今週は「坂の上の雲ミュージアム」からの生放送!じつは今月28日、ミュージアムは15周年を迎えます。これを記念して、ミュージアムの設計を手掛けた安藤忠雄さんの「建築の軌跡」新コーナーを公開するとともに、近現代建築パネル展を開催中。これについて、学芸員の徳永佳世さんに紹介して頂くとともに、建築写真家の北村徹さんにはパネル展に登場するものの中から、その建築の魅力についてお話を伺いました。キーワードは「光と影」。そこに込められた思いとは…。
佐伯)こちらのミュージアムも設計された安藤忠雄さんの手がけられた建築について伺ってまいりましょう。まずパネル展で取り上げられている西条市の南岳山光明寺なんですが、こちらとても特徴的な造りの建築ですね。
北村)そうですね。安藤さんにしてみたら珍しい?…まあ珍しくはないんですが木造建築ですね。
佐伯)はい、コンクリートじゃなくて。
北村)はい、周りのですね、客殿だとか礼拝堂とか庫裡はコンクリートの打ちっ放しなんですけど、それが取り囲むように水面がありまして、水に浮いてるような赤い木造建築、それがお堂としてあるんですね。
佐伯)本堂なんですよね。
北村)それが非常に柔らかいんです、光が。夜もですね、非常に行灯のような光でですね、水面の上に浮かび上がってるんですけど、檀家の人じゃなくてもぜひ見に行っていただきたいですね。
佐伯)西条といえば水の都ですが、その「水」、水面に建っているような本堂っていうのは本当にこれ他にないですよね。
北村)安藤さんご自身が「水」っていうのを利用して作られてる建築が、「水の教会」とかですね、非常に多いですね。アメリカのフォートワースの美術館とかですね。「水」は巧みに使われる方ですね。
佐伯)さっきおっしゃった「光」っていうのも、昼間に陽射しが反射して見える本堂と、夜間ライトアップされている本堂と、全く印象違いますね。
北村)違いますね。昼間は行灯のようには見えませんけど、昼間は昼間で木造の赤い色っていうのが非常に鋭く入ってきます。夜は逆にその赤い柱っていうのは全部シルエットになって黒くなりますから、中の光が全部行灯のように出てくるわけですね。昼間も夜も見応えのある建築。建築そのものってのは、やっぱり昼だけで評価したらダメだと思います。建築家の力量を知るためにはやっぱり夜も絶対に見るべきです。
佐伯)そういう意味でいうと、こちらのミュージアムも今この真昼間、昼下がりの表情と夜間の表情と、異なる表情が楽しめるんですが、この「坂の上の雲ミュージアム」について、その魅力を教えてください。
北村)これはもう司馬遼太郎の夢と安藤の希望が合致したのじゃないかなと私は勝手に解釈してるんですけど。開放的でオープンなこのカフェの空間とですね、三角形の暗さを強調した空間を内包する建築なんですけど、一つはこのメインになる緩やかに伸びてるスロープですね。これがだんだんだんだん伸びていってあそこの吹き抜けの部分の、あのとんでもない階段室。
佐伯)階段、全然支えの柱も何もないんですよね。
北村)はい、柱も何もないですね。あれがですね、やっぱり空に向かって、一朶の雲に向かって一気に駆け上がるような印象を私は受けたんですよね。これは安藤さんがその司馬遼太郎の「坂の上の雲」の意図を汲み取って、あの階段はできたんじゃないかなっていう気がしました。
佐伯)ここの部分がすごく心惹かれる部分。
北村)はい。
佐伯)その他にももちろんたくさん魅力あるんですけれども、前半に徳永学芸員にご紹介をいただきましたが、是非皆さんこの場で「これが」というのを体感して頂ければと思いますね。さて今日は貴重なお話いろいろ伺ってきましたが、北村さんが建築写真家として大切にされていることって何ですか?
北村)やっぱり何度も言いますけど「光と影」です。この構成力ですね。影がないと光って見えませんよね。光がないと影も見えません。そのバランス。そのバランスっていうのは、我々が生活している環境の中にもそれが非常に強くありまして、その環境を生かすも殺すもその光の扱い方一つだと思います。それがあって、昼間働いて夜眠るようにですね、昼と夜があるように、やっぱり「光と影」があってそのバランスで人間ってのは快適に生きてるんじゃないかなと思います。
佐伯)その「光と影」、これをキーワードに県内にもあります数々の名建築を見ると、また新しい見方、新しい楽しみ方ができるのかなという風に強く感じました。
北村)そうですね、その通りです。是非そういう見方で見てみてください。
[ Playlist ]
Chet Baker – That Old Feeling
Norah Jones – Toes
Ryan Adams – Answering Bell
Louis Armstrong – What a wonderful song
Selected By Haruhiko Ohno