今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、毛利家史料調査会会長で宇和島市文化財保護審議会の委員でもいらっしゃる宮本春樹さん。宇和島市三間に残っている「旧庄屋 毛利家」と、そこに残されている史料から読み取れることについてお話を伺いました。江戸時代に建てられた旧毛利家は「角屋造り」という珍しい造りで、宇和島市の指定有形文化財に指定されています。今は地域の農村文化を伝えるイベントの舞台になるなど、地域の交流の場としても大切な存在だという旧庄屋 毛利家。今回は「補修費用1億2000万円」「結婚式は夜に」「古民家を旅する」という3つのキーワードで紐解いて頂きました。


佐伯)つづいて二つ目のキーワードです。「結婚式は夜に」ということなんですが、これはどういうことなんでしょうか?

宮本)江戸時代から、まあ明治、大正のころまでは結婚式は夜に行うのが当たり前ということやったんですね。

佐伯)そうでしたか。

宮本)結婚式が昼間に行われるようになったのは戦後、生活改善運動というのがあって、公民館結婚式というのが奨励された。そういうことになって、結婚式の形態が変わってきたんですけども…

佐伯)そんな最近のことなんですね。

宮本)昔は夜、今の結婚式を行って、翌日が披露宴。いろんな親しい友人とか親族を集めて。 そして3日目が皆で、お手伝いした人たちや近所の人たちが集まって、最後の片付けをしながら気楽な宴会をするという、3日連続が当たり前で。私の叔母たちも「結婚式3日連続やったよ」とは言われますね。

佐伯)へ~、そうなんですか。でも今も変わらず、というか今よりももっと時間をかけて、結婚っていうものを祝う行事があったんですね。だから「結婚式は夜に」。じゃあ、この毛利家でも夜に結婚式が行われてたんでしょうかね。

宮本)当主はだいたい日記を書いておりまして、自分の結婚式の日の日記もありますので。

佐伯)あら!どんな風に書かれてるんですか?

宮本) 7代が大正13年に結婚式をあげまして、その日記を読むと「夜8時に花嫁行列が門の下に到着」ということを書いていますね。

佐伯)お嫁さんも行列でやってくるわけですね。

宮本)で、夜9時から結婚式。親族一同顔合わせをして、お酒を飲んでと。それから12時まで結婚式。

佐伯)4時間、結婚式!

宮本)途中で青年団がお祝いに来るので、その時に…これも慣習でお酒や料理を振る舞うということをするわけですね。

佐伯)これが、初日の夜。

宮本)はい。2日目が、現在の披露宴。今は一緒にしますけどね。

佐伯)ええ、そうですね。

宮本)そして3日目に片付けをして、そして7つ目と言いまして、1週間目に7つ目。

佐伯)えっ?

宮本)7つ目には、お嫁さんは実家に戻るんですよ。

佐伯)あ、そうなんですか!?

宮本)新郎を連れて、2人で嫁さんの実家にご挨拶をするということになっているわけです。

佐伯)こういうものも全部記録に残っているんですね。

宮本)はい、結婚式の記録だけで3代分ぐらいは残ってますので。

佐伯)あぁ、そうですか。

宮本)江戸時代の結婚式も大体残ってますので。

佐伯)江戸時代もやっぱりそういう行列でお嫁さんがやってきてみたいな、大まかな形は同じだったんですか?

宮本)さすがに簡素ですね。

佐伯)そうなんですか。

宮本)料理記録を読んでみると、「ああ、これぐらいか」というね。

佐伯)たとえば?

宮本)まあ品数が少ないというかね。7代の結婚式の時はもう献立まで綺麗に日記に全部記載をしているんですけど、まあ豪華ですね。結納からちゃんと鯛が届くというようなね。大きな鯛が届くとか。地主だからね、やっぱりたくさん物が届いているし料理もすごいですね。

佐伯)そうですか。7代っていうと…大正時代?

宮本)大正13年の結婚ですね。

佐伯)そのころは豪華な結婚式がなされていたことがわかるんですね。

 

 


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Selected By Haruhiko Ohno


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