今週は「坂の上の雲ミュージアム」からの生放送!松本啓治総館長をゲストに、開館15周年を迎えた「坂の上の雲ミュージアム」が発信してきたメッセージ、そしてこれからについて、お話を伺いました。軍事や政治、外交、教育、文化など多くのテーマが重層的に重なり合って描かれている小説「坂の上の雲」。さらには明治という時代を力強く生きた人々の人生。こうした小説の世界観を伝える展示の数々に、学芸員の皆さんは情熱を注いできました。なかには、こんな展示品も。


 

佐伯)開館15周年を迎えた「坂の上の雲ミュージアム」。その企画展は学芸員の方が練りに練った内容になっているというお話でしたけれども、これまでにも捕虜の扱いをテーマにした「ハーグ万国平和会議」ですとか、あと日本とロシアが講和条約に合意した「ポーツマス日露講和会議」をテーマにした展示というのもあったということなんですが。これまた難しいテーマですね。

松本)そうですね。なかなか馴染みのないテーマだと思います。

佐伯)やっぱり、こういったものの準備、調査というのは、難しい内容であるからこそ大変だったと思うんですが。

松本)そうですね。やっぱり現地へ行かないとわからないものって結構あるんですよね。ですからロシアとかアメリカの方へ調査に行ったわけです。

佐伯)現地に行かれたんですね!

松本)あのWEB上でも結構公開されているものもあるんですけども、行ってみないとわからないものってたくさんあるんですね。で、行くことで新たな発見というのも必ずあるんですね。

佐伯)はい。

松本)まず研究者や大学の先生などに協力してもらって、現地へ行って資料の調査を行うということをやるわけですね。

佐伯)そういう外国まで行っての現地調査によって、どういったものが実際には展示されたんですか?

松本)現地では色んな数多くの資料を確認しているわけなんですけども、展示したもので例を挙げるとですね、ロシアのノブゴロド州メドベージ村というのがあって、そこに日本人の捕虜収容所があったんですね。そこで日本兵の人が三味線とか月琴というのを作っていたんですが、それが国立シェレメチェフ宮殿というのがあって、そこに音楽博物館というのがあるんです。そこに保管されていましてですね、それを借りることができました。

佐伯)ええ!

松本)逆にですね、京都の東福寺霊雲院というのがあって、そこにはロシア兵の捕虜収容所があって、そこではロシア兵の人が作ったバイオリンやタンバリン、バラライカなどが保管されていて、それをお借りして展示をしたんですけども、やはり捕虜生活では音楽が心の癒しになったんだろうなという風に思いますね。

佐伯)はい。ですから実際にそういった資料を展示することで、見る我々にとってみれば、そこに込められている日本兵でありロシア兵の思いっていうものも感じ取ることが出来ますもんね。

松本)その楽器の中にね、そういうものを感じられるものがあると思ったんですね。

佐伯)実際に離れた場所でそれぞれが作っていたものが、このミュージアムで対面するというか揃うってことでしょう?

松本)それはまあ多分日本でも初めてのことではないかと思うんですけども。日本とロシアの捕虜収容所にあった楽器が、この「坂の上の雲ミュージアム」で初めてご対面をしたということでね、我々もちょっと興奮しましたですね。

佐伯)はい。

松本)アメリカのポーツマスの調査では、地元の方々の協力でポーツマス講和会議の椅子とかですね、条約調印に使用されたペン、それから名刺とか講和会議記念品というのが作られたようなんですが、それもお借りをすることができて展示をいたしました。やはり実物資料というものにはですね、歴史とか雰囲気というものを感じさせる重みとか力というものがあるように思うんですね。

佐伯)いや~、それはすごい展示品ですよね。ポーツマス講和会議なんて、歴史の教科書でみんな一回は聞いたことあると思いますけど。

松本)まあ一行しか書いてないようなものなんですけどね。

佐伯)でも、「あの会議のものが、この目の前にあるのか」っていうと、そんなに歴史に詳しくなくてもちょっと興奮してきますよね。

松本)感無量ですよね、それは。

 


[ Playlist ]
The Fifth Avenue Band – One Way Or The Other
Sly & The Family Stone – Runnin’ Away
Elizabeth Shepherd – Numbers
Mark Murphy – Why Don’t You Do Right

Selected By Haruhiko Ohno


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