今週、坂の上に訪ねてきてくださったのは、内子町の市民団体「風雅」の西岡眞理子さんと福岡幸子さん。お二人に、日本のビール業界に貢献した大日本ビール社長で、戦後に通産大臣として尽力した高橋龍太郎についてお話を伺いました。「風雅」は、高橋龍太郎の生家・高橋邸の運営を行っています。この建物のうち、母屋・離れ・門・石垣と土塀・井戸が今年春、国の登録有形文化財に指定されることになっているそうですが、「風雅」の皆さんの管理運営により、なんと宿泊することもできるということで、春以降あらためて注目を集めそうです。今回は、「日本人初、ビールの本場ドイツへ」「プロ野球史上で唯一、個人名が入っていた球団」「ドイツからの客人」という3つのキーワードで、高橋龍太郎について深掘りして頂きました。


佐伯)福岡さん、この2つめのキーワードどういう意味なんですか?

福岡)実は龍太郎は、企業家としてではなく一個人の立場で、チームの設立に資材を投じていました。それが、昭和29年から3年間存在した「高橋ユニオンズ」なんです。

佐伯)あの、今ね、企業の名前が色々ついてますよね、ほとんどの球団には。で、企業じゃなくて個人で、っていうことなんですか。

福岡)そうなんですよ。

佐伯)は~!それ、どういう経緯からですか?

福岡)当時パリーグは7 球団から8球団になるっていう…、結局偶数じゃないと効率が悪いということで1つ増やそうかという話になって、その話が色々あったのですけれども、プロ野球球団を持つのはなかなか膨大な運営費もかかりますしね、それで手を挙げる企業がなかったそうなんですけども、野球好きの高橋は漢気もあって依頼を断りきれなかったそうなんです。

佐伯)いやいや(笑)、ほかの企業がお金がすごくかかるからっていうので断っていた依頼を、「じゃあ、ワシが」っていう感じで引き受けちゃったんですか!

福岡)そうなんですよ。

佐伯)すごいですね。

福岡)だから、親会社なしの個人の名前を冠したプロ球団が生まれたんですよね。

佐伯)これが高橋ユニオンズ。

福岡)そうなんです、はい。高橋龍太郎79歳の折です。

佐伯)うわ~、すごい!なんか豪気な人ですね。で、自分の苗字がついてるチーム、このチームの名前はどんな思いが込められてるんですか?

福岡)高橋が経営していた大日本ビールの主力商品のユニオンビールからという説と、団結するっていう意味のユニオンから取ったという説があります。

佐伯)そうなんですね。その肝心のチームの成績なんですが、これはどうだったんでしょう?

福岡)当初は他球団から一流選手を呼び寄せて供出してもらうとかいう申し合わせがあったそうなんですけど、実際には戦力外の選手だったり新人ばかりだったそうなんです。

佐伯)ということは…

福岡)ということは、です(笑)。成績は低迷し、資金難が続いて、龍太郎は自己資金を投入するなどして工面をしたそうです。

佐伯)まあ!じゃあ苦労されたんですね。

福岡)はい。一年目は6位という成績だったんですけれども、2年目からはトンボ鉛筆製作所、今のトンボ鉛筆さんが業務提携をしてくれて、トンボユニオンズと改称されました。

佐伯)そうなんですね、はい。

福岡)しかし残念ながら改善の見込みなく、1年で提携は解消されました。成績が最下位でした。

佐伯)最下位で…。この提携が、トンボさんとは解消されてどうなるんです?

福岡)また高橋ユニオンズに戻りました。

佐伯)チームも紆余曲折あったんですね。

福岡)そうですね。

佐伯)そして?

福岡)その後は大映スターズに吸収合併で解散ということになりました。

佐伯)っていうことは、チームが存在していたのが…3年間?

福岡)3年間だけです、はい。

佐伯)そうなんですね、なんか伝説のチームですね。でも、個人が球団を持ってたっていうのはすごいことですよね。

福岡)そうですよね。で、後に「プロ野球ニュース」のキャスターになられた佐々木信也…

佐伯)はいはい、覚えてます。

福岡)が入団されてたので…

佐伯)え、高橋ユニオンズに?

福岡)はい、そうなんです。

佐伯)そうなんですね!

福岡)新人だったんですけれども、弱小チームのために出場されて、いっぱい打たれて…

佐伯)打たれて!?

福岡)打たれてっていうのは180安打をしたほうです。

佐伯)あ、したほうですね、ビックリした(笑)

福岡)ベストナイン賞を獲得しました。

佐伯)そんな活躍なさった方だったんですね、あの方。へ~。

 

 


[ Playlist ]
Emilie-Claire Barlow – What a Little Moonlight Can Do
Smashing Pumpkins – Beautiful
Sonya Kitchell – I’d Love You
Roy Ayers – Time And Space
Sharon Van Etten – One Day

Selected By Haruhiko Ohno


この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く