)何かそんなふうに聞くとね、すごく身近に感じますけれども、例えばその日本への影響というのはどんなものがあるんですか?
岩本)そうですね、特に大きな影響というのが、例えば新沢千塚古墳群というのが奈良県の橿原市にあるんですけれども、そちらにペルシャ産のガラスの器が発見されているんですね。そうしたものは渡来人が日本へ来るときに、金銀の製品ですとかガラス製品というのを持参して日本にやってきたとされているんですが、そうしたものが日本に入ってきたっていうのが一つ挙げられます。他にもですね、遣唐使…
佐伯)遣唐使!
岩本)はい、影響してるんですけれども、あの唐の時代というのが、シルクロードにとっては黄金期というふうに言われる時代でして、唐の中国の中に様々な外国からやってきた人たちが居住して、唐の中でも外国風の文化が流行するんですね。で、日本から唐を訪れた遣唐使たちがそういった文化を日本に持ち帰ったことで、さらに日本にも影響を与えました。例えば奈良時代、1300年余り前のことなんですけれども、遣唐使がシルクロードによって、交易によって繁栄していた唐から最先端の文化を持ち帰りまして、シルクロードの文化を日本に伝えたといわれています。考古遺跡としては日本で初めて世界遺産に登録された平城宮跡が挙げられます。
佐伯)はい。
岩本)平城京のモデルというのが、唐の長安の都をモデルにしたというふうに言われているんですけれども、そうした影響も大きかったですし、また平城京というのが、中国以外にもインドやペルシャ、ベトナムから来た僧侶たちが行き交う国際都市でもあったので、そうした点でもシルクロードが日本に与えた影響は大きかったんではないかと思われます。
佐伯)そうですか。僧侶たちっていうところで言うと、仏教とも密接な関わりがあったっていうことですよね。
岩本)そうですね。
佐伯)じゃ、寺院などにもその宝物ですとか、交易で入ってきたものっていうのはたくさん残ってるんですか?
岩本)はい。代表的な例として挙げられるのが、東大寺の正倉院の宝物が挙げられます。こちらの宝物の中には、中国やインド、イランやギリシャですとかローマエジプトなど、その各国の要素を含んだ物が所蔵されています。
佐伯)正倉院の宝物って言うと、なんか教科書にも載るようなものがいくつかありましたもんね。
岩本)そうですね。例えばあの「螺鈿紫檀の五弦琵琶」というのがあるんですけれども、イメージ浮かびますか?
佐伯)螺鈿って貝殻細工の螺鈿で、紫檀って言ったら相当高級な木材ですよね(笑)
岩本)はい。
佐伯)その、五弦の琵琶。
岩本)はい、琵琶なんですけれども、そちらがそもそも五弦の琵琶…五つの弦でその琵琶っていうのがインド発祥のものなんですね。
佐伯)はい。
岩本)そうしたものが日本にまで伝わっていたっていうのは、やはりシルクロードを通って西域の文化が中国に伝わっていたからこそですし、またその琵琶の装飾として、ペルシャ人がラクダに乗って琵琶を演奏してるところが装飾で施されてるんですけども、そうした点からもシルクロードの影響っていうのを感じられるんじゃないかと思います。
※番組のトーク部分を、ラジコなどのポッドキャストでお楽しみいただけるようになりました!ぜひお聞きください。
[ Playlist ]
The Beatles – Yellow Submarine
Charlotte Gainsbourg – In The End
Nicole Willis & The Soul Investigators – One In A Million
Selected By Haruhiko Ohno