今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、「まさき-いいとこ見つけ隊」隊長で、松前町文化協会会長の矢田弘さん。松前町の魅力を再発見し、発信する役割を担っている矢田さんに、キャラクター「おたたちゃん」でも親しまれている松前町のシンボル的存在「おたたさん」について伺いました。その発祥から発展、松前町への影響など、「恋に破れて」「松山城の築城に貢献」「かんづめ行商」という3つのキーワードで紐解いて頂きました。


佐伯)それでは一つ目のキーワード「恋に破れて」から伺っていきましょう。…穏やかじゃないですね。

矢田)穏やかじゃない(笑)

佐伯)失恋したってことですか。

矢田)京都のお公家さんのね、妹さんでね、「多喜津姫様」というお姫さんだったんでしょうが、やっぱり昔は身分が違うと恋ができないんですね。

佐伯)はい。

矢田)それで破れて、悲恋で罪を作ったということで、侍女3人と一緒に4人でね、淡路島に流そうとしたんですが、海は荒れていて、ず~っと流れて松前港に着いたんですよ。

佐伯)じゃ、平安時代のお姫様が失恋して、身分違いの恋だからと咎められて島流し。それが淡路島じゃなくって、流れ流れて松前に着いたと。

矢田)松前港に着いたの。

佐伯)へ~、そうだったんですか。でも京都のお姫様でしょう?松前に流れ着いて…

矢田)それでね、その悲恋の話を聞いて、松前の人が非常に親切にして。可哀想だということで親切にしてくれたんで、多喜津姫さんはですね、ここで生活しようということで。ただ生活するにはやっぱ食べないかん、ご飯食べないかんでしょ。幸いにして松前港は良港、当時非常に有名な漁港だったもんですから、魚がいっぱい取れて。「そうだ、この魚を売ってまわって商売しよう」と。傍ら、その偉い公家さんの娘さんですから、字を教えたりしたんでしょうな。主力はお魚を売ってまわろうということで、皆さんに教えたらしいんです。

佐伯)へ~。だけど、深窓の令嬢だったわけですから、いきなりお魚を売るといっても大変なことですよね。

矢田)大変なこと、生きるためには。

佐伯)さっきキャラクターの「おたたちゃん」は伊予絣だっておっしゃってましたけど、このお姫様はどんな風にして売ってたんでしょうか?

矢田)高貴なお姫様だったから着物もものすごく高価なものを着ていてですね。

佐伯)そうでしょうね。

矢田)黒羽二重とかね、緞子。高級な着物の帯締めでしょうかね、それを前に締めて、そういう格好して歩いたらしいんですよ。それを見て松前の女の人が真似したんでしょうな。

佐伯)へ~。

矢田)その緞子とか黒羽二重とかはないけど、前に締めて、魚を入れた桶を頭の上に載せて、「魚いらんかえ~」というように呼びかけながら売り歩いたと。

佐伯)多分ですけど松前の方も、このお姫様が悲しい恋をして松前に流れ着いたっていうのをご存知だから…

矢田)そうそう、同情して。「おたきさん」とか「おたき様」とか言って慕ったんでしょうな。ある程度は、教えてくれてね。

佐伯)お魚もきっと、その方から買おうと。

矢田)いっぱいあるしね。そういう商売をしましょうということで、商売の仕方を教えてもらった。ということで、松前の女の人がそれを見習ったと。

佐伯)そういうことなんですね。ちょうどこの間まで南海放送で「ファーストペンギン」って言って、今までと違う魚の売り方に挑戦した女の人のドラマをやってたんですけど、そう考えると、この「おたき様」、お姫様は当時のファーストペンギンだったのかもしれませんね(笑)

矢田)そうだと思います。

佐伯)その姿を真似て、松前の女性達が…

矢田)そうね。桶に、お魚いっぱいあるんだから載せて売ってまわったと。これはいい商売になるなと(笑)

佐伯)というのが発祥。

矢田)「おたたさん」の元祖と言われる「おたき姫様」のね。

佐伯)あ、もしかしてそれ、「おたき様」が「おたたさん」になっていったって感じですか?

矢田)なっていったんですね。

佐伯)は~。

矢田)それでね、京都でかなりレベルの高い生活をしておったんだけども、田舎に来てそういうことをせないかんということで、「おたき様」もあんまり長生きはできなんだんですな。50歳ぐらいで、もう亡くなりました。侍女さんも。

佐伯)そうですか。でも、残された地元の皆さんが、その「おたき様」のスタイルを引き継いで。

矢田)そういうことですね。

佐伯)「おたたさん」へとなっていったということなんですね。

 


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Selected By Haruhiko Ohno


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