今週は、今年7月に坂の上のミュージアム総館長に就任されたばかりの菅康弘さんのインタビュー後編です。今治生まれ、松山出身の菅さんは、これまでNHKで大河ドラマや朝ドラの演出や制作統括を担当され、スペシャルドラマ「坂の上の雲」ではエグゼクティブプロデューサーを務められました。そんなドラマ作りでの様々なエピソードや、ミュージアム総館長としての想いなどを、「ドラマ『坂の上の雲』実現まで10年」「愛を伝える」「ミュージアムは知的好奇心の宝庫」というキーワードで語って頂きました!菅総館長の考えるミュージアムの在り方とは…
佐伯)私自身そうなんですが、小説の中の人物に、まず感情移入しました、そこで実は坂の上の雲ミュージアムを見て、色々な歴史の背景を知ったりだとか、その人物に関する本当の遺されているものが展示されていたりだとか、というところで刺激を受けて、今度また違う人に興味が出たりだとか、ちょっとその場面場面の捉え方が変わってきたりもしますよね。
菅)それね、正しい見方。
佐伯)正しい!
菅)正しい見方というか、僕、今度坂の上の雲ミュージアムの総館長っていうのをやらせて頂くことになって、その時に思ったのは、博物館とか美術館って…例えば美術館行ってピカソでもいいですよ、ムンクでもいいですよ、「叫び」とかでもいいんだけど、その絵を見た時に、その絵は「どういう絵なんだろう?」って考えるのは個人の自由なんですね。
佐伯)はい。
菅)絵を描いた人が「この絵はこういう絵です」っていうのはあんまり残ってないので。だからムンクの「叫び」を見て、「ああ…」って思う人もいれば、「おーっ!」って思う人もいるし、それは自由なんですね。で、そこからムンクっていう人とかピカソっていう人にすごく興味が出て、そしたら今すごく便利な時代でインターネットですごく調べられるので、「この人どういう人生を送った人なんだろう」とか、この絵を描いた時は何歳っていうのがわかるので、そうするとムンクの人生を調べると「こういうことがあった時に、この絵を書いたのか」とか、そういうのを調べていくのが実は本当は楽しいんじゃないかって僕は思っていて。だから坂の上のミュージアムでも、何か展示してあるものがあって、例えば手紙とかが展示してあったとしたら、その手紙を書いた人…子規が書いた手紙だとしたら「子規は、いつこれを書いたんだろう?」と。で、「なんでこれを書いたのかな」と。逆に今度「宛先の、受け取った人は、それを受け取ってどう思ったんだろう?」っていうことに興味が湧いて、どんどん調べて行って欲しいんですよ、実は。
佐伯)はいはい。
菅)「あ、こういうものがあるんですね、本物ですね、はい、わかりました」って言うんだと、全然面白くもなんともないので。そこから先、自分でどこに興味があるかは個人の勝手なので。だから機械みたいなものが例えば展示してあったとしたら、その機械にすごい興味を持って、その先エンジニアになって行っても構わないし、「その機械はどうやって作られたんだろう」とか、「なぜこの機械が要ったんだろう、この時代に?」っていうようなことを考えていくところの、なんかこう出発点っていうか起爆点というか。博物館とか美術館ってそういうことにならないといけないのではないかという風にすごく思っていて。だから就任式の時も言ったんですけど、僕が思う体感っていうのはそういうことで、疑問を持つ、興味を持つ、好奇心を持つ、みたいなものの起点になるみたいな展示とか、そういうことがこれから出来ていったらいいなと。まあやってくれるのは学芸員の皆さんですが(笑)。出来たらいいなってすごく思っていて、見に来る人たちもなんかすごくそういう興味を…「へえー」って言ってどんどん質問してもらってもいいですし。だから答えが全て完結して博物館の中にあってはいけないんですよ。
佐伯)あ~。
菅)と、僕は思うんです。それを見て、「あ、なんでだろう?」「なんでこんなもん作ったのかな」とかっていうような疑問を持ったら、どんどん自分で興味を持って調べてみてもいいし、それから坂の上の雲ミュージアムだったら、「え?」って言ってもう一回原作読んでみるとか、なんかそういうようなことのスタートポイントになれるようなことが出来るといいなってすごく思っています。
[ Playlist ]
Nicola Conte – The In Between
Emilie-Claire Barlow – What a Little Moonlight Can Do
Madeleine Peyroux – The Summer Wind
Prince – I Wanna Be Your Lover
native – everafter
Selected By Haruhiko Ohno