今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、松山市の登録NPO「松山・白石の鼻巨石群振興会」事務局長の篠澤邦彦さん。松山観光港前から県道39号を2キロほど北へ進むと見えてくる小さな岬・白石の鼻。その一帯の海には、いくつもの巨石が横たわっています。篠澤さんたちは、この巨石について調査し地域資源として町の活性化につなげようと活動していて、松山市の「坂の上の雲」フィールドミュージアム活動支援事業にも採択され、シンポジウムなども開催してきました。決してオカルト的なアプローチではなく、世界遺産であるイギリスのストーンヘンジやメキシコのチェチェン・イッツァ遺跡などに通じるものではないかと調査を続けているそうです。その「松山・白石の鼻巨石群」について、「古代の天体観測装置」「龍が化けて石と為す」「遺跡と天文学」というキーワードで語ってくれました。


佐伯)イギリスのストーンヘンジも天文学的な役割があったということでしたが、この「伊予のストーンヘンジ」=白石の鼻巨石群もそうであると読まれているわけですね?

篠澤)そうです。まず海上にある「三ツ石」。この中央部に空洞がありまして、その空洞の左上にスリットみたいな細い溝があるんですけど、そこに春分秋分の太陽が正確に入るということが分かっています。

佐伯)へ~!

篠澤)その空洞を通った夕日の光が海面を照らして、オレンジ色のラインがゆらゆらゆらゆら揺れている、波に揺れているのは、まさに龍が泳いでるように見える。すごく荘厳な光景です。

佐伯)先ほど私もこの場所よく通ったと言いましたが、このような場面は全く遭遇したことがありません。春分秋分の時だけの現象…。

篠澤)そうですね。春分から一週間、秋分までの一週間という期間はあるんですけど、要はその日その時その場所にいないと、どの場所から見るか、どの日のどの時刻から見るかということが大事なので、何気なく来たんだとその現象に遭遇しないことになりますね。

佐伯)すごく貴重な瞬間なんですね。きょうは篠澤さんが記された「伊予のストーンヘンジ」という本もあるんですが、その表紙がまさに今おっしゃった、巨石を組み合わせたちょうど中心付近にある空洞から、夕日がそこにすっぽり収まって、その空洞から差し込む光が波を照らしているという非常に神秘的な…

篠澤)すごく神秘的で、すごく美しい。

佐伯)ですね。これが、「三ツ石」と春分秋分の組み合わせで起こる現象。他にもあるんですか?

篠澤)あります。神社横に「亀石」っていう石があるんですけど…

佐伯)「亀石」ってけっこう各地にありますよね!亀のように見える形の。

篠澤)はい、白石の鼻の「亀石」もですね、まさに亀みたいな形になってまして、頭があって甲羅があって、なんか手が出てるみたいな、そういう亀に本当に見えるような石がございます。

佐伯)本当ですね(笑)

篠澤)そこにも中央部にちょっと細いですね、溝がございまして。5メートルぐらいの溝になるんですけど…

佐伯)え、これ5メートルもあるんですか?

篠澤)あります。意外に長いです。

佐伯)だから、そう思うくらい周りの石が大きいってことですよね。

篠澤)はい、大きいです。で、その溝にですね、今度は冬至ですね、冬至頃の夕日の光が差し込みます。そこはすごいスポット光みたいになりますので、肉眼で見ても眩しくなくてですね、なんか光を放射状に散乱してとても綺麗な神秘的な…、これ写真を見るとほら、こんな光景が見られます。

佐伯)本当だ!放射状に光が…よくダイヤモンドなんかに光を当てた時に反射してるような形で見える。

篠澤)そうです。

佐伯)これが冬至ですか。

篠澤)はい、冬至前後ということになります。で、もう一つですね、最後の季節の区切りというと夏至でございまして、実は夏至を観測してるポイントもございます。この写真がそうなんですけど、「夏至の三ツ石」と呼んでいる若干小ぶりな…と言っても1トンはあるような大きな石なんですけど、それが3つありまして、その3つで内側を直線状に削っている。

佐伯)ああ、本当ですね。

篠澤)それで溝を作ってるんですね。その溝にですね、夏至の日の入りの夕日、前が興居島なんですけど、興居島の山並みにかかる時の夕日の光がちょうどその「夏至の三ツ石」の溝に差し込むと。

佐伯)あ、すっぽり差し込んでる。それは、夏至の夕日の光が差し込むように削ってるって事ですか?

篠澤)そうです。

佐伯)ほ~。今のお話で、春分秋分夏至冬至と、いわゆる季節の区切り目の時には必ずこの巨石群に何か太陽との因縁で生まれる現象を見ることができると。

篠澤)まさにその通りで、太陽と巨石のコラボレーションで織りなす現象ですね。この天体現象はけっこう神秘的で、人気になりつつあります。

佐伯)そうなんですか。こういうのって、やっぱりこの巨石群をいわばカレンダーのように使っていたと考えられますか?

篠澤)そうですね、まず古代ですね、時計もなしですので時間を計ると言いますか、例えば作物を採りに行くにしてもですね、あるいは動物とかを狩猟するにしても、季節を知るっていうのは大事な経済活動だと思うんですね。そういったことからも季節の区切りというのは測ったであろうし、あと祭祀と言いますかお祭りのために宗教的な意味合いもあって、当然古代太陽がですね、いちばん神秘と言いますか身近な神様のような位置付けであったでしょうから、それを観測して、それぞれの大切な区切りを観測してお祝いをするということはあっただろうなと。

 

 


[ Playlist ]
Alessi – Love To Have Your Love
The Heptones – Ob-La-Di, Ob-La-Da
Jocelyn Brown – Daydreaming
The Submarines – Clouds

Selected By Haruhiko Ohno


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