今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、久万高原町教育委員会学芸員の遠部慎さん。数年前から「縄文ブーム」がキテる、ってご存知ですか!?私は知らなかったんですが(!)、「縄文女子」「土偶女子」などのワードも生まれているとか。なぜ今「縄文時代」が人を惹きつけるのか?久万高原町の上黒岩岩陰遺跡を研究する遠部さんに、「縄文時代から学ぶSDGs」をテーマにお話を伺いました。


佐伯)上黒岩岩陰遺跡ではどんなものが分かってきてるんですか?

遠部)30体ぐらい人骨が見つかってるんですけども、それらの人たちがですね、身を飾っていたと考えられるタカラガイやイモガイって言うですね、珍しい貝が見つかってます。

佐伯)タカラガイ、イモガイ…あんまり聞いたことない貝ですけれども、だいたいどの辺にいる貝なんでしょ?

遠部)じつはですね、上黒岩岩陰遺跡は久万高原町ありますので結構な山ん中なんですね。いわゆる仁淀川の最上流ですので、もう本当に山の中なんですけれども、タカラガイやイモガイっていうのはどちらかと言うと…あの日本の周りにはたくさん海があると思うんですけども、日本海とか太平洋みたいな感じで。どちらかと言うと暖かい海で採れる貝がですね、この久万高原町の中で見つかってるんですね。

佐伯)さっき、この遺跡の時代っていうのは瀬戸内海もなかったっていうお話でしたから、太平洋の方から来てる貝ってことなんですか?

遠部)そうなりますね。本当に想像をたくましくすると、夏のある日に高知の方からそういった貝を持った人たちが上黒岩にやってきて、そして出産を繰り返したっていうふうに想像すると、そんなに間違ってはないような気もしますね。

佐伯)涼しいから、避暑地みたいな感じもあって来られてたんでしょうか?

遠部)はい、久万高原町、夏は本当涼しいですし、快適に子供を産むのに本当に適してる。

佐伯)四国の軽井沢ですもんね。で、その装飾品を一つ持って来ていただいたんですけれども、いろんな種類の貝が繋がっている…首飾りですか?

遠部)もしかしたら頭に巻いてた可能性もあるんですけれども、タカラガイとかイモガイ。

佐伯)タカラガイって、どれ???

遠部)そのギザギザの…

佐伯)ギザギザの大きい貝ですか?これ?

遠部)それがイモガイですね。

佐伯)イモガイ!

遠部)渦巻きみたいなのが見えますね。

佐伯)渦巻きみたいです!なんか牛乳瓶の底みたいになってますけど。

遠部)どうも縄文人その渦巻きが好きだったみたいで。

佐伯)へ~。

遠部)イモガイって、本当はもうちょっと長~い形の貝なんですけども、その渦巻きの部分をどうも使ってるみたいなんですね。

佐伯)ふ~ん、面白い。で、ダカラガイは?

遠部)その間にあるギザギザ…

佐伯)あ、これ?

遠部)それです、それです。

佐伯)なんかカニの爪の先みたいな感じですよね、ギザギザが(笑)。こういう貝を、食べた後にこういう形で作ってたってことですか?

遠部)えっと、食べられないことはないんですけども、あまり食べないですね。

佐伯)食べない貝なんだ。じゃ、これはこういうものを作るために持ってきてたってことなんです?

遠部)今もじつは沖縄では売ってるんですけども、ミサンガっていう形で安産のお守りとして。

佐伯)あ、ミサンガも持ってきてくださったんですね。

遠部)これはあの沖縄のお土産で売ってます。

佐伯)へ~。ちょっとこれ番組ブログに後で画像掲載しますので、これがイモガイかというのをご覧いただけたらと思うんですけれども。これらの装飾品っていうのは、やっぱり祭祀の意味があったりするんですか?

遠部)ちょっと半分想像にもなるんですけども、だいたいタカラガイっていうのは洋の東西を問わず貴重な扱いをされてて、特に安産のお守りになってるんですね。

佐伯)じゃあやっぱり子孫繁栄っていうのが大きなテーマになってくわけですね。

遠部)特に上黒岩に来てた人達は非常に変わった集団でもあるんですね。30人ぐらいお墓と言うか、人骨が見つかってるんですけども、半分以上は子供。やっぱり子供6歳以下の子がやっぱり亡くなりやすいというのがまず一つあると思うんですけれども、じつは成人がですね、11人見つかってるんですけども、男性が3で女性が8なんですね。

佐伯)女性が大分多い。

遠部)だから本当に非常に偏りのある集団でして、そういった意味では特に出産経験がある人もかなり見つかってまして、特に想像を本当にたくましくすると、産婦人科のようなイメージをしてもいいのかもしれないですね。

佐伯)へ~、そうですか。上黒岩遺跡に出産っていうのが大きなテーマとしてあって、やっぱりそこに人が集まってくるっていうのは環境的に恵まれてたっていうことなんですか。

遠部)環境的に恵まれた部分もあると思いますし、あと岩陰なんですけども、石灰岩の岩陰なんですね。分かりやすく言うと目印と言うかランドマークのような存在だった可能性が高いですね。縄文人はおそらく川沿いを旅してたのではなくて、おそらく山の尾根道を歩いてた可能性が高いんです、安全に移動するために。そうなると山の上から見える目印として、やっぱり石灰岩の巨大な岩っていうのは大きな目印だった可能性が高いですね。

佐伯)へえ。先ほど土器もSDGsに繋がってましたけれども、この安産ですとか人々の集団の生活というものの中でも何かSDGsと繋がってる部分ってありますか?

遠部)じつはですね、上黒岩に来てた人たちの中には本当に怪我をした人もいるんですね。特に重症の人は腕を骨折して、あと頭も陥没してるんですね。頭に凹みが残ってるんですけれども、おそらく外見上も大きな怪我として残ってたと思うんですけども、そんな人も集団の中でおそらく一生を終えた可能性が高いんですね。これなんかは「誰一人取り残さないという社会」というふうに考えた場合に、非常に優しい社会であったというふうに考えることができると思います。

   

 

 


[ Playlist ]
Saint Etienne – Nothing Can Stop Us
The Rolling Stones – As Tears Go By
Nicki Parrott – There’s A Kind Of Hush
Sade – All About Our Love
Maylee Todd & Circle Research – Hooked

Selected By Haruhiko Ohno


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