今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、マジシャンのりょうさん。新居浜出身で愛媛を舞台に活動されていて、演劇とマジック、おとぎ話を合わせた劇団「おとぎと魔法の劇場」を主宰。「タネや仕掛けはエジプトから」「マジックとハト」「マジックの可能性」というキーワードで、私たちにも身近なマジックの歴史から未来について、熱く語っていただきました。
佐伯)さあ続いて3つ目のキーワードです。「マジックの可能性」ということなんですけども、これまで歴史的なもの、世界そして日本での歩みを振り返ってきましたけれども、りょうさんはマジックの可能性、ここからの未来ですよね、どんな風に思われてるんですか?
りょう)マジックって今まで話した通り、けっこう歴史深いものになってるんですけど、なんかこういう芸能の中で型が決まってないって、たぶん唯一ぐらいなんじゃないかなって言われてるんですよね。だいたいの芸事って長い年月で型が決まっていくんですよ。和妻とか手妻とかは、けっこう決まってるんですよね、型が。
佐伯)日本のいわゆる伝統的なマジック。
りょう)はい、それは型があるんですけど、マジック自体には型がないんですよね。これって多分…あえて言うと公表もされなかったし、世に出したらダメだろみたいな立ち位置でずっと居続けた結果、型がないまま、こうやってきてると。だからマジックはね、これはひいき目になりますけど、他の芸能に比べてむちゃくちゃ可能性があると僕は思ってるんですね、型が決まってない分。
佐伯)自由っていう。
りょう)そうですね。だから自由なままで今まで続いてるっていうのがすごいあるわけです。その流れを汲んでじゃないですけど、僕の中では教育現場にとにかくこのマジックをうまく組み込めないかなと思って、最初の方に話した「おとぎと魔法の劇場」っていう、四国の子供たちに 舞台体験を届けるっていうテーマで活動してる劇団があって、それを今後やっていきたいと。最初に僕がプロになりたくないって思った理由が、「盛り上手げてくれ」っていうニーズ。世の中の「盛り上げてくれ」っていうニーズだけで(プロのマジックが)やってきてるわけですよね。それが嫌で、やりたくないと。けっこうパフォーマンスとか、コンテストに出ててもそうですけど、なんかいろんな思いが…マジックに対する思いとか表現したい思いとかたくさんあるわけですよ、パフォーマー側は。それは、ニーズにマッチしないわけですよ、市場のニーズに。それはいらないわけですよ、たとえば何か会をされるとして僕に何か依頼するじゃないですか、すると最初はやっぱ「盛上げてくれ」みたいになるじゃないですか。「マジックで、なんかワーッと盛上げて頂いて!」みたいな。その中に深い思いみたいなのを乗せられると重くなるわけですね。
佐伯)あー、依頼主の方としては。
りょう)だから、世の中に今のところそういうニーズがあんまないっていうのを「作りたい」というのがあって、「おとぎと魔法の劇場」を作ったんですよね。これは単純にストーリーの中でマジックとかが度々登場するんですけど、なんとなく入れてるだけじゃなくて、マジックの内容自体がその時代背景だったり、主人公がどういう思いでそういうマジックを作ってこうなったのかとかっていうのも一応深く入ってるんですよ。そういう機会ってないわけですよ、普通にプロとして活動する中でそういうの、自主公演ぐらいじゃないとないわけですよね、そういうのが。そういうのをスタンダードにしていきたいと僕は割と思ってるんです。もちろん盛り上げニーズもそのままあってもいいと思うんですけど、それだと別にマジックじゃなくてもいいよね、みたいな。他の芸能でもいいよね、みたいな感じになってしまう。マジックが持ってる不思議な力とか、その考え方、構成とかが、よりそのストーリーを理解するための手助けになるのと、その思いがより伝わりやすくなるという感じで、マジックをもっともっと立ち位置を上げていきたい、社会的な価値を上げていきたいなと思ってますね。
[ Playlist ]
Edu Lobo – Upa Neguinho
Todd Rundgren – You Left Me Sore
Duffy – Delayed Devotion
Selected By Haruhiko Ohno