今週は、「坂の上の雲ミュージアム」からの生放送。学芸員の西松陽介さんをゲストに迎えて、「真之と子規の友情」をテーマにしたお話を伺いました。幕末の松山に1歳違いで誕生した秋山真之と正岡子規。後に海軍と文芸界という全く異なる分野でそれぞれの才能を開花させる二人のふれあいや絆について、「学生時代のふたり」「それぞれの人生へ」「遠くとて五十歩百歩小世界」という3つのキーワードで紐解いていきました。さらに、来週開催される「秋山真之祭2023」について、広報担当の清水綾乃さんにご紹介頂きました。


佐伯)上京後、二人はどんな学生生活を送っていたんでしょうか?

西松)はい、真之と子規は、少し時期は異なるんですけれども明治16年にそれぞれ上京をしています。子規が一足先に翌年、明治17年にですね、東京大学予備門に入学しておりまして、翌18年には真之も当時難関とされていたこの東京大学予備門に入学しています。子規はですね、入学をしたんですけれどもその年の1年目の試験に残念ながら落第してしまいまして、結局ですね、真之とは同級生という形になり、二人は親しく交流をしていくことになります。

佐伯)そうそう、先に子規さんが上京していたのを羨ましく思っていた真之が、自身も東京に行けるってなった時に本当に喜ぶ姿っていうのがドラマでも印象的に描かれてましたよね。

西松)そうですね、非常に印象的でしたね。

佐伯)はい。さて、その二人なんですが、東京大学予備門の仲の良かった友人たちとグループを作って色々と交流をしていたということなんですが…

西松)はい、子規と真之はですね、自分たち二人でもよく仲良く行動してるんですが、それ以外にも仲の良かった友人だった人とですね、一緒になって「七変人」というグループを作りまして、お互いを批評しあったりスポーツや遊びなど色々とですね、そういったグループで競い合いをしていたようです。

佐伯)「七変人」と自ら名乗っているということなんですね。

西松)そうですね。若い時のちょっとふざけた感じかなと、そういう要素も少しあるのかなと思うんですけれども。

佐伯)七人の変わった人間が集まってるぞっていう(笑)

西松)そう自分たちで言ってるということですね。このですね、七変人がそういったそれぞれを批評しあったものをまとめた資料に「七変人評論」という資料がございまして、この資料をですね、現在開催しております第16回企画展で展示させて頂いております。この資料ですね、彼らのグループの活動の様子を記録した大変面白い資料になっています。

佐伯)どんなことが記録されてるんでしょうか?

西松)はい、ここにですね、ちょっと手元に「七変人評論」の資料の画像をですね、ちょっと一部コピーをしてお持ちしてるんですけれども、その「七変人評論」の中に表が記されているところを持ってきております。この表を見て頂きたいんですけれども、正岡子規とですね、秋山真之、子規は本名で常規と書いていますが隣同士に記録されています。

佐伯)そうですね。確かに七人揃ってます。

西松)このですね、いろんな所いろんな事を評価して、それぞれに評価しあってそれを点数化をですね…

佐伯)あ、これ通知表、成績表みたいになってるわけですね。

西松)そうですね。例えばですね、この上から4段目ぐらいのところですね、見ていただきましたら「才力」という…才能の力といいますか、「才力」という風に書いてあるところがございまして、子規・真之ともに頭の良さといいますか、才能といいますか、そういう項目で書いてあるところが二人ともとても高い点数がつけられています。

佐伯)この「才力」のところが、子規さんが…これ70ですか?

西松)これはですね、90ですね。

佐伯)90!すごい。で、真之さんが85。これ百点満点でってことですよね?

西松)そうですね百点満点で評価をしている中で、子規が90、真之が85点。

佐伯)じゃあ仲間内でも「かなりこいつらは能力高いぞ」っていう風にみなされていたということですか。

西松)そうですね。周りからもやっぱり一目置かれると言いますか、非常に力があるなあという風に見られていたと言えると思います。

佐伯)他の項目が「勇気」とか「色欲」とか(笑)、あと「勉強」ともう一つ、これ何て書いてあるんですか?

西松)これは「負け惜しみ」っていうふうに…

佐伯)「負け惜しみ」!へ~。

西松)「負け惜しみ」って書いている項目が一番下のところに。

佐伯)なんかいろいろあるんですね。

石松)いろんな所で評価し合っていますね。

佐伯)ちなみにこの七人っていうのは…子規さんと真之さんは松山出身ですけど、他の方はご出身はいろんな所ってことですか?

西松)そうです。いろいろなところから集まっている友人達と評価をしあってるんですけれども、この一番資料の端のところに名前が出てきております「清水則遠(しみずのりとお)」というふうに読むんですけれども、この人物は真之と子規と同じく松山出身の人物になっています。

佐伯)あ、松山の方とも仲良くつるんでたんですね。

西松)そうですね、二人と同じく東京大学予備門に入学をしている人物で、親しく交流したということですね。

佐伯)ちなみにさっきの「才力」の項目が、この清水則遠さんは70。

西松)そうですね、70点。

佐伯)だから子規さんや真之さんに比べるとちょっと…そうでもないっていうか…(笑)

西松)そうですね、やや低めということですかね。

佐伯)他には…「才力」という項目とはまた別に「勉強」っていう項目があるでしょう?これを見るとあまり高くないんですよね。「才力」は高かった子規さんですが「勉強」は50。

西松)そうですね、これ「勉強」ということですので、勉強への姿勢とかですね、そういった意味合いかなあと思うんですけれども、真之が60点、子規が50点と。

佐伯)じゃあ取り組む姿勢としては、あまり真面目じゃなかったってことですか(笑)

西松)そうですね、仲間内ではややそういう風に思われている。なので二人とも「才能はあるけど勉強はあまり好きではない」という風に周りから見られていたということができると思います。

佐伯)あれ、ちょっと待ってください。これ、さっき同郷だと言った清水則遠は「勉強」なんか30じゃないですか、これ。

西松)そうですね、まああんまり…

佐伯)そうとう不真面目(笑)

西松)勉強もそんなに…

佐伯)え~そうなんですか(笑)。あとは最後の項目、「負け惜しみ」っておっしゃいましたけど、これなんか清水則遠さん「0」ですよ。

西松)そうですね(笑)。例えば秋山真之は80点、正岡子規は50点。全体の中でも真之は高めで、子規はやや低めという風な評価になっていますけれど、清水則遠は0点ということですので、ほとんど負け惜しみがなかったと言いますか…

佐伯)じゃあもう全くマイペースという。

西松)そうですね、まあそういう風にも見えるかなというところですね。

佐伯)一方の真之さんは相当負けず嫌いっていうことですか?

西松)そうですね、まあ80点ですので、全体の中で見ても上から2番目なので、その七人の中では負けず嫌いという評価だったのかなと思います。

佐伯)その間にいるのが子規さんで、そこそこ負けず嫌いでもあり…という50点。なんか面白いですね。

西松)そうですね。今でも、例えば私達も学生時代ってこういうことって、何かお互いに評価し合うことってよくやってたなという風に思うんですけど…

佐伯)あ、そうなんですか。

西松)学生時代ですね(笑)、そういった同じようなことを、二人が少年時代にやっていた。そういった様子をこの資料の中から垣間見ることができるので、とても興味深い面白い資料なのかなという風に思います。

 

 


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(Selected By Haruhiko Ohno)


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