今週、坂の上に訪ねて来て下さったのは、自然ガイドの山路稜子さん。夫婦ユニット「やまじるし」として、親子などを対象にした自然観察会や講演活動をする中で人気のテーマが「ヘビ」!ということで、今回は「ヘビが神になるまで」「愛媛におけるヘビの神様を祀る神社」「姿を変えて暮らしに根付いたヘビ」をキーワードにお話を伺いました。番組を聞いていただくと、ちょっと怖いと思っていたヘビへの認識が変わったかも。
佐伯)つづいては3つめのキーワードです。「姿を変えて暮らしに根付いたヘビ」。どういうことでしょうか?
山路)はい、ヘビというのは昔から神として信仰されていた側面と、あとはやっぱりその見た目から嫌悪されていたという、このプラスとマイナス二つの見方がありまして、ヘビの力にあやかりたいけど、ヘビの名前をそのままつけたり姿をかたどって何かを作るということは憚られたんですね、その嫌悪の部分から。あとは恐れ多いという部分から。で、名前をちょっと変えてとか、蛇の古語=昔の言葉とか、地方名とかを使って、暮らしの中のあらゆるものにヘビの名前が残っていたりとか、あとはヘビの生態を模した、由来がヘビだよっていう道具とか食べ物ですとかが実はかなりたくさんあるんですね。
佐伯)きょう冒頭でね、蛇口の謂われについては教えていただいたんですけれども、他にどんなものがあるんでしょうか?
山路)大きなもので言うと、空にかかる虹。
佐伯)え、あれヘビと関係あるんですか?
山路)虹の由来が、インドのコブラを神格化した神、ナーガという神がいるんですが、そのナーガが日本に伝わってきた時に、「ナーガ」が「ナガ」になって、今私たちが使っている細長いとかの「長い」の由来になったのが、この「ナガ」なんですね。
佐伯)は~。コブラも長いから?
山路)長いから「ナーガ」(笑)。で、この「ナーガ」が「ナガ」になって、「ノギ」になって、「ニジ」になったと言われてます。
佐伯)!!
山路)訛って訛って(笑)
佐伯)そうなんですか!
山路)そうなんです。その虹の姿から…、あの虹って枝分かれしないですよね、一本棒でシューっと伸びる様子が手足のないヘビに見立てられて。で、虹は雨が降った後に見えることが多いので、水の神様であるヘビとよく関連付けられて、虹の姿は空から降りてきて地上に水を飲みに来た竜神=ヘビであるというふうに考えられたんですね。それで名前が「ナーガ」から引用というか…
佐伯)転じて?
山路)はい、転じて虹になったと言われています。
佐伯)そうなんですね、それは知りませんでした。
山路)なので今度虹を見たら、「あ、ナーガ」と思って見ていただければと思います。
佐伯)楽しみにしたいと思います(笑)。
山路)あとお正月といえば、初詣とか、あとはお家に鏡餅を飾ったりとかする方多いと思うんですが、鏡餅って普通二段になってますよね。あの平べったい雪だるまみたいな形が、とぐろを巻いたヘビの姿を模したものと言われてるんです。
佐伯)え~、そうなんですか。これは思いもよらない…
山路)そうなんです。新しい年の始まりに、私たちはヘビを祀って食べてるわけですね(笑)
佐伯)でも、どうしてですかね?
山路)はい、ヘビは水田によく現れるというので、稲を守ってくれる神様としても考えられていて、稲だけでなくもち米もお米の仲間なので、そういった穀物神としての性格を持っているということ。あと蛇の卵が白くて細長いんですけど、平たいお餅にそっくりなんです。
佐伯)へ~。
山路)で、ヘビの持つ力を自分の体内に取り込むことで、ヘビのような強い不思議な力を持てるようにということで、そのヘビの卵を模しているとも言われています。その説の中でも、とぐろを巻いたヘビの形であるというのが一番とりわけ有名なんですけど、やっぱりそれはヘビのとぐろを巻く姿に昔の人は神秘性を感じて、それを体内に取り入れることでヘビのお力の恩恵をいただくみたいな、そういった意味でもめでたい新年には鏡餅を飾って、それで7日が終わったら体に取り入れて自分の力にするという風な信仰が今も続いてるんですね。
佐伯)そうだったんですね、ビックリ。
[ Playlist ]
Yumi Zouma – Half Hour
Ásgeir – Summer Guest
Linda Lewis – Old Smokey
Selected By Haruhiko Ohno