今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、宇和島市在住の画家・大竹伸朗さん。5月3日に県美術館で始まった「大竹伸朗展」を中心に、数々の作品に込められた大竹さんの想いを伺いました。東京出身で、現在は宇和島を制作拠点に世界的な活動を続ける大竹さん。「盟友 坂本龍一」「愛媛初公開の原画」「7つのテーマ」をキーワードに、愛媛の番組ならではの切り口でその魅力を語って頂きました!訥々とした大竹さんの語り口に引き込まれた1時間。半世紀近くにわたる大竹さんの足跡を約500点の作品で綴る「大竹伸朗展」では、ライフワークでもある70冊のスクラップブックが展示されていますが、これについて大竹さんは…。(「大竹伸朗展」は7月2日(日)まで、愛媛県美術館で開催)


大竹)今の若い子って、それこそスマホでゲームしたり映画見たり、僕なんかよりも画像を見る情報量って半端なく多いじゃないですか。

佐伯)全部手元に集まってきますもんね。

大竹)うん。だから「スクラップ」の若い人の反応を見るとね、Twitterとか見ると「その情報量が異常だ」と、そういうようなのがすごい多いんですよ。だけど俺からすると、スクラップブックの70 何冊の見開きよりも、君たちの見てる日々の映像情報の方がはるかに多いだろうと思ったのね。なんでそんな「情報量」って言葉が出るのかが不思議だったんだけども、僕が思ったのは、要するにあそこに貼ってあるものっていうのは「現物」が貼ってあるわけですよ。例えば21の時に僕がロンドンで拾ったチューインガムの包み紙とか、アフリカで拾ったチケットとか。それがなんか指先で糊で貼ってあるっていうかね。だからそのいわゆるデジタルのフラットではないっていうか情報ではないんですよね。だからそのなんかこう…その情報画像に慣れてる今の若い世代っていうのは、その貼り込んだ微妙な厚みとか、なんだかわからない現物、オリジナルの発する、その言葉にならない画像以外の情報量っていうのをやっぱ逆にこう異常に感知するのかなっていうかね。

佐伯)それ、面白いですね。

大竹)だから僕なんかの世代だと当たり前のことが、今の若い人にとっては違う風に取り込んでるんじゃないかなと思ったのね。それがなんか若い人たちはこの「情報量」っていう言葉に置き換えて発信してんのかなっていうかね。

佐伯)ああ、たしかに現物だと…私がすごく気に入ったのが紙マッチのパッケージが並んでるところとかすごく素敵って思ったんですけど、じゃあこれどこの国のなのかなとか、どんなお店のだったのかなとか、いろんなことがそこからこう広がっていくじゃないですか。

大竹)そうですよね。だからああいったものっていうのはやっぱり全て人の指に触れたもんですよね。

佐伯)はい。

大竹)なんかね、だからそこがなんかこう…今だとデジタルのSNSで世界中のあらゆる画像がやっぱりね、集めようと思えば集まるけど、それってやっぱりこの…いわゆるオリジナルじゃないんですよね。

佐伯)ああ。

大竹)だからやっぱり展覧会って面白いのは、世界で一点のものが500点集まると、そこになんかこう相乗効果じゃないけど…なんかね、やっぱりデジタルにはないその相乗効果が会場に立ち上がるって言うかね。だから、まぁとにかく…なんていうかな、スマホやパソコンでチェックするだけじゃなくて、会場に来ていただきたいですよね。だからそのアートとか芸術だとかっていうのはもう取っ払って、世界に一点しかないものが500点ある中に身を置いていただければ、まあそういったことをアートだ芸術だを超えて、何かはやっぱそれぞれの人の記憶を揺さぶるものは絶対あると思うんですよ。

 

 


[ Playlist ]
Mark Murphy – Why Don’t You Do Right
Nick Drake – Place To Be
Bibio – C’est La Vie

Selected By Haruhiko Ohno


この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く