今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、松山兎月庵文化歴史館の館長で美術歴史家の小椋浩介さん。じつは小椋さん、奥道後壱湯の守のリニューアルにあたり、総合プロデュースを担当されました。大きなポイントは「ブックホテル」として「湯の山図書館」を設けたこと。郷土の偉人や歴史をはじめ愛媛ゆかりの図書が、季節に合わせて入れ替えながら常時4000冊ほど公開されています。「本物」にこだわる小椋さんに伺うお話のキーワードは、「子規より人気?河東碧梧桐」「郷土の文豪たち」「地場産業の裏側」の3つ。図書からみる愛媛を紐解いて頂きました。
佐伯)続いては 2つ目のキーワード「郷土の文豪たち」についてです。これは、郷土の文豪たちの図書も色々と揃ってますよっていうことですか?
小椋)そうですね、明治時代、古くは江戸時代からあるんですけど、江戸時代の場合は原本というよりも再版本ということになります。最近では大江健三郎先生がお亡くなりになったことで…敢えて「追悼 大江健三郎」とは書いてないんですね。さりげなく…
佐伯)さりげなく。
小椋)大江健三郎の本を正面に、ほぼ出版物は並べております。
佐伯)大江健三郎さんの本というのも、私小説のようなものから様々な思想的なものまで含まれていて、ちょっと私も高校生の時に1冊読もうと思ってですね、でも今覚えているのが、水飴をおばあさんがずっと掻き混ぜているっていう場面だけ(笑)あれが何という本だったか…。様々な本が揃っているということで、その中の1冊にあるかもしれませんね(笑)
小椋)あります(笑)。
佐伯)ちょっと大江文学っていうと難しいんじゃないかな、なんて思ってる方も多いと思うんですが、実際のところ小椋さん、どうなんでしょう?
小椋)これはですね、司馬遼太郎の「坂の上の雲」なんかもそうなんですけど、1回目読んだ時と2回目読んだ時と3回目読んだ時では全然変わるんですね。
佐伯)ほ~。
小椋)大江健三郎の場合は1回目で挫折の方が多いんで(笑)
佐伯)あ~、すいません(笑)
小椋)でも1ページでいいから、3度読み直していただいたら、大江健三郎の魅力というのは出てくると思います。
佐伯)へ~。
小椋)だから、映画とかそういうもんじゃないんで映像がないんで、やっぱり文字を読んで、それを知るというのも結構難しいんですね。でも何度も読んでると、何を言ってるのかよく分かってくるんですね。
佐伯)何度も読むことが肝要なんですね。
小椋)そうです、そうです(笑)
佐伯)そんな中でも初心者におすすめの一冊っていうのはありますか?
小椋)えーっとね、これは初版を置いてるんですけど「万延元年のフットボール」。
佐伯)あ、聞いたことあります、タイトル。
小椋)これは赤い装丁なんですけどね。これ、もしリスナーの方がタイミングが合えば、湯の山図書館で出会えると思うんですけど、ぜひ読んでいただきたい本です。
佐伯)そうですか。書店でね、大江さんが今年亡くなられたということで特集を組んでいたりもしましたけれども、初版本っていうのはね、そんなに手に入るというか見られるものではないでしょうから…
小椋)そうですね、一冊、大江健三郎さんが自身でサインをしている本もあるんですね。それらは兎月庵のほうで保管させていただいております。
[ Playlist ]
Erin Bode – Wise Man
Niteflyte – If You Want It
Booker T – Watch You Sleeping featuring Kori Withers
Selected By Haruhiko Ohno