今週は、「坂の上の雲ミュージアム」特設ブースからの生放送。常盤同郷会理事長の山崎薫さんをゲストに迎え、小説「坂の上の雲」の主人公の一人・秋山好古の手紙を軸に、その人柄を紐解いて頂きました。好古が初代校長をつとめた北予中学の流れをくむ県立松山北高校の放送部の皆さんが、手紙の朗読で番組に華を添えてくれました!
佐伯)周りの人には本当に謙虚に接していたという好古なんですけれども、一方で自身の家族についてはどうだったんでしょうか?きょうご紹介しますけれども、いろいろ家族に宛てた手紙も残っているということなんですけれども、家族との関係はどんな感じだったんですか?
山崎)今までの間に弟の真之に宛てた手紙や両親に宛てた手紙、それこそ松山に出してきた手紙ですね、あるいは戦地からも子どもたちに宛てた手紙、子供達だけでなく親戚や友人にですね、そういうたくさんの手紙が幸いにして残されてます。
佐伯)戦地で最前線にいる、もう大変な時期だと思うんですけれど、その中でも日本に手紙を送ってくるような、じゃあ筆まめな方だったんでしょうか?
山崎)筆まめとまでは…どうもそういう感じではないんですけれども、なにか節目の時にはですね、家族や知人に手紙を書いていたようです。
佐伯)そうですか。好古は東京で結婚して所帯を持ったということなんですけれども、軍人を退いて松山に帰ってくる時は家族は一緒だったんですか?
山崎)それがですね、単身赴任で。
佐伯)単身赴任でしたか!
山崎)そのことは実は、2年前に亡くなったお孫さんの秋山哲兒さんが秋山兄弟生誕地に10年以上ぐらい前においでてくださった時にですね、哲兒さんが話してくださったことなんですけれども、お孫さんなりに、おじいさまの好古さんが松山に校長として行った時に単身赴任だったことがやっぱり疑問だったらしいんですね。それで、おばあさまの多美おばあちゃんにですね、好古さんの奥さん、その多美さんに聞いたそうです。
佐伯)なんで一人だったの、と。
山崎)そうなんです。どうして校長として松山に行ったときに、一緒に行ってあげなんだの?と。そしたら多美さんが、こういう風に言われよったそうです。「好古は言よった。戦争の時に大勢部下を亡くしたと。部下が結婚してたら遺された奥さんが寂しい思いをしてたし、結婚されてなくてご両親にお会いしたらですね、辛い思いしてたので、こういう時ぐらいは一人で行くからと。」と言われたそうなんですね。
佐伯)じゃあ軍人を退いてからも戦争で亡くなった部下への思い、供養の思いもあって、自分は家族とは一緒には行かないっていうことを選んだっていうことなんですか?
山崎)家族は本当は一緒に行きたかったんでしょう、好古さんも来て欲しかったでしょうが、そこをそういう風にするというところに大きな…より改めてですね、考えさせられます。やっぱり戦争の時というのは大変なことですのでね、司馬さんが書いてくださったので比較的我々も分かりやすいですけども、黒溝台の時にしろ奉天にしろ、目の前で大勢の部下が亡くなる。自分の命令下ですけど日本全体のことを考えてそうならざるを得ない。それで亡くなった方、その遺族、生きとったらこういうことだろうなという色んなことを考えて、従って日露戦から20年も経ってますけれども、65歳、人生の最期と言いますか、陸軍を退いて松山に来るという時、しかも将来の若者を育てるという時に、松山では一人で奥様の気持ちを持ちながら同時にしそうなためにそんななんかそういう気持ちがあったんだろうと思います松山では一人で供養の気持ちを持ちながら、同時に子孫のために、そういう気持ちがあったんだろうと思います。
佐伯)そのお話を伺いますと、本当に思いやりがあって、そして誠実な人柄っていうのが伺えますね。そして、その好古の気持ち、考えを表すような孔子の言葉があるんですか?
山崎)先ほど申しました秋山哲兒さんが生誕地に、好古さんがおそらく最後の方、亡くなる前に近い時に書かれた書を送ってきてくださいました。その書は「一以之貫(いちもってこれをつらぬく)」と書いてます。
佐伯)一以て之を貫く。どういうことなんでしょう?
山崎)これは論語の中でですね、要するに孔子さんからいろんなこと聞いたけれども、「いちばん大事にしたことはなんですか」と聞いた時に、(孔子が)これを言ったそうなんですね。そのエピソードを好古さんもご存知の上でもちろん書かれてますから、好古さんにとってもなんですけど、「一」というのはかいつまんで言うと「誠実と思いやり」ということを意味するであろう。ただし色々教わったこと、誠実と思いやりを一生涯実践したということが孔子の思いでもあり、好古さんもそういう思いで書かれたと思います。実際にそういう、よく北予中でも言われてたんですけれども、「教わった事は自分の身に染み込ませて照らし合わせてできるようにならないかんぞ」言うてですね、ほんと頭で聞いただけでと言うのはよくありがち、我々もありがちですけれども、そのことを実際…哲兒さんおっしゃってました、好古は本当に生涯、他人を思いやった生き方でしたって。そういうことで送ってきてくださったんかなと思います。
佐伯)それを知っているだけじゃなくて、まさに実践をしたということろに好古の凄さがあるように感じます。
[ Playlist ]
Alessi – Love To Have Your Love
細野晴臣 – Tutti Frutti
Barbara Acklin – Love Makes A Woman
The Heptones – Ob-La-Di, Ob-La-Da
Elvis Costello – Alison
Selected By Haruhiko Ohno