今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、伊予鉄グループ広報室の山下遥香さん。今週はちょうど「松山野球拳おどり」が行われます。愛媛県人にはおなじみの「野球拳おどり」、その生みの親を御存知でしょうか?その人こそ、前田伍健。じつは、実業団野球部で副監督を務めるなど伊予鉄と深い縁があるんです。コント55号がテレビ番組で披露し人気コーナーとなったため、じゃんけんで負けたほうが服を脱ぐお座敷芸というイメージが全国的にはまだまだ根強い「野球拳」ですが、もともとは選手を思う伍健の思いが込められた踊りだった!その誕生秘話を含め、「伊予鉄道の合併」「負けた悔しさ、その名誉挽回に」「全国川柳会の七賢人」というキーワードで、前田伍健を深掘りしました。


佐伯)2つ目のキーワードです、「負けた悔しさ、その名誉挽回に」ということなんですが、これがどういうことなのか、ここからが野球拳誕生のエピソードに入っていくわけですね。

山下)そうですね。高松で実業団野球の大会がありまして、ここが野球拳誕生のきっかけになるんです。

佐伯)詳しく教えて下さい!

山下)大正13年の秋に高松市の屋島グラウンドが完成して、その記念として屋島グラウンドで近県の実業団の親睦野球大会が開催され、その大会に伊予鉄道電気野球部も参加いたしました。で、前田は、その伊予鉄チームの副監督を務めておりました。

佐伯)当時の伊予鉄電気の野球部っていうのは強さで言うとどんな感じだったんですか?

山下)強豪チームだったように聞いています。

佐伯)ということは、その大会でもその成果を期待されて…で、結果は?

山下)残念ながら敗戦してしまいました。

佐伯)ありゃ。

山下)伊予鉄チームは8対0で負けてしまいまして。

佐伯)まあまあ大差ですね。

山下)そうなんです。で、その夜に高松市内の旅館で親睦会が開かれまして、宴会は隠し芸の競い合いになりました。

佐伯)そうなんですね(笑)。

山下)で、負けた試合の名誉挽回で伍健が即興で作詞作曲した踊りを、選手たちにコーチして踊らせたものが野球拳踊りになります。

佐伯)そうなんですか!

山下)そうなんです。

佐伯)野球の試合には敗れちゃったけど、名誉挽回のために夜は頑張るみたいな!

山下)そうなんです(笑)

佐伯)しかも即興で出来たものなんですか。でも何かベースになったものってあったんでしょうか。

山下) ええ、「元禄花見踊り」をアレンジしたものになっております。

佐伯)「元禄花見踊り」?

山下)当時から川柳作家でもあった伍健が「元禄花見踊り」の曲をアレンジして即興で歌を作り、別室に部員を集めて振り付けを教えて、伍健の歌と三味線に合わせて野球拳踊りを披露しました。

佐伯)は~。その野球部の方々も急ごしらえで、「かくし芸は勝つぞ!」みたいな感じだったんでしょうか。で、その場というのが…

山下)大盛り上がり!(笑)

佐伯)そういうことですか(笑)

山下)そうなんです。大会では負けてしまったんですけれども、夜の部では伊予鉄チームの大勝利となりました。

佐伯)これ写真ですか、当時の?

山下)そうですね。

佐伯)え~、なんか皆ユニフォーム姿のまま踊ってる!

山下)そうなんです。これが大いにウケて。

佐伯)いま踊られている野球拳踊りもベースはとってもシンプルなので、パッと教えてもパッと皆できるような感じだから、そこもまた良かったのかもしれませんね。

山下)そうですね、覚えやすさが良かったのかもしれないですね。

佐伯)見た人もすぐ真似できるみたいな。

山下)はい。

佐伯)で、「元禄花見踊り」というのはどんな踊りだったんでしょうか?

山下)「元禄花見踊り」というのは、日本舞踊で人気の長唄でポピュラーの作品の一つになっておりまして、元禄時代を舞台に武士、奴、町人、女性など様々な身分の人たちが集まって踊るという豪華な設定となっております。絵巻物のような絢爛豪華な世界を表しているそうです。

佐伯)元禄時代っていうのがだいたい江戸時代の中でも文化が花開いたって言われている、 すごく賑やかな時代という印象がありますけれども、そんな時代の「花見踊り」ですから、お花見の席で踊ってるっていうようなイメージなんですかね。

山下)そうですね、当時の花見は一家総出の一大イベントで、特に女性は花見に合わせて 晴れ着を用意する方も多くて、その派手さ、豪華さを競ったものと言われています。

佐伯)そうなんだ。じゃ、その「元禄花見踊り」を思い出して、前田伍健はどんな思いで「野球拳踊り」を作ったんでしょうね?

山下) 前田は応援歌として…

佐伯)応援歌?

山下)試合に負けて意気消沈していた選手たちを鼓舞して、その場を盛り上げる応援歌としての思いを込めたのではないかと思っております。

佐伯)あ~、試合は強豪チームなのに敗れてしまって、ちょっと皆チーンとなってますよね。そのままの気分で夜の部に行くわけにもいかんぞ、というところ、皆を鼓舞するような思いで。そういう踊りなんだ!

 

 


[ Playlist ]
Kings Of Convenience – Gold In The Air Of Summer
Nostalgia 77 – Beautiful Lie
Sinne Eeg – Talking To Myself
Swing Out Sister – Heaven Only Knows
Roy Ayers Ubiquity - Sweet Tears
Phoenix – Love For Granted

Selected By Haruhiko Ohno


この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く