今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、4月に発足したばかりの愛媛大学先端研究院院長の入船徹男さん。先端研究院は、学内にある地球深部ダイナミクス研究センター、沿岸環境科学研究センター、プロテオサイエンスセンター、アジア古代産業考古学研究センターの5つを統括する独立部局として作られたものですが、このうち3つのセンターが文科省の共同利用・共同研究拠点に認定されていて、同じ大学内で3つのセンターが認定されているのは珍しいそうです。今回は、地球深部ダイナミクス研究センター前センター長もつとめられた入船さんに、「みかんの皮にも及ばない」「日本沈没」「鉛筆からダイヤモンド」の3つのキーワードで、最新の研究や2025年に松山市で開催予定の「第29回高圧力科学と技術に関する国際会議」などについて、わかりやすくお話頂きました。


佐伯)このマントルというところは、どういったものでできてるんですか?

入船)マントルはですね、まあいわゆる岩石なんですけれども、特にその岩石を構成する綺麗な鉱物、名前で言うとペリドットあるいはオリビンとも言うんですけどね、緑色の宝石です。そのほかガーネット、まあ桜石ですね。そういった宝石からできてるんですね、ダイヤモンドもありますし。

佐伯)そうなんですね。それは体積で言うと7~8割を占めてるんですか?

入船)もうマントルのほとんどが宝石です。

佐伯)えー!宝箱みたいな…

入船)そうですね、ちょうど宝石箱だと言ってるんですけど。

佐伯)はい。

入船)マントルは宝石ですね。

佐伯)で、その中の核は?

入船)核はですね、主に鉄ですね。鉄でできてるんですけども、鉄の中に少し、すごく貴重な金属、例えば金だとかプラチナそういったものも混じってるんですね。

佐伯)なんか地球を掘っていったらめちゃくちゃ宝の山という感じがしますけれども…

入船)そうですね、マントルは宝石箱で、核は貴金属の場所ですね。そういう意味では地球の中は宝の山であると。

佐伯)ですね!こういう地球の内部の様子って、どうやって探るんですか?

入船)はい。一つには、大きな地震が起こると地震の波が伝わって、これは地球の反対側まで伝わることもあるんですが、地球の中に伝わる波もあって、それをどっかで反射してきたりだとか屈折したりだとかそういった要素をですね、世界各国の地震計で捉えると、それを数値処理するとですね、どこでどういったものがあるかと、どういった構造があるかということがわかるんですね。それが一つの方法で、ただこれだと構造はわかるんですけども、どういったものでできているかというのは分からないんですね。そこで我々はですね、いろんな証拠からこういったものがあるだろう、さっきのカンラン石(ペリドット)だとかガーネットだとかそういったもの。これに圧力、温度をかけていくとどういうふうに変化していって、それが地球の構造とどういうふうに一致するか、あるいは特性とどう一致するか、ういったことを調べて、じゃあこの深さにはこういったものがあるということを実験的に、あるいは数値計算も利用してですね、それで決めているんですね。まあ物質化学的に地球の中を研究していると。この両方を合わせて地球の中が分かってきているということなんですね。

佐伯)そうですか。ではその現在研究されていることっていうのは、私たちの暮らしにはどう関わってくるんでしょうか?

入船)そうですね、直接暮らしに関わるかどうかはちょっと微妙なところもあるんですが、一つにはですね、先ほどの地震の発生ですけど、これ比較的浅い地震…深さが普通は数キロだとか数十キロ、そのぐらいで起こるんですが、これはほぼメカニズムとしては断層運動に伴ってエネルギーが出てくる、そういうものだという理解はもう確立されているんですね。ところが地震の中には深さ数百キロ、最大で700キロ近いところで起こる地震もあるんですね。これ深発地震と呼ばれていますけれども、これは実は起こるメカニズムがよくわからないんですね。これについては我々実験でですね、こういった数百キロに対応する20万気圧という、そういった圧力を出して、そのもとで実際に地震、ミニ地震を起こしてですね、その地震の起こる様子を探ってですね、そのメカニズムも明らかにしつつあります。

佐伯)それがわかることで、何か防災にもつながるということですか?

入船)そうですね、深い地震=深発地震っていうのは、深いところで起こるのでなかなかその表面までは伝わらなくてですね、そんなに大きな被害はないんですけど、たまにですね、死者を出すような地震が起こることもあります。数年前に日本の近くでも起こってですね、死者は出なかったんですけどかなり大きく揺れたことがあります。その原因だとか、起こる場所だとか、どういった時期に起こるかとそういったこと、直前の予知までは難しいと思いますが、そういうメカニズムがわかればですね、どういった間隔で起こるだとか、どういった場所に起こりそうだとか、そういったことはわかってくるようになるかなと思います。

 

 


[ Playlist ]
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Selected By Haruhiko Ohno


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