今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、今年7月に坂の上のミュージアム総館長に就任されたばかりの菅康弘さん。今治生まれ、松山出身の菅さんは、これまでNHKで大河ドラマや朝ドラの演出や制作統括を担当され、スペシャルドラマ「坂の上の雲」ではエグゼクティブプロデューサーを務められました。そんなドラマ作りでの様々なエピソードや、ミュージアム総館長としての想いなどを、「ドラマ『坂の上の雲』実現まで10年」「愛を伝える」「ミュージアムは知的好奇心の宝庫」というキーワードで語って頂きました!スペシャルドラマ「坂の上の雲」の撮影は、まさに何もかもスペシャルで…。
佐伯)アメリカの場面もイギリスで撮影したりだとか、あとマルタ共和国…地中海の島の中で旅順港の場面を撮ったりということで、ロケハン(※実際に撮影する前に、撮影で使用する場所を事前に下見すること)も大変じゃないですか、ロケ地探し。
菅)いちいち全部は行けないので、今はインターネットという立派な便利なものがありまして、色々行かなくても見ることができるし、それから実は日本にも外国にもフィルムコミッションさんがたくさんいて、「こういうような風景のところを探してるんですけど」っていうのを問い合わせすると、写真で「こんなとこウチにはありますよ」っていうのを送っていただけるので、それでちゃんと当たりをつけてから、闇雲に行くんじゃなくて下見に行って、「あ、ここ出来るな」っていうのでやっていくっていうような形ですね。
佐伯)そういう風にして作られていくんですね。
菅)それから、ドラマずっと撮ってるのでベテランの人たちがたくさんいて、「そういうんだったら、あそこにあるよ」っていうのが、知識の蓄積として残っているっていうのもあります。
佐伯)そうですか。その皆さんの中にアーカイブがあるわけですね。
菅)そう、「昔そんなの、ここで撮ったよ」っていうのがあるので。
佐伯)じゃあ何気なく見た場面、短いシーンでも、もう色んなところに行って実は撮ってるのが繋がってるとか。
菅)そうです、そうです。だから皆さん多分覚えていらっしゃると思いますけど、真之が、本木(雅弘)くんが初めて東京に出て行くっていうシーンなんですが、秋山家っていうのは福山市にあるオープンセットに作ったので、まあだから真之は福山を出発するわけですよ。それで、ちょっと歩いて行くと、皆さんご存知の内子の屋根付き橋が…
佐伯)はいはい!
菅)あそこを渡って。で、子どものころ走ってた田んぼの中を歩いて行きますけど、あの田んぼはね、今は合併してどっかの市になってるけど、撮った時は岡山の美星町っていうところが綺麗な田んぼがあったので、そこの中を歩いていきます。そして三津浜に到着しますが、三津浜のシーンは広島の厳島神社から、宮島の神社とは真裏の方向の海岸が三津浜になってます。
佐伯)え~、そうなんですか!
菅)それで、そっから船に乗って、ちょっとVTRみたいなのが出てきて、で列車に乗って新橋に。新橋は愛知県の明治村の機関車とホームに着いて、で真之が人にワーっとかって押されたりして、で新橋の駅の外に出てくるんですが、その新橋の駅の外っていうのは上海にあるオープンセットで作りました。
佐伯)明治村から今度は上海になってるわけですね。
菅)明治村で列車を降りて、外へ出てくると上海になってる。そこから、銀座・日本橋界隈を歩くのは、これはNHKの時代劇によく出てくる、つくばみらい市にある時代劇用のオープンセットがあるんですが、そこを通ります。それで好古さんが下宿している旗本のお屋敷に行くんですが、あの旗本のお屋敷の外見っていうのは福島県の会津にある武家屋敷っていうところをお借りして撮って。で、ばあやが出てきて「こっちです」って言って門をくぐって中に入ると、映画の撮影所のセットの中の小屋に行くと。
佐伯)え~っと…これ、何分ぐらいの場面ですか?
菅)これね、全部でね、1分半ぐらいなんですよ。
佐伯)1分半のために、いったい何都県?いやいや、海外も入ってますよね。
菅)はい、上海もありますから。で、撮るのに1年半ぐらいかかってるんです、全部撮り終わるのにね。だからね、いちばん大変なのは本木さんですよ。
佐伯)そうですよね!
菅)これ、俳優さんね、「さあ、これから東京へ行くぞ!」っていうテンションを、バラバラバラバラ1年半ずっと続けないといけないので、これは大変です。役者さんってスゴイなあって思って。
佐伯)本当に。しかも順番通り撮るわけじゃないでしょう?
菅)そうです。
佐伯)全然バラバラで撮りますもんね。ちょっと考えられない…
菅)だから「このシーン撮ります」っていう時に、もし撮ったやつがあれば「あ、アレの続き」とか「アレの手前」とか思ってやられてるのかどうか、本木さんに聞いたことはないですが、まあ 俳優さん大変だなと思います。でも1分半でそれだけ行くかって感じなんですが、真之さんが全く初めて東京に出ていくっていうか、その「坂の上の雲」のスタートのスタートみたいな、真之の人生のっていうところなので、すごくこう…ちゃんと、ちゃんと撮ろうって言って作っていきましたけど。
[ Playlist ]
Marcos Valle – Flamengo Ate Morrer
Zaz – Le Long De La Route
Fairground Attraction – The Moon Is Mine
Roos Jonker – Man In The Middle
Jane Monheit – No Tomorrow (Acaso)
Selected By Haruhiko Ohno